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太田述正コラム#7892005.7.12

<欧州における歴史的瞬間(その5)>

5 ロンドン多発テロ事件について

(1)事件の概要と犯人像

 ア 事件の概要

私が、7日の夜(現地は午前)に事件の一方を聞いたときに思ったのは、何カ所もの爆発がありながら、判明している死者が二人とは随分少ないな、ということでした。

11日夜)現在、確認された死者数は49名であり、重体の数や行方不明者の数を全部足しても100名に達しないことから、最初の私の印象は間違っていなかったと思います。

実際、この死者数は、2001年の9.11同時多発テロはもとより、昨年のマドリードの列車爆破テロ事件や、1998年のケニアとタンザニアの米国大使館をねらった爆破テロよりも少ないものです(http://news.ft.com/cms/s/054cb4c2-ef12-11d9-8b10-00000e2511c8.html。7月8日アクセス)。

さて、事件の概要ですが、現地時間の0850頃、地下鉄サークル・ライン(環状線)上の二箇所、そしてピカデリー・ライン上の一箇所を走行中の三つの地下鉄内で爆発が起き、次いで0947頃に走行中の30番の二階建バスで爆発が起きました。

爆発が起こったのは、方角で言うとキングスクロス(King’s Cross)駅(注8)から、地下鉄についてはサークル・ラインを東西にそれぞれ進んだ場所とピカデリー・ラインを南に進んだところですし、バスについては(一旦西に進んだ後)南に進んだ場所です(注9)。

(以上、http://news.bbc.co.uk/1/shared/spl/hi/uk/05/london_blasts/html/default.stm(7月11日アクセス)による。掲載されている地図を参照されたい。)

(注8)ハリー・ポッターが魔法学校のあるホグワーツに向けて北方に出発するのが、ロンドンの大ターミナル駅の一つ、キングスクロス駅の9と3/4番ホームだ。1988年のロンドン滞在中にこの駅からスコットランド観光に列車ででかけたことがある。(帰りは夜行寝台を使った。)

 (注9このことから、NHK11日の夜の報道特集は、複数の犯人が一旦キングスクロスに集合したのではないか、と推理していた。ただし、単独犯説もないわけではないhttp://www.guardian.co.uk/attackonlondon/story/0,16132,1524563,00.html。7月10日アクセス)。

 ピカデリー・ラインでの爆発場所は地下20m以上の深い所であり、携帯電話が使えない(典拠失念)こともあり、地下鉄内での三つの爆発は、タイマーで同じ時刻にセットされたものである、と考えられています(注10)。

 (注10)第一に、これまでの目撃証言等を踏まえれば、爆弾が身体にくくりつけられてはおらず、バッグ類に入れられていたようであること、第二に、イスラエルで、同じグループが自爆テロを違った場所で同じ時刻に決行しようとした例がいくつかあるが、いつも爆発時刻にかなりのずれが生じたこと、の二点から、自爆テロであった可能性はないと考えられている。

 また、用いられた四個の爆弾は、いずれも10ポンド(4.5kg)程度の重量のTNTやプラスティック爆弾といった高性能爆弾とされています(注11)。つまり、花火や肥料から造った手製の爆弾ではない、ということです。

 (注11)プラスティック爆弾であった場合、その爆発力から見て、C4類であって、より強力なセムテックス(Semtex)類ではない、とされている。プラスティック爆弾は、チェコ等中東欧のヤミ市場か、ロシアのマフィアを通して簡単に手に入るという。爆弾を購入する費用込みで、今回の同時多発テロは、1万から1万5,000米ドルもあれば行える、と考えられている。

 なお、バスでの爆発が、意図的に最初の一連の爆発から逃れる人々をねらったものか、(その場合、自爆テロであったのかどうか、)或いは犯人が別の場所に移動中に誤って爆発させたものか、は不明です。

  イ 犯人像

 次に犯人像です。

 誰でも気付くのは、どちらも朝の通勤ラッシュ時の鉄道に高性能爆弾をしかけたものであり、かつテロが決行された国が(当時のスペインも現在の英国も)米国の忠実な同盟国であったという点で、ロンドンでの同時多発テロ事件とマドリードでの(同時多発)列車爆破事件が似ているということです。

 ブレア首相は、この事件には明らかにアルカーイダのにおいがする(reasonably obvious)と言明しましたし、警察当局は、「欧州におけるアルカーイダの秘密組織」と名乗るグループによる犯行声明に注目しています。

(以上、http://www.cnn.com/2005/WORLD/europe/07/09/bombings.investigation.ap/index.html(7月10日アクセス)、及びhttp://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-britbombs10jul10,0,4352278,print.story?coll=la-home-headlines(7月11日アクセス)による。)

 ここから先は専門家の意見が分かれています。

使った爆弾の威力と分量からして、犯人達は資金が余り潤沢ではないと推察されることから、彼らは英国籍があるか英国に長期滞在している連中であって、アルカーイダやアルカーイダ関係者の指示を仰いではいないアルカーイダかぶれであろう、と指摘する専門家がいる一方で、犯人達は捜査当局に気付かれないようにするため、いかなる痕跡も残さないように努めているだけ(注12)であり、以前から英国に潜んでいたアルカーイダやアルカーイダ関係者の犯行と見るのが順当だろう、と指摘する専門家もいます(CNN上掲、及びhttp://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-terror8jul08,0,2334476,print.story?coll=la-home-headlines(7月9日アクセス)による)。

 (注12)テロ決行直前に、犯人達が大挙移動するようなことは避けた方がいいのはお分かりだろうが、銀行送金も電話やメールによる通信も控えるにこしたことはない。しかし、銀行送金をしなければ、高額の資金の移動は困難であるし、(マドリードでの列車爆破事件の時も今回のロンドンでの同時多発テロでも直前の通信を犯人達は行っていないようだが、)通信をしなければ、多人数による組織的なテロを決行することは困難だ。

いずれにせよ、英国政府も、各国のテロ対策専門家達も、今回の同時多発テロの犯人(達)がアルカーイダがらみであることを当然視しているわけです。

それは一体どうしてなのでしょうか。

(続く)

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