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太田述正コラム#932(2005.11.4)
<解明されつつある人間の秘密>
1 始めに
生物としての人間に関わる科学も日進月歩です。
今回は、それでもなお解けない謎、解明への手がかりが得られた謎、そして、解明された謎、を一つずつご紹介しましょう。
2 依然として解けない排卵日の謎
オギノ式の避妊法は、基礎体温表をつけることから始まりますが、これは、女性自身が自分の排卵日が分からないことから来ています。
しかし、つがうべき時期が分からない、というけったいな有性動物は人間だけです。
人間に一番近い哺乳類である猿でさえ、お尻が赤くなることで、つがうべき時期は一目瞭然であることを考えれば、これはまことに不思議なことだと言わざるを得ません。
よくそんなことで、人間はいままで絶滅を免れえたものだ、と言いたくなるくらいです。
すなわち、他人はもとより、本人の女性までもが自分の排卵日が分からない、というしくみにいかなる意味があるのかは、依然として大きな謎なのです。
(以上、http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-barash27aug27,0,3693433,print.story?coll=la-news-comment-opinions(8月28日アクセス)による。)
3 手がかりが得られた言語と音楽の起源
次は、謎が解明される手がかりが得られたケースです。
ネズミの雄が、人間の耳には聞こえない高周波の声を出すことは以前から知られていましたが、最近、雄が雌の性フェロモン(sex pheromon)(注1)の臭いを嗅いだ時に出す声が録音され、分析したところ、一種の歌であることが分かりました(注2)。しかも、個体によってその「歌」には個性があることも分かったのです。
(注1)フェロモンというのは、というのはもともと主に昆虫が交信用に放出する分子の総称で、性フェロモンはその一種であり、異性を惹き付ける役目を持っている。哺乳類でも象や豚は性フェロモンを持っているが、人間は持っていない、と考えられている。なお、性フェロモンは雌の専売特許では必ずしもなく、豚の場合は雄が性フェロモンを持っている。(http://www1.accsnet.ne.jp/~kentaro/yuuki/pheromon/pheromon.html。11月3日アクセス)
(注2)この「歌」を4オクターブ下へと周波数変換を行って人間にも聞こえるようにした音声ファイルと、そのテンポをゆっくりにして、「リズム」や「音の高さ」や「メロディー」が分かるようにした音声ファイルが下掲のガーディアン・サイトに掲げられている。
これまで、鳥類や、哺乳類では鯨やイルカや手長猿(gibbon)の「歌」が知られていましたが、ネズミもその仲間入りをしたわけです。
鳥類の多くの場合、「歌」のメロディーが優れている雄を雌がつがい相手として選ぶのですが、果たしてネズミでも、「歌」が雌のつがい相手選びにかかわっているのか、また、メロディーが優れている雄を雌が選ぶのかどうかはまだ分かっていません。
ネズミについてのこの発見が画期的である理由は、ネズミは繁殖率が高いために、遺伝に係る様々な実験が容易にでき、しかもこれが人間の謎の解明にもつながるからであり、この研究を掘り下げていくことによって、人間の言語や歌(音楽)が生まれた経緯の解明ができるのではないか、と期待されています。
(以上、http://www.guardian.co.uk/science/story/0,3605,1605806,00.html(11月2日アクセス)による。)
4 解明された美人の秘密
大きな謎が解明されたケースもあります。
英セント・アンドリュース大学の研究チームがこのほど、美人とは、大きな目、広い額、小さなあご、大きな唇、を持っている女性であって、このような女性は、女性らしくて魅力的であり、エストロゲン(oestrogen)(注3)の分泌量が多く、従って多産である、ということを明らかにしました。
(注3)女性ホルモンのひとつで「卵胞ホルモン」とも呼ばれるもの。排卵の準備をするホルモンで、生理の終わりごろから排卵前にかけて分泌が高まる。40代半ば頃から分泌が急激に減少しはじめ、うつやイライラ、不眠、倦怠感などのさまざまな更年期症状の原因となる。(http://www2.health.ne.jp/word/d1020.html)
これは、(まことにお気の毒ながら、)醜女は子作りの対象としても不適格だ、ということを意味します。
古来女性が化粧(make-up)に血道を上げてきたのは、男性の目をあざむくことによって、自分は子作りの対象として必ずしもふさわしくないにもかからわず、男性を惹き付け、つがうためだ、とすればその意義が大変良く分かりますね。
(以上、http://www.guardian.co.uk/science/story/0,3605,1606586,00.html(11月3日アクセス)による。)
5 最後に
こうして女性にとっての化粧の意義は解明されたわけですが、大抵の動物では、雄が色鮮やかで華やかであるというのに、人間だけは(化粧される顔だけでなく、全身について)雌が色鮮やかで華やかなのはなぜか、ということはまだ解明されていません(ロサンゼルスタイムス上掲)。
冒頭に挙げたところの、排卵日が分からないという謎、等も併せ、解明される日が来るのが待ち遠しいですね。
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