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太田述正コラム#933(2005.11.5) <現在の日本と英国を比較する(続)>
1 始めに
ある読者から、次のようなメールが届いたので、回答をコラムにさせていただきました。
麻生外相の就任を批判されているようですが、いい加減に甘っちょろい人道主義から脱却された方がよいかと思います。
2000年近くほぼ単一民族として社会を形成してきた日本人は外人を簡単に受け付けないのは遺伝子的に当然であり、又簡単に受け入れば文化の破壊が進み民族のIDまでもが失いかねません。現に欧州ではフランスやオランダが社会問題化しています。
また、天皇の靖国参拝をされないのは、特定宗教への関与が問題になったからであり、A級戦犯(昭和受難者)の合祀が原因ではありません。
先生のような柔な左翼的インテリに一番欠けているのは国益を重視した国家観です。
News Letterからは多くのことを学ばしていただいて感謝しておりますがコラム#931のような記述にはがっかりします。
2 私の回答
>2000年近くほぼ単一民族として社会を形成してきた日本人は外人を簡単に受け付けないのは遺伝子的に当然であり、又簡単に受け入れば文化の破壊が進み民族のIDまでもが失いかねません。
「ほぼ」とおっしゃっているところを見ると自覚されているようですが、1,200?1,300年前の天平時代までは、半島人(無数)や支那人(鑑真等)たる帰化人が日本「文化」の発展に決定的な役割を担いましたし、それ以降も帰化人は、安土桃山時代の半島人たる陶工・沈寿官、そして江戸時代初期のイギリス人たるウィリアム・アダムス(三浦按針)、あるいは支那人たる隠元(黄檗宗万福寺の開祖)に至るまで、日本「文化」の発展に少なからざる役割を担い続けました。
むろんご承知のように、日本人はもともと縄文系と弥生系の雑居・混血社会です。(アイヌが縄文系なのか別系統なのか、という議論には立ち入りません。)
ですから、(日本在住の最近の半島出身者のことを持ち出すまでもなく、)帰化人の役割を貶めるような含意のある、日本単一民族論は、胸を張って開陳するような話ではない、というのが私の見解です。
なお、麻生外相批判については、改めて行うつもりです。
>天皇の靖国参拝をされないのは、特定宗教への関与が問題になったからであり、A級戦犯(昭和受難者)の合祀が原因ではありません。
昭和天皇は、1975年まで、靖国神社に戦後計7回参拝されています。ところが、1978年にA級戦犯が合祀され、翌1979年にこのことが公になった以降は1回も参拝されず、1989年に崩御されました。この間、中共が首相等の靖国神社参拝反対を初めて1985年に表明し、翌1986年には昭和天皇は、「このとしの この日にもまた 靖国の みやしろのこと うれひはふかし」という御製を詠んでおられます。(http://www1.odn.ne.jp/~aal99510/yasukuni/nenpyo_2.htm)
以上の事実から一般に、皇室は、A級戦犯合祀以降靖国神社参拝を忌避されてきた、と解されており、私もそう考えています。
なお、このあたりのいきさつについて、浅井久仁臣は、「A級戦犯に関しては、<合祀手続き>の途中で行なうはずの天皇への上奏が行なわれなかった・・。そして、14人のA級戦犯が秘密裡に合祀された。つまり、「天皇の神社」として明治時代に作られ、敗戦によってその形態は変わったにせよ今もなお「天皇制」を精神的支柱としている靖国神社が、天皇を裏切ってA級戦犯を合祀したのだ。恐らく靖国側とすれば、昭和天皇の「東条嫌い」を知っていただけに、上奏すれば反対されると踏んだのだろう。」と記しておられます(http://blog.mag2.com/m/log/0000122824/106069859?page=1。11月4日アクセス)が、その真偽のほどは私には分かりません。
>先生のような柔な左翼的インテリに一番欠けているのは国益を重視した国家観です。・・いい加減に甘っちょろい人道主義から脱却された方がよいかと思います。
「左翼的インテリ」が「史的唯物論を信奉するインテリ」を指すのだとすれば、戦後の経済至上主義のイデオローグを任じてきた無数の自民党系「インテリ」こそ、かかるレッテルにふさわしいでしょう。
私自身は、「国益重視」の「冷徹な現実主義者」を自任し、「甘っちょろい人道主義」の衣を被った「国益無視」(=安保・外交の米国への丸投げ)の吉田ドクトリンを墨守してきた戦後の自民党体制の克服を追求し続けてきたつもりです。
これまでこのコラムを読んでこられた読者の方が、私を180度正反対に誤解されるとは、まことに残念なことです。
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