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太田述正コラム#938(2005.11.8)
<報道の自由「後進国」の日本(続々)>
1 妾への言及はあった。
11月3日付でBBCのサイトに三笠宮寛仁殿下の女性天皇異議論について報道がなされていた(http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/4403366.stm。11月7日アクセス)ことを、7日になって「発見」しました。
この報道は、殿下が妾(側室)に言及した箇所だけを、しかもはしょって取り上げたガーディアンの記事(http://www.guardian.co.uk/japan/story/0,7369,1627427,00.html前掲)に比べると「バランス」がとれており、殿下の女性天皇異議論全体の概要を取り上げた上で、その末尾で、"Using concubines, like we used to, is also an option," he said. "I'm all for it, but this might be a little difficult considering the social climate in and outside the country." と、妾に言及した箇所を、全文紹介しています。
どうやら、殿下は間違いなく側室に言及されたようです。
そこで、更に調べてみたところ、日本の個人サイトで、「昔のように「側室」を置くという手もあります。私は大賛成ですが、国内外共に今の世相からは少々難しいかと思います。」というくだりが、殿下の福祉団体会報随筆の中にある、と指摘しているサイト(http://d.hatena.ne.jp/charis/。11月7日アクセス)を見つけました。
ここまで来れば、結論は出ました。殿下は側室に言及されたのです。
2 日本のプレスの報道ぶりを振り返る
では、この事実を日本の主要プレスのサイト(本紙でないことに注意)はどのように扱ったのでしょうか。(「メディア」としなかったのは、放送媒体までは手を伸ばさなかったからだ。)
朝日・読売・日経・産経・中日新聞の各サイトは、殿下の側室への言及について、全く報道していません(注5)(http://www.asahi.com/national/update/1103/TKY200511030255.html前掲(http://news.goo.ne.jp/news/asahi/shakai/20051103/K2005110302550.html?C=S(11月7日アクセス)に再録)、http://newsflash.nifty.com/news/tk/tk__yomiuri_20051103it01.htm前掲、http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20051104AT1G0300A03112005.html(11月7日アクセス。以下同じ)、http://www.sankei.co.jp/news/051021/kok015.htm、http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20051104/mng_____sya_____002.shtml)。
(注5)ある読者から、(中日新聞のいわば東京版である)東京新聞(11月4日付)では側室への言及がなされていたはずだ、との指摘があったが、確認できていない。また、毎日新聞についても、確認できなかった。
他方、スポーツ紙のサイトにも少しあたってみたところ、主要紙のスポーツ版であるサンスポでは報道されていませんが、独立系のスポーツ紙である日刊スポーツでは報道されています(http://www.sanspo.com/shakai/top/sha200511/sha2005110406.html、http://www.nikkansports.com/ns/general/f-so-tp0-051103-0028.html)。
また、2003年に創刊されたインターネット紙である日刊ベリタでも報道されていました(www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200511050344516(ただし、有料なので、内容は、検索画面http://www.google.com/search?q=%E4%B8%89%E7%AC%A0%E5%AE%AE%E5%AF%9B%E4%BB%81%EF%BC%9B%E5%A5%B3%E6%80%A7%E5%A4%A9%E7%9A%87&hl=ja&lr=lang_ja&start=30&sa=Nから把握した。)
3 感想
以上が強く示唆しているのは、日本のプレスは階層構造をなしており、階層構造の頂点に位置する主要プレスは、(少なくとも皇室報道に関しては、)暗黙の合意に基づき、(かつ宮内庁の意向を受けて(?)、)報道の自主規制をしている、ということです。
他方、この階層構造の下の方に位置づけられるプレスは、下に行けば行くほど、(宮内庁記者クラブに入っていないこともあって、)このような「カルテル」からの自由度が大きい、というわけです。
読者の方も、階層構造の下の方に位置づけられるプレスに書かれていることは、話半分で読み流しているのが実態でしょう。何しろ、スポーツ新聞は、プロレスも芸能ニュースも扱っているのですから・・。
誤解がないように申し上げておきますが、私は、今回の三笠宮寛仁殿下の側室への言及をもって殿下が「まとも」でない、と言いたい訳では必ずしもありません。
現に、女性天皇に異議を唱える立場に立つのであれば、これは当然の言及である、とする見方(http://d.hatena.ne.jp/charis/前掲)もあるのです。
ただ、恐らく(宮内庁と)主要プレスは、側室への言及を報道することは、三笠宮寛仁殿下と皇室のためにならない、と判断したのでしょう。
しかし考えて見れば、殿下のように、単に皇室関係者であられるだけでなく、皇位継承に関して利害関係者でもあられるお方が、女性天皇に異議をお持ちであろうこと自体にはニュース性はさほどありません。
ニュース性は、そのお気持ちを会員に回覧される会報に寄稿され、表にされたところにあります。しかし、何と言っても、一番ニュース性があるのは、表にされようが、例えば親しい友人にだけ漏らされようが、「「側室」を置く<ことに>私は大賛成です」というお考えを殿下がお持ちである点でしょう。
そうだとすると、その点についても報道するBBCや、その点だけにしぼって報道するガーディアンを持つ(日本に関心のある)英国人に比べて、全くこの点を報道しない主要プレスを持つ(英国メディアに接していない大部分の)日本人と、どちらが日本の皇室のことを良く知っていると言えるのでしょうか。当然前者ですよね。
しかも、何度も申し上げているように、報道自主規制の対象は、皇室報道以外にも無数にある、と考えられるのですから、日本人の大部分は、日本に関心のある英国人、つまりは日本に関心のある英語が読める世界の人々、よりも日本のことをはるかに知らない、ということになります。
みなさん。日本の行く末が心配になりませんか。
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