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太田述正コラム#9432005.11.12

<日本が破綻させた日米韓同盟(その4)>

5 日本の覚醒を促す声

 (1)欧州・英国の声

 米国の声は、既に登場したローレスによって代表することとして、ここではまず欧州・英国の良識派の代表として、バートラム(Christoph Bertramにお出ましいただくことにしましょう。

 バートラムは、ドイツ人で、ベルリンのドイツ国際・安全保障問題研究所(German Institute for International and Security Affairs)の所長を勤めたことがありますが、それより以前にロンドンの国際戦略研究所(International Institute of Strategic Studies)の所長も勤めたことがあるので、欧州及び英国を代表する外交・安全保障問題専門家であると言ってよいと思います。

 彼の言わんとするところを、部分的に私の言葉に直してご紹介しましょう。

 小泉首相の靖国神社参拝もあって、日本はアジアで一層孤立しつつある。

 これは、依然アジアで経済的かつ軍事的に最も強力な国である日本を隅に追いやろう(marginalize)とかねてより目指してきた中共当局の立場を強め、アジアのその他の国々を中共の陰の下により深く吸引させるものだ。

 また、日本の孤立の深まりは、必然的に日本をその唯一の同盟国である米国により依存させることとなり、将来の地域的危機に、対立と抗争ではなく、協調の精神で対処するための枠組みをアジアで構築するわずかな機会を奪うものでもある。

 米国としては、地域における中共の影響力増大に対して、日本を更に米国に固くつなぎとめることで、対抗できると思っているのだろうが、これでは日本がバランサーとしての役割を果たすことができず、結局のところ、長期的には米国の利益にはならない。

 欧州諸国は、短期的な対日政策すら持っていない。中共の拡大を続ける市場に心を奪われ、地域の安定にほとんど考慮を払っていない。

 EUが昨年、象徴的なものに過ぎないとは言え、対中武器禁輸を解除しようとしたとき、EU諸国の政府のは一つとして、これが政治的に中共支持していると受け止められるであろうことを顧慮しなかった。そして、日本が解除に反対しても、誰も耳を貸さなかった。米国が経済制裁をちらつかせ、中共が台湾への圧力を強めて、初めてEUは解除を思いとどまった。

 米国のように日本を不沈空母として用いるのも、欧州諸国のように日本を政治的に無視するのも誤りであり、米欧は、上述のような国際的枠組みをアジアで構築する、という新しい戦略的アプローチに切り替えるべきなのだ。

 その前提となるのが、日本が孤立から抜け出し、積極的にこのアプローチに関与することだ。

 そのためには米欧が、手を携えて日本を後ろから支えることが望ましい。

 日本は確固たる自由・民主主義的伝統を持つ経済的巨人であり、欧米と広汎かつ多様な商業的・文化的紐帯によって結ばれている。

 その日本は何十年にもわたって国際秩序を維持するという責務を分担することを回避してきたが、日本もついに、再び国際的責任感に目覚めつつある、と思いたい。

 (以上、http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2005/11/01/200327830711月2日アクセス)による。)

 (2)アジアの声

アジアの声は、陳水扁総統に代表してもらいましょう。

総統は11月9日に、「日本・・は「政治、軍事面でリーダーシップを発揮できる」と語り、地域安全保障により積極的な関与を求めた。具体的には、国連平和維持活動への参加拡大に加えて、地域諸国間の戦略的均衡を維持する「バランサーになることができる」と説明。日本の改憲論議についても、自衛隊の役割拡大という観点から「非常に関心を持っている」と述べた」http://www.asahi.com/international/update/1110/001.html1110日アクセス)のです。

このところ、中共の、台湾の野党で中台統一を掲げる中国国民党への微笑攻勢に、適切に対処できていない印象を与え、評判の落ちている陳水扁総統ですが、彼の表明した日本に対する期待は、アジアの自由・民主主義を信奉する広汎な人々の意見を代弁している、と私は思うのです。

あの韓国のノ・ムヒョン大統領すら、小泉首相の靖国参拝は「受け入れがたい」としつつも、日本の憲法改正の動きについては、「日本が軍隊を持つことなどに懸念はあるものの、我々が反対できる問題ではない」としているhttp://www.asahi.com/politics/update/1110/003.html1111日アクセス)くらいです。そのココロは、日本が地域安全保障により積極的な関与をすることを認める、ということです。

(続く)

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