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太田述正コラム#10172005.12.25

<徒然なるままに(その4)>

4 クリスマス

 クリスマスが来ると、カイロ時代の小4のクリスマスの朝を思い出します。

 小3の時に小犬を下さいとサンタクロースに手紙に書いたら、朝小さい瀬戸物製の子犬が枕元に置いてあって、何だか変だな、と思いつつも、まだサンタクロースの実在を信じたい気持ちが続いていました。

 しかし、その次の小4の時には、(何をサンタクロースに頼んだか忘れてしまいましたが、)イブの夜、来客と歓談していた父にサンタクロースの話題を出したら、今年はサンタクロースは来ないのじゃないかな、と言うのです。お客さん達もにやにやしています。

 不吉な予感は的中します。

 朝、目が覚めると、枕元には何もありませんでした。

 自分の少年時代が終わった、と私が自覚した一瞬でした。

 クリスマスが来ると、もう一つ思い出すことがあります。

 それは、いつのことだったか、初めてディッケンズ(Charles Dickens)の「クリスマスキャロル(A Christmas Carol)」(1843)を読んだ時の感動です。

これは、英語で書かれた比較的短い小説としては、最高傑作ではないでしょうか(注5)。

 (注5)珠玉の「書評」がガーディアンに載っていた(http://books.guardian.co.uk/departments/classics/story/0,6000,1673562,00.html1223日アクセス)。

他方で私は、日本語で書かれた比較的短い小説(正確には、戯曲集)の最高傑作は、三島由紀夫の「近代能楽集」だと思っています(注6)。「クリスマスキャロル」と「近代能楽集」(1956)を通して、私は、それぞれイギリス人と日本人の宗教観を知ることができたような気がします。

(注6)もっとも私は、30台になってからというもの、ほとんど小説類を読まなくなってしまったので、1980年代以降にもっと名作が出現している可能性はある。

 今年のクリスマスには、久しぶりに感動を味わいました。

 NYタイムス電子版に、フレッド是松(Fred Korematsu)・吉沢章(Akira Yoshizawa)・遠藤ゆうき(漢字は不明。Yuki Endo)という三人の日本人(ただし、是松氏は二世の日系米国人)についての記事が、従って合計三本も出ていたのですが、その三つとも、NYタイムスの日本人に対する熱い思い入れがこちらに伝わってくるような内容だったからです。

 かねてより私は、同紙の日本についての記事・論説の多くは米国中心的なバイアスがかっていると思い、そのように記してきたのですが、一体どういう風の吹き回しなのでしょうか。

うち二つの記事は、タイムスの本紙ではなく、NYタイムスマガジンの記事ですが、同マガジンの今年亡くなった人の追悼集の総括的記事(http://www.nytimes.com/2005/12/25/magazine/25intro.html1225日アクセス)は、誰もが取り上げるところの、市民権運動の黒人女性のパークス(Rosa Parks)、法王のヨハネ・パウロ2世(Pope John Paul II)、米最高裁長官のレーンキスト(William H. Rehnquist)、小説家ソール・ベローの(Saul Bellow)、TVのニュース解説者であったジェニングス(Peter Jennings)、政治家であったユージン・マッカーシー(Eugene J. McCarthy)、戯曲作家のオーガスト・ウィルソン(August Wilson)、ドイツ生まれの米ノーベル賞受賞物理学者のベーテ(Hans Bethe)、コメディアンのプライヤー(Richard Pryor)の8人のような人々、以外の人々を独断と偏見で選んだ、としています。

その上で、同マガジンは23人を追悼する記事23本を掲げているのですが、うち二人が日本人(日系米人を含む)についての追悼記事なのです。

もっとも、総括的記事の中で列記された8人は米国人7人(ドイツ生まれの米国人1人を含む)にドイツ人1人であるのに対し、独断と偏見で選んだ方の23人は、米国人20人(二世たる日系米国人1人を含む)とイスラエル人1人・英国人1人・日本人1人という組み合わせであり(http://www.nytimes.com/pages/magazine/index.html1225日アクセス)、どちらのリストもやはり、いかにもNYタイムスらしく、「米国中心的なバイアスがかっている」のはご愛敬です。

(続く)

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