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太田述正コラム#1109(2006.3.6)
<ブッシュ三題噺(その3)>
(コラム#1107と1108で、ドバイとDPWとの関係を、「ドバイ首長国が所有するDPW」に改めました。また、コラム#1108の最後の段落を大幅に改めました。なお、P&Oとは、Peninsular & Oriental Steam Navigation Company(前出)のことです。)
(2)反対の大合唱
2月末に、米議会で民主党からも共和党からも、ドバイの会社が米国ニューヨーク・(ニュージャージー州の)ニューアーク・マイナミ・フィラデルフィア・ニューオーリーンズ・ボルティモア各港の港湾管理に従事することにテロ防止の観点から反対する声が噴出しました。ニューヨーク州とメリーランド州の知事(どちらも共和党)も反対声明を出しました。
2月28日にブッシュ米大統領は、これら議会の声は、中東の国に対する偏見から来ているとした上で、仮に議会が本件を阻止する法律を出してきた時には、拒否権を発動すると言明しました。(3月1日に、ホワイトハウスのスポークスマンは、本件はブッシュ大統領の判断をあおぐような内容のものではなかったとした上で、反対の声が出たことを踏まえて大統領に初めて説明したところ、大統領は、本件について問題ないという判断を下したとした上で、そもそも港湾の(対テロ等)安全対策は沿岸警備隊(U.S. Coast Guard)と税関(U.S. Customs and Border Protection)が担当している、と補足しました。)
(以上、http://www.latimes.com/news/politics/la-na-ports23feb23,1,7788757,print.story?coll=la-headlines-politics、及びhttp://www.latimes.com/news/politics/la-na-portassess26feb26,1,7542765,print.story?coll=la-headlines-politics(3月4日アクセス)による。)
しかし、3日に、DPWから再審査請求が正式に連邦政府に出されたことを踏まえ、近日中に、ブッシュ政権は、45日間かけて実施するDPWの適格性の再調査に着手し、ブッシュにその調査結果を報告した上でブッシュが最終的な判断を下すことになりました(http://www.nytimes.com/2006/03/04/politics/04review.html?_r=1&oref=slogin&pagewanted=print。3月4日アクセス)。
(3)根拠レスな反対論
反対論には、次のように全く根拠がありません。
・(DPWが買収した)P&Oは英国の会社だが、米国の港湾管理会社を買収したことに伴い、前出の米国の6港のうち、5港は1999年から、1港は2000年から管理を行っている。ところが、この外国の会社による買収の時には反対論は全く起こらなかった。それどころか、このほかにも現在、米国の15の港がシンガポールを含む外国の会社によって港湾管理をされている。
また、空港管理についてもかねてより、様々な形で英国やドイツ等の外国の会社が関与してきているが、こちらの方も反対論が起こったためしがない。
英国やドイツの会社なら安全だ、ということにはならない。昨年のロンドン地下鉄爆破テロの実行犯は4人とも英国籍であったことを思いだそう。また、9.11同時多発テロの計画はドイツで練られ、ハイジャック実行犯の何人かは長期にわたってドイツに住んでいたことも思いだそう。
・ア首連には、9.11同時多発テロの前にテロリストが足繁く出入りをし、ハイジャック実行犯のうちの2人はア首連国籍であり、また同地がテロリストの主たる資金洗浄地であったことは事実だが、その頃の米国自身の対テロ対策もぬかりだらけだったことを忘れてはなるまい。いずれにせよ、同時多発テロ以降は、ア首連は、米国の対テロ対策の模範的な協力国となっている。
しかもア首連は、かねてより米国の忠実な同盟国であって、1991年の湾岸戦争の時には米国を中心とする多国籍軍に部隊を参加させたし、対アフガニスタン戦と対イラク戦に賛成し、対イラク戦後にはイラクに人道支援をしていて、米軍の部隊がイラクへの行き帰りにドバイを自由に使うことを認めている。ハリケーン・カトリーナの被害地域に1億米ドルの義捐金も送っている。ア首連の中でもドバイが、いかなる所かは既に説明したところだ。
・DPWという会社をうさんくさく思うむきもあるが、あのドバイの港を始めとして、香港・中共・欧州・南米・豪州にわたって、数多くの、世界有数の規模のものを含む港湾の管理に従事してきており、折り紙付きの優秀な会社だ。米国のCSXからその国際部門を買収した件については既に説明したところだ。
DPWの米国内での港湾管理には主として米国人スタッフがあたるし、同社の役員には米国人もいる。ブッシュ政権は、先月、DPWの役員の一人である米国人を、米運輸省の要職に就任させたばかりだ。
・DPWが公有であることを問題にするむきもあるが、シンガポールの政府が所有する港湾管理会社の子会社がシアトル港の港湾管理を行っているほか、多数の港湾で倉庫業務等を行っているが問題視されたことはない。また、かつて英国政府の所有する会社が、そして今でもドイツの連邦政府が所有する会社が米国のいくつかの空港の管理業務の一部を行っているが、問題視されたことはない。
(以上、http://blogs.washingtonpost.com/thedebate/2006/02/ports_of_dubai.html?http://blogs.washingtonpost.com/thedebate/2006/03/alienating_our_.html(3月6日アクセス)による。)
(続く)
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