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太田述正コラム#1206(2006.4.28)
<戦う朝鮮日報(その1)>
(本篇は、4月29日に上梓しました。)
1 始めに
先般(コラム#1194??96、1199で)、竹島をめぐる海洋調査問題の報道を通して私が感じた朝鮮日報のノ・ムヒョン政権の外交への批判ぶりをご紹介したばかりですが、たまたま4月29日の英語電子版及び日本語電子版で、同紙のノ・ムヒョン政権の対日・対北朝鮮・対米外交への批判報道が揃い踏みをしていたので、同紙の熱い思いを、再度ご紹介しておきたいと思います。
2 対日外交
(1)海洋調査に係る今次外交は日本の勝利だった
ア 韓国の外交官批判
「独島・・周辺の海洋調査問題をめぐる韓日両国の次官協議<で>・・「サムライ・谷内(正太郎・日本外務省次官)の胆力が、韓国の交渉相手を打ち負かした」・・<と>する記事が、27日付の日本の新聞に掲載された。・・<日本の>外交評論家らは合意内容に対し「外交のプロでなければ成し得ないことだ」と高く評価している。・・韓日双方の外務次官の合意により、早ければ来月中にも・・排他的経済水域(EEZ)の境界画定交渉<が>・・再開される・・。・・両国がこの問題で対立していること<が>外交文書として残<ってしまったわけだ>。・・最近報道された<日本の>外務省の秘密文書で指摘されているように、日本側は「反日ナショナリズムを権力基盤<維持>の道具として利用する・・ノ・ムヒョン・・政権の強硬姿勢を逆に利用しよう」というやり方で出てくるだろう。「日本に強く対処することで<韓国の>国内世論の支持を得られる」として、むしろ韓国側に入れ知恵するかもしれない。谷内次官のソウル行きはその入り口を開けることに成功したわけだ。」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/28/20060428000010.html。4月29日アクセス(以下、同じ))。
これは、韓国の外交官のアマチュアリズムを批判している記事です。
日本の新聞に掲載された記事なるものも眉唾ですが、日本の外交評論家に至っては、朝鮮日報記者の分身であることは明らかです。社論をストレートに記した場合の風圧を和らげるための、おなじみのおまじないです。
イ ノ・ムヒョン大統領は間違っている
「安秉直(アン・ビョンジク<)・・>ソウル大学名誉教・・は、独島・・問題について「韓国が実質的に領有しているのに騒ぎ立てるのは得策とはいえない」との見方を示した。日本は国際法上、独島が自動的に韓国の領土になるのを阻止するため「騒がなければならない」立場だが、韓国はそのような必要はないということだ。安教授は、・・ノ・ムヒョン・・大統領の特別談話後、「(独島が)さらなる国際紛争地に発展している」とし、「(独島を紛争地域化しようとする日本の策略に)巻き込まれているように思われる」と話した。」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/28/20060428000004.html)
「<せっかく海洋調査をめぐる外交交渉が妥結した直後にノ・ムヒョン・・大統領の特別談話が出たことは、>青瓦台と外交通商部の足並みが揃っていないと考えるほかない」と麻生外相は語った。」(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200604/200604280027.html)
この二つの記事は、ノ・ムヒョン大統領の対日外交への婉曲な批判です。
「ノ・ムヒョン・・大統領が「静かな外交」の全面的な見直しを宣言して日本を強く批判したのに対し、日本の反発も大きくなっている。日本の外務省は、今後「韓国の独島(日本名竹島)に対する実効支配」という表現を「不法占拠」との表現に変更することを明らかにした。日本の大半のマスコミも盧大統領を批判している。2002年のサッカー・ワールドカップの韓日共催を最初に提案した朝日新聞は、社説で「盧大統領は怒りのボルテージを上げているうちに、収まりがつかなくなっているかのようだ」とした。毎日新聞も「そこまで言うなら、なぜ国際司法裁判所への付託に同意しないのか」との社説を書いた。」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/28/20060428000027.html)
これは説明は不要でしょう。
(2)そもそも日本に外交で勝てるなどと考えること自体がおこがましい
ア 一般論
「国際的な宣伝合戦になれば、外交・経済・文化的に勝っている日本が有利になる・・。・・東海(日本海)で海軍力を増強することもあり得る。」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/28/20060428000027.html上掲)
「両国間の対立が貿易問題に発展した場合、韓国の産業に少なからぬ影響が出ると思われる。韓国は主要な部品や材料を日本から輸入しているためだ。金泳三・・元大統領は1995年・・、韓日両国の歴史認識問題について「これを機に(日本の政治家の)態度を正してみせる」と発言したが、これがその後、自民党が選挙公約に「竹島の領有権確立」を盛り込み、韓日漁業協定を破棄するなどの行動に出ることにつながったとする分析が根強い。また1997年の通貨危機の際、日本が韓国に対し非協力的だったとの分析もある。」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/28/20060428000030.html)。
日本にこのような力(能力)があることは事実ですが、吉田ドクトリンの呪縛下にある以上、そのような意思はありません。記者は分かっていて、韓国の人々を善導するためにこんな風に書いているのです。
イ 竹島
「韓国政府関係者は「国際司法裁判所に持ち込んでも特に不利なことはないが、裁判の結果が100パーセント確信できないので避けるのが望ましい」と話した。」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/28/20060428000034.html)
この記事を掲載した勇気には注目すべきです。
竹島問題では、実は韓国側の言い分が薄弱であることを慎重に指摘し始めているわけです。
(3)古からの日本と朝鮮半島の密接な関係に思いを致せ
「小説家の崔仁浩・・は伽揶を「韓国史の失われたアトランティス」と言う。古代王国の中で一番先に舞台から消え去り、その実体は謎としてベールに包まれているとのこと。・・古代日本の天皇の墓でだけ発掘されていた・・巴形銅器銅器が1990年に金海13号古墳・・から・・6点・・出土した・・ということは、伽揶と日本の支配勢力間の密接な関係を証明しています。日本は伽揶地域に進出し、韓半島を治めたという任那日本府説を主張するが、私<が>・・下した結論は、むしろ伽揶の民が日本に渡って古代王朝を立てたということです」と強調した。」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/25/20060425000002.html。4月29日アクセス)
朝鮮日報は、このインタビュー記事を25日から掲載していますが、その目的は、古から朝鮮半島と日本は、切っても切り離すことができないほど密接な関係にあったことを韓国の朝野に訴えるところにあると思います。
ちなみに私は、古代においては、朝鮮半島南部と九州は同一文化圏を構成していた、と以前から考えています(コラム#262)が、韓国側からこのような考えが打ち出されるまで、後一歩という感がします。
(続く)
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