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太田述正コラム#1292(2006.6.12)
<ザルカウィの死(その3)>
5 ザルカウィ捕捉まで
米国のCIA等の諜報要員、及び、米陸海空統合特殊部隊たるデルタ・フォース(Delta Force)の対テロ・コマンド、米海軍の特殊部隊のシール(SEAL)の第6チーム、米陸軍のレンジャー(Rangers)からなるタスクフォースは、2003年12月のサダム・フセインの追跡に協力し、フセインの逮捕に成功した後、今度はザルカウィを追いかけたのですが、なかなかうまくいきませんでした。
ザルカウィは変装の名人であり、神出鬼没だったからです。
昨2005年11月にザルカウィがヨルダンの三つのホテルの同時自爆テロ事件を引き起こし、60名余の死者を出したことを契機に、ヨルダンのアブドラ国王がヨルダンの諜報機関にイラクのザルカウィ討伐の専門部局設置を命じたことで、米国とヨルダンが手を携えてザルカウィを捕捉する態勢ができました。
ヨルダンの諜報要員は、イラクのアラブ人の中に、全く気付かれずに入り込むことができ、情報収集に大いに貢献するのです(注5)。
(注5)日本では陸上自衛隊にレンジャー要員こそいるが、主として対テロ作戦を行うところのデルタ・フォースに相当する特殊部隊はない。(ちなみにこの種部隊の元祖は英国のSASだ。)もちろん、日本には諜報機関もない。何ともなさけない限りだ。
今年に入ってからは、サダム・フセインに忠誠心を抱く旧バース党員たるイラク不穏分子の中でザルカウィの残虐さとシーア派へのテロ攻撃に反発する連中からの情報が次々に入るようになります。更に、ザルカウィ一味の中からもイラク人でもヨルダン人でもない一人の内通者が出てきて、ザルカウィの連絡要員3名が誰かを教えてくれました。
事態が大きく進展したのは、先月、ヨルダンの諜報要員がヨルダンの一人の関税職員を逮捕したことです。この職員は、ザルカウィ一味へのヨルダン経由でのカネや物資の供給を担当していた人物であり、彼からザルカウィの教戒師(spiritual adviser=ザルカウィの言動にイスラム教的根拠付けを提供する人物)に関する情報が引き出せたのです。
その間、イラク国内のザルカウィ一味の17の拠点が把握されており、米タスクフォースは、盗聴器によってそのうちの一つに潜伏中のこの教戒師をつきとめます。
米タスクフォースは、教戒師はプレデター(Predator)無人偵察機で上空から監視下に置き、連絡係3名もマンツーマンで監視下に置きました。
教戒師と連絡係のうちの一人の計2名が同じ場所、バクーバ(Baquba)・・その近くの村にザルカウィの隠れ家があった・・を目指して動き出した時、デルタ・フォースは行動を起こします。
こうして、ザルカウィの隠れ家の周りに、数名のデルタ・フォース隊員達が接近したのです。
自分達だけで隠れ家を急襲するには人員数も武器も不足していた上、夕刻が近づいていました。もちろん応援部隊は頼んでいたのだけれど、この間に、数人がこの隠れ家を訪れ、数人が隠れ家から出かけていきました。出かけた中にはザルカウィはいなかったものの、隊員達の焦燥感は募りました。
そこで、彼らは空爆の要請をしたのです。
(以上、http://www.time.com/time/magazine/printout/0,8816,1202929,00.html(6月12日アクセス)、http://observer.guardian.co.uk/world/story/0,,1794904,00.html(6月11日アクセス)、及びhttp://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/06/10/AR2006061000528_pf.html(6月11日アクセス)による。)
それから先は、既にご説明したとおりです(注6)。
(注6)2機のF-16がそれぞれ一個の爆弾を投下したと書いた(コラム#1286)が、2個の爆弾は1機のF-16から投下されたようだ(http://www.nytimes.com/2006/06/11/world/middleeast/11scene.html?pagewanted=print。6月11日アクセス)。
(続く)
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