太田述正コラム#13072006.6.20

<捕鯨再論(続々)(その1)>

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1 始めに

 ドイツで開催されているサッカーのワールドカップでは、日本の悪戦苦闘が続いています。

 しかし、平行してもう一つの死闘が日本を主役として続けられています。国際捕鯨委員会(IWC)での捕鯨解禁派と捕鯨禁止派との間の死闘です。

 どちらも、日本(側)が勝とうが負けようがわれわれが命までとられる話ではありません。

 しかし、前者と違って、後者の帰趨には世界史的意味がある、ということは、私がつとに申し上げてきた(例えばコラム#1273)ところです。

 それにしては、前回私が(コラム#1273で)捕鯨問題をとりあげた以降も、日本側に劣勢に立たされたという危機意識から、英米のメディアが一貫して本問題に強い関心を持ち続けた(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/06/04/AR2006060400635.html(6月6日アクセス)、http://observer.guardian.co.uk/world/story/0,,1794987,00.html(6月11日アクセス)、http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/5066538.stm(6月12日アクセス)、http://www.cnn.com/2006/WORLD/americas/06/15/whaling.ap/index.html(6月16日アクセス)、及びhttp://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/5080508.stm(6月16日アクセス))というのに、日本のメディアの本問題への関心の低さは際だっていました。

2 日本側敗北?

元凶はわが外務省ではないか、と思い始めたのは、カリブ海のミニ国家の一つであるセントキッツ(St. Kitts )で開催された今回のIWCで行われた最初の採決の結果が出る直前に上梓されたロサンゼルスタイムスの記事(http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-whales16jun16,1,3235831,print.story?coll=la-headlines-world。6月17日アクセス)を読んだ時でした。

というのも、捕鯨禁止派の切り込み隊長といった趣のある豪州のキャンベル(Ian Campbell)環境相が、新しくIWCに加盟した太平洋のミニ諸国に対し、日本側に同調すれば、豪州は観光ボイコットをするぞ、と露骨に恫喝していたというのに、わが外務省筋は記者の質問に対して、「われわれは日本の会社はもはや商業捕鯨には興味を持っていないと思っている。また、捕鯨が日本の文化の一部だといった議論をしているわけでもない。考えても見て欲しい。これは第三次世界大戦が起きるような問題ではない。捕鯨はトヨタがそうであるような意味では、日本経済にとって重要ではない。」などと評論家のような答え方をしていた(ロサンゼルスタイムス上掲)のですから・・。

これでは、せっかくIWC日本代表団の一員である森下丈二水産庁資源管理部遠洋課課長補佐(捕鯨班長)(京大卒・ハーバード大学院卒)(http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/%90X%89%BA%8F%E4%93%F1/list.html。6月19日アクセス)が英BBCにまで生出演して、「多くの日本人は欧米人、つまり外の世界が、彼らの感情的な価値観を日本に押しつけていると考えている。だから多くの日本人は、欧米人は弱い者いじめで傲慢だと考えている。・・豊富な鯨類は適度に活用しつつ少なくなっている鯨類は保護する、ということに何ら問題はないとわれわれは思っている。これは他の野生動物や漁業資源の保全・管理と全く同じ話なのだ。」だから、「科学と恐らくは国際法」は日本側に味方している、と力説(http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/5085730.stm。6月17日アクセス)しても、どうしようもないではありませんか。

こんな外務省なら、ない方がマシです。

案の定、捕鯨禁止派と捕鯨解禁派の共通の票読みに反して、IWCの出だしの二つの投票・・海に棲息するイルカ等の小型哺乳類をIWCでは扱わないことにする決議案と、秘密投票制を導入する決議案のいずれの採決でも日本側は敗北してしまいました(BBC上掲)。

昨年のIWCではすべての決議案で日本側(捕鯨解禁派)は敗北こそしたものの、捕鯨禁止派との票差はほとんどなくなっていました。しかも、その後四つの国がIWCに新規加盟し、うち三つの国は日本側寄りだとされていた(BBC上掲)にもかかわらず・・。

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