太田述正コラム#13362006.7.8

<言語と人種の歴史(その1)>

1 始めに

科学技術のデータベースSCIScience Citation Index)に登載されている国際学術誌への昨年の論文掲載数で見ると、米国が348686編を発表し世界一であり、次いで英国、日本、ドイツ、中国、フランス、カナダの順でした(注1

http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/06/20060706000041.html。7月7日アクセス)

(注1)大学別では、ハーバード、東京、UCLA、・・ケンブリッジ(19位)、・・ソウル(30位)、・・MIT32位)、・・精華(70位)。

 科学技術の面でも、依然としてアングロサクソンが圧倒的シェアを占めていることが分かります。

 当然、アングロサクソンの科学技術記者の言うことには耳を貸さなければならない、ということにもなります。

 英ネーチャー誌や米サイエンス誌の編集者や記者を経てニューヨークタイムスの科学記者をしているウェード(Nicholas Wade)が、このたび上梓したBefore the Dawn : Recovering the Lost History of Our Ancestors’は、古生物学・考古学・人類学・言語学・歴史学等の研究成果を、最新の遺伝子学の観点から批判的に総合し、人類史に新しい光を当てたとして話題になっています。

 そのほんのさわりをご紹介しましょう。

 (以下、http://www.atimes.com/atimes/Front_Page/HG04Aa02.html(7月3日アクセス)

http://www.americanscientist.org/template/InterviewTypeDetail/assetid/51892;jsessionid=aaab4ivx-4aTnV(7月8日アクセス。以下同じ)、

http://article.nationalreview.com/?q=MmFiNGE0NjcyMjA0MGFmYjBmNzQzZTE5OGVjZGYyMGQ

http://www.theaustralian.news.com.au/story/0,20867,19459828-5003900,00.html

http://www.vdare.com/sailer/060507_wade.htm

http://www.amazon.com/gp/product/product-description/1594200793/ref=dp_proddesc_0/104-8537763-3897559?ie=UTF8&n=283155&s=books

による。なお、ウェードのこの本に対する批判については、

http://www.gnxp.com/blog/2006/06/before-dawn-slammed-in-nature.php参照。)

2 言語の歴史

 (1)狩猟採集経済と言語

 狩猟採集経済下の人類の三分の二は恒常的な戦争状態にあり、彼らは毎年人口の0.5%を戦争で失っていた(注2)。

 (注2)この率でいくと、20世紀には20億人の(広義の)戦死者が出る計算にあるが、20世紀の戦争や共産主義・ファシズムによる殺戮を全部併せても、その10分の1程度に過ぎない。

 

戦争による死亡率がかくも高かったのは、敵対勢力は絶滅させるのが習いだったからだ。

 未開時代には人々は平和に暮らしていたが、文明が戦争をもたらした、という観念が依然根強いが、むしろその逆が正しい(注3)。

 (注3)私の日本ないし日本史観は、縄文時代の平和が弥生時代に破られた、という前提に立ち、縄文モードと弥生モードが交替する形で日本史が展開していく、というものだが、ウェードの指摘が正しいとすると、この前提たる私の認識は誤りだということになるのか、それとも、縄文人は、恒常的な戦争状態にはない三分の一に属するのか。(太田)

 59,000年前に東北アフリカで誕生した人類(modern Homo sapiens)の内の150人程度が、 50,000年前に紅海南端のバブエルマンデブ海峡をわたってアフリカからユーラシア大陸に移住して行った。その時点では全員同じ言葉を使っていたのに、その後急速に言葉が分化したのは、上述したような恒常的な戦争状態の下で、よそ者を見分け排除する必要性に迫られたためだと考えられる(注4)。

 (注4)文字通り恒常的な戦争状態が続いてきたニューギニアには現存する世界の6,000の言語中1,200が存在しているが、ニューギニアの言語は、四分の一ずつ、これまでの各世紀ごとに失われてきた、と考えられている。

(続く)

太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/