太田述正コラム#1344(2006.7.15)
<正気に戻った韓国(続)(その2)>

 (3)韓国世論は激変した
 11日に韓国で実施された世論調査によると、北朝鮮のミサイル発射に対する政府の対応について、「過度に安易な態度に見えた」(63.3%)という否定的な意見が「落ち着いて慎重に対応していた」(29%)という肯定的な意見よりはるかに多く、また、北朝鮮のミサイル発射以降の、国連を通じた米国と日本の北朝鮮に対する強硬的対応の動きについては「再発防止のため強力な制裁が必要」53.6%、「効果もなく事態を悪化させるばかりのため必要ない」が37.6%でした。
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/13/20060713000037.html。7月13日アクセス)
 同じ日に実施されたもう一つの世論調査では、ノ・ムヒョン政権の対北朝鮮政策に対する世論調査で不支持が62.3%となり、支持の34.1%を大きく上回りました。昨年5月の調査では支持が48.1%、不支持が40.5%だったことを考えると大きな変化です。当然ながら、ノ・ムヒョン政権の南北融和政策については、「方向性は維持しながら一部修正が必要」が58.4%、「根本的に再検討必要」が29.8%、「引き続き維持」が10.3%でした。
http://www.sankei.co.jp/news/060713/kok081.htm。7月14日アクセス)
 韓国世論は、対北朝鮮政策に関し、ノ・ムヒョン政権に落第点をつきつけた、と言ってよいでしょう。

 (4)かさにかかった朝鮮日報のノ政権批判
  ア 総括
 これぞ千載一遇の好機と考えているのでしょう。
 朝鮮日報はかさにかかったように、ノ・ムヒョン政権批判を続けています。

イ 北朝鮮にコケにされた!
 テポドン等発射の後、予定されていた南北閣僚級協議を中止すべきだとする政府部内の意見を押し切って、予定通り開催すべきだとする統一部の主張を支持したのはノ・ムヒョン大統領でしたが、その結果は、協議の席上での、北朝鮮代表による、「われわれの先軍政治は韓国側の安全をも図るもので、韓国側の多くの民衆が先軍の恩恵を受けている」という発言であり、韓米合同軍事演習の中止、国家保安法の撤廃などの要求であり、50万トンのコメ借款と軽工業原料の援助要請でした。
 韓国代表は、「(そのような主張は)論理に合わず、受け入れられないので、今後はそんな主張はしないでほしい」と答え、ミサイル問題の解決のめどが立つまで援助問題は協議できないとの立場を言明するとともに、ミサイル問題の打開のためにも北朝鮮の6カ国協議復帰を求めましたが、北朝鮮側は怒って席を蹴って、予定より1日早く北朝鮮に帰国してしまいました。
(以上、
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/13/20060713000008.html
(7月13日アクセス)、及び
http://www.sankei.co.jp/news/060713/kok082.htm(7月14日アクセス)による。)
 これだけ北朝鮮にコケにされるに至ったのは、ノ・ムヒョン政権の安全保障感覚の欠如と対北朝鮮政策の誤りにある、と朝鮮日報は指摘します。
 まず、安全保障感覚の欠如については、朝鮮日報は、「スカッドのような移動式のミサイルを探し出し破壊する技術は進展してはいるものの、やはり移動式ミサイルは追跡が難しい。北朝鮮が保有しているスカッド・ミサイル、ノドン・ミサイルも、移動式の大型発射台に搭載して随時移動させることが可能な移動式ミサイルだ。北朝鮮が保有するミサイルの数はスカッド約600発、ノドン約200発とされており、これを搭載できる移動式発射台はスカッド用が36基以上、ノドン用が9基以上と推定されている。これらミサイルへの液体燃料の注入など、発射準備にかかる時間は、スカッドの場合1時間30分、ノドンの場合3時間程度で、韓米両国軍の情報監視システムが即時に把握しようとしても時間が短すぎる。移動式ミサイルであること以外にも、スカッドとノドンは化学兵器などの大量破壊兵器を運べるという点でも脅威となっている。韓国軍内部での分析によると、スカッド・ミサイル1発に化学兵器の弾頭を搭載して首都圏などの人口密集地域を攻撃した場合、最少で2900人、最大で12万人の人命被害が発生するという。北朝鮮が保有しているスカッド・ミサイルは命中度が低く、軍事目標を的確に攻撃するよりは、大都市を目標とした無差別攻撃をするのに向いているという点も注目すべきだ。」とし、今次テポドン等発射の後にも、ノ・ムヒョン政権の幹部が、「北朝鮮のミサイル発射は安全保障上の脅威ではない」といったノーテンキな発言を行っていることを批判する、記者の写真入りの記事を掲げました(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/11/20060711000058.html
。7月12日アクセス)。
 また、朝鮮日報は社説で、「北朝鮮政府は自国の漁船には「ミサイルが落ちるかもしれない海域へ出るな」と事前に警告した。いわば政府の役割を果たそうとしたのだ。しかし韓国政府は情報を知りながら、ミサイルが飛ぶ危険に満ちた空を、韓国の民間機が何も知らずに航行するのを放置し、ミサイルが間違って落ちるかもしれない海へ「出るな」と漁船に警告すらしなかった。それが国民の安全を最大の関心事とする政府がやることだろうか。この点で韓国政府は北朝鮮政府がしたことさえもできなかった。」という政権批判も行いました
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/10/20060710000004.html
。7月10日アクセス)。
 次に、対北朝鮮政策(太陽政策・包容政策)の誤りについては、朝鮮日報は、「これまで韓国社会には「困窮した北朝鮮を批判するのは守旧派の冷戦的思考であり、時代錯誤だ」という主張が洪水のようにあふれていた。だが、北朝鮮を批判すべき点は、金正日・・の人権じゅうりんや国際犯罪をはじめ、変化のない一方的な対南姿勢、国際的な取り決めを無視した核兵器開発やミサイル発射など、それこそ山のようにある。また、その金正日に秘密資金を提供した韓国側の姿勢も批判されてしかるべきだ。しかし、教条的な太陽政策の信奉者たちは、そのような正当な批判ですら「反統一」、「守旧冷戦」だとして、たびたび批判を繰り返してきた。今回、金正日が発射したミサイル7発は、韓国社会のこのようなとんでもない風潮をほとんど完ぺきにノックアウトするのに、逆説的に寄与した。」という舌鋒鋭い、論説委員による(やはり本人の写真入りの)論説を掲げました
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/11/20060711000032.html
。7月12日アクセス)。

  ウ 四大国には無視された!
 ノ・ムヒョン大統領は11日、北朝鮮が今月5日にテポドン等を発射して以来初めてこの問題について口を開いたのですが、出てきた言葉は、「北朝鮮がミサイルを発射したのはいくら考えても理解できない。しかし日本の政治家らによる先制攻撃発言により事態がさらに悪化する恐れが出てきた。日本のこうした態度は東北アジアの平和に深刻な影響をもたらす。これは退くに退けない状況だ」というものでした。
 これに対し、朝鮮日報は社説で、「今や大統領の沈黙に注目してきた国際社会も、韓国の大統領が北朝鮮のミサイル発射問題をたいした問題でないと考える一方で、この問題が触発した日本の先制攻撃発言については猛反発しているという矛盾した事実を知ることとなった。・・大統領はこのような優先順位を取り違えた見解を国際社会に公表してしまった。もはや国際社会が北朝鮮の核やミサイル問題について、大韓民国の意見に耳を傾けることはほとんどなくなるだろう。」と嘆きました
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/13/20060713000032.html
。7月13日アクセス)。
 朝鮮日報はまた、「外交部は北朝鮮のミサイル発射問題をめぐり中日両国の大使と会談を設けたが、中国大使との会談は非公開とする一方、日本大使との会談は事前に公開して記者を集めていたことがわかった。」とし、「なぜ日本大使との会談は公開されたのか」とノ・ムヒョン政権を糾弾する記事も掲げました。
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/12/20060712000008.html
。7月12日アクセス)。
 ノ・ムヒョン政権が、このように中共に対しては身内きどりで媚態を呈し、「敵」の日本(とその背後にいる米国)は粗略に扱ってきた結果どういう無惨なことになっているかを、朝鮮日報は社説で抉り出します。
 テポドン等発射後、日本は早くも7日に北朝鮮制裁決議案を国連安保理に提出したが、この案は5月以来日米両国間でつめてきたものであり、これに対し、14日には中共とロシアが共同で北朝鮮非難決議案を提出したが、どちらの決議案の提出にあたっても、一番切実な当事者であるはずの韓国は、事前に何の相談にもあずからなかったこと、つまりは韓国は、日米からも中露からもハシゴをはずされた状態にあることをこの社説は指摘し、このような国際的孤立状態は、ノ・ムヒョン政権自らが招いたものだ、と切り捨てたのです
http://english.chosun.com/w21data/html/news/200607/200607140024.html。7月15日アクセス)。

(完)

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