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太田述正コラム#1346(2006.7.17)
<ガザ・レバノン情勢の急変をどう見るか(その1)>

1 始めに

 米国の眼から見れば、イラクが一抜けた残り二つの悪の枢軸である北朝鮮とイラン・・どちらも核武装に向けてまっしぐら・・は同じ穴の狢であり、米国は両国に対し、基本的に同じ発想に基づく対抗策・・体制変革追求策・・を講じてきている、と考えられます。
 米国は、北朝鮮の核兵器開発問題については、六カ国協議の場に下駄を預けて直接対話を拒む一方で、北朝鮮の米ドル紙幣偽造等の違法行為「阻止」と拉致等の人権蹂躙「糾弾」からなる政策の推進に鋭意努めてきました。そのねらいは核開発阻止もさることながら、北朝鮮の体制変革・・少なくとも金家の失権・・です。
窮地に陥った北朝鮮は、この局面の打開を図るべく、テポドン等発射という乱暴な行為に及んだわけですが、米国は待っていましたとばかり、日本を手先に使って国連安保理で攻勢に出、その結果、北朝鮮の「味方」の中露は北朝鮮非難安保理決議賛成に追い込まれ、もう一つの「味方」である韓国は太陽政策中止(対北朝鮮経済制裁発動)を余儀なくさせられ、北朝鮮(金王朝)の運命は風前の灯火となってしまいました。
 (以上、http://www.nytimes.com/2006/07/16/world/asia/16nations.html?pagewanted=print
及びhttp://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/17/20060717000002.html
(どちらも7月17日アクセス)による。)
 米国は、イランの核兵器開発問題については、EUに対イラン交渉をゆだね(注1)て直接対話を拒む一方で、今年の4月から、国連安保理への対イラン経済制裁決議案の上程を示唆しつつ、EUや湾岸諸国に対し、経済制裁・・具体的には、イランの石油に係る資金のこれら諸国の金融機関による取り扱いの中止・・を呼びかけ始めました。
(以上、特に断っていない限り
http://www.time.com/time/magazine/printout/0,8816,1186528,00.html
(4月23日アクセス)による。)

 (注1)本年6月初め、EUは、交渉前・交渉中のウラン濃縮停止を条件として、将来、イランにイラン国内でのウラン濃縮を部分的に認める、との提案を行った
http://www.guardian.co.uk/iran/story/0,,1792739,00.html。6月8日アクセス)。
しかし、このような破格の提案に対してすら、イランは回答を引き延ばしてきており、業を煮やした安保理常任理事国5カ国とドイツは、7月12日、本件を国連安保理に付託することに合意した
http://news.yahoo.com/s/ap/iran_nuclear;_ylt=A0SOwj2JYLZDmXQBDwXlWMcF
。7月17日アクセス)。

 そのねらいは、イランの核兵器開発の阻止もさることながら、イランの体制変革にあります。
 本年2月にライス米国務長官は米議会に対し、イランの民主化を推進し、イランの反体制派と亡命グループを支援し、アラブ首長国連邦のドバイに設置されているボイス・オブ・アメリカのペルシャ語放送局の拡充を図るため、既存の1,000万米ドルに更に7,500万米ドルを上乗せする予算を要求しました。
 そして5月には、国務省に、これらイラン体制変革諸施策を統括する部局(Office of Iranian Affairs)が設置され、これに呼応して米国防省にも対応部局(Iranian directorate)が設置されました。
(以上、
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-usiran19may19,0,2290746,print.story?collla-home-world
(5月20日アクセス)による。)
 以上を踏まえれば、このところの、ガザ・レバノン情勢の急変が一体何を意味しているのかを理解することができるのです。
 先に結論を申し上げれば、米国はイスラエルを手先に使って、イランの傀儡であるパレスティナのハマスとレバノンのヒズボラを壊滅させ、もって、イランへの本格的経済制裁やイランの核施設等への武力攻撃の際のイランの有力な反撃手段・・対イスラエル・テロ攻撃・・を奪う行動に出た、ということです。
 以下、このことを具体的に説明しましょう。

(続く)

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