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太田述正コラム#1446(2006.10.13)
<北朝鮮核実験か(続x3)>

1 韓国は覚醒したのか?

 北朝鮮の脅威など全く感じなくなっていた韓国人の姿勢に変化が現れたのは、7月の北朝鮮による弾道弾発射以来です。
 アシアナ航空の北米便は、20分も余計に時間がかかるのに、北朝鮮空域を避けて飛ぶようになったのです。
 そして今度の北朝鮮による10月9日の核実験です。
 韓国の株価は3.6%も一挙に下がったのです。特記すべきは、この種事件があった時には、韓国の投資家はほとんど反応せず、外国の投資家が株を売ったものなのに、今回は、韓国の投資家の売りの方がはるかに大きかったことです。しかも、その売りの中心になったのは、個人投資家達でした。
 (以上、
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-voxpop10oct10,1,1644584,print.story
(10月11日アクセス)による。) 
 そして、核実験の直後の10日に行われた世論調査では、韓国政府のいわゆる太陽政策について、54.3%が「根本的な再検討が必要」と回答しました。
 つい最近まで圧倒的な支持を受けてきた太陽政策に対し、過半数以上が否定的な見解を抱くに至ったことは、心強い限りです。
 しかし、調査結果を更に見てみると、核実験により、人々が最も懸念しているのは、外国資本流出などによる韓国の「経済的な危機」(36.7%)であり、「米国の北朝鮮攻撃」(19.2%)と「韓国に対する北朝鮮の核攻撃」(15.7%)を上回っていますし、また、14.9%が「日本など周辺国の核武装競争」を懸念しています。そして、解決策については「南北間の協議を優先」(51,2%)と「米国との協議を優先」(45.0%)に二分されています。 (以上、
http://www.sankei.co.jp/news/061012/kok021.htm
(10月13日アクセス)による。)
 現在、韓国の世論は、いわば、覚醒した多数派と依然として覚醒していない少数派が、わずかの差でせめぎ合っている状況であると言えるでしょう(注1)。

 (注1)米国の主要メディアも、韓国世論の二分化を報じている。(例えば、
http://www.nytimes.com/2006/10/12/world/asia/12cnd-seoul.html?pagewanted=print
(10月13日アクセス)。)

 これを象徴しているのが、韓国国会で12日、北朝鮮の核実験を糾弾し、核保有の放棄を求める決議が、在籍297人中、わずか184人の出席で、賛成票150票でかろうじて採択された(
http://www.asahi.com/international/update/1012/016.html
。10月13日アクセス)という事実です。

2 問題はノ・ムヒョン大統領

 一番問題なのは、肝腎のノ・ムヒョン大統領が、依然覚醒しているように見えないことです。
 とにかく、核実験のニュースが飛び込んできた10月9日に行われた日韓首脳会談の席上、ノ・ムヒョンは、北朝鮮非難共同声明を出すことより、日本の歴史認識批判に長広舌をふるうことを優先した(
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20061011k0000m010109000c.html
。10月11日アクセス)、というのですから呆れます(注2)。
 
 (注2)ノ・ムヒョンは、7日に小学生達を前にして、場違いにも階級的世界観を滔々と語った(
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/10/09/20061009000064.html
。10月10日アクセス)。彼もマルクス主義の強い影響を受けているのだろう。彼は、少し昔までの、容共・反日・反韓国・親中・親北朝鮮の日本の「進歩的知識人」の韓国版だと思えばいいのかもしれない。韓国版「進歩的知識人」を生んだのは、李氏朝鮮時代の事大主義、かつての宗主国たる日本の知識人、北朝鮮の秘密工作、のすべてなのだろうが、私は日本人の一人として、日本のかつての知識人の責任を痛感せざるをえない。

 それでも当時の記者会見で、彼は、「これまでのようにあらゆることに耐え、譲歩し、北朝鮮が何をしてもすべて受け入れることはできなくなったのではないか」と太陽政策の軌道修正を示唆しました(
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/10/12/20061012000010.html
。10月12日アクセス)。
 しかし、11日、「(北朝鮮の核実験に対する対応策には)制裁と対話という2種類の方法がある。立場の違いにより、一方は強硬な制裁を進め、もう片方は対話で解決しようと話している。明らかなのは、この二つは共に有効であり、どちらか一つだけを選択できる問題ではないということだ」と語った(
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/10/13/20061013000009.html
。10月13日アクセス)ところを見ると、依然太陽政策にご執心のようです。どうやら、太陽政策の目玉とも言うべき、開城工業団地と金剛山観光の両事業は何が何でも継続したい、ということのようです(
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/10/12/20061012000010.html前掲)(注3)(注4)。

 (注3)もっとも、そのノ・ムヒョンよりも更にお粗末なのが、彼の前任者であり、かつ「恩師」の金大中前大統領だ。11日に金は、自分が始めた太陽政策で、北朝鮮に渡った約1兆円のカネが核や弾道弾の開発に寄与したことは明らかであるというのに、「北朝鮮が太陽政策を理由に核開発をすると言ったことはない。・・太陽政策には罪がないのに、これが失敗したとするのは適切な主張ではない。・・太陽政策は南北関係において明らかな成功をもたらしたし、さらなる成果を上げることができるのにもかかわらず、周知の通り、米朝関係が原因で行き詰まってしまった」と太陽政策に何の問題もない、と語ったものだ(
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/10/12/20061012000039.html
。10月13日アクセス)。
 (注4)金大中すら真っ青になるのが、韓国の左翼だ。例えば、韓国大学総学生会連合会(韓総連)は、「現在の事態の原因は100%米国にある。核保有は自主国家の権利であり、米国と国連にはこれを制裁するいかなる権利もない」と主張している(
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/10/11/20061011000047.html
。10月12日アクセス)。

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