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太田述正コラム#1460(2006.10.21)
<北朝鮮核実験(続x4)>
1 ワシントンポストも日本に核武装を促す
10日付のニューヨークタイムス電子版が、日本に核武装を促すフラムのコラムを掲載した(コラム#1443)と思ったら、今度は、ワシントンポストが、同紙の常連のコラムニストでユダヤ系のネオコンであるクラウトハマー(Charles Krauthammer)(
http://en.wikipedia.org/wiki/Charles_Krauthammer。10月21日アクセス)の日本に核武装を促すコラム(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/10/19/AR2006101901271_pf.html
。10月21日アクセス)を19日付の電子版に掲載しました。
2 クラウトハマーのコラムの概要
クラウトハマーは、日本も核武装について論議すべきだと主張した中川昭一自民党政調会長や麻生太郎外相の最近の発言に言及した後、「お隣にイカれた体制が存在して、そいつが弾道弾を日本を超えて飛ばした上に公式に核を保有するに至った以上、日本が<核政策を>再考するのは当然だ」と指摘します。
そして、「日本は模範的な世界市民であるだけでなく、その躍動的な経済、安定した民主主義、自己抑制的な外交政策からして、米国にとって英国に次いで重要で信頼できる同盟国だ。・・<それに、>日本の生来的な国益は、環太平洋地域において、軍事的政治的安定を維持し、容赦なく拡大しつつある中共を平和的に封じ込め、平壌のならず者体制に反対し、アジア全域に自由民主主義モデルを普及させる、というものであって、米国の国益と同じだ。」と続けます。
しかも、「日本が核武装を考慮すれば、それはただちに、中共をして北朝鮮の非核武装化に全力を挙げさせることになろう」とクラウトハマーは付け加えます。
3 所見
要するに、クラウトハマーは、米国の国益の観点から、核武装を含む日本の再軍備が必要であって、北朝鮮の核保有は、この方向に日本に防衛政策を転換させる良い機会であると考えているわけです。
これは裏を返せば、日本は近隣諸国からの自国に対する軍事的脅威には、核の脅威を含め、基本的に自分自身で対処すべきであり、日本が米国に期待するのは、基本的に、アジア・太平洋地域全般の軍事的政治的安定の面だけにして欲しい、ということであろうと私は解釈しています。
いわんや、北朝鮮からの核を含む軍事的脅威ごときは、本来日本が単独で対処すべきだ、ということではないでしょうか。
米加合同の北方司令部(NORAD)司令官のキーティング(Timothy Keating)米海軍大将は、20日、「北朝鮮は、第三世界の国の域にすら達していない。彼らは極めて未開(primitive)だ。彼らのエンジニアリングや製造技術は大したことがなく、1950年代の代物だ。・・高度な情報収集メカニズムをわれわれは持っているので、彼らがわれわれを奇襲(surprise)することはできない。・・われわれは金正日を注意深く監視しているのであり、このことを彼がゆめゆめ忘れないで欲しいと思っている」と語りました(
http://www.cnn.com/2006/WORLD/asiapcf/10/20/korea.mixed.message/index.html
。10月21日アクセス)が、私はその行間から、米国が北朝鮮ごときにかまわざるをえないことへのキーティングの腹立たしさを感じるのです。
いずれにせよ、米国を代表する新聞、ただし、どちらかというと民主党よりの新聞であるニューヨークタイムスとワシントンポストが、ともに日本に核武装を促すコラムを掲載し、その二つのコラムがどちらもブッシュ現政権の意向を代弁していると考え得る人物によって書かれたものであることは重大です。
なぜなら、米国は超党派で日本に核武装を含む再軍備を要請してきている、と受け止めてよいからです。
かくなる上は、日本の側において、この米国の要請を真正面から受け止め、政界の再編を厭わず、この要請を真摯に検討する態勢を一刻も早くつくる必要があるのではないでしょうか。
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