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太田述正コラム#1531(2006.11.26)
<ポロニウム殺人事件とロシア>(有料→2007.4.16公開)

1 始めに

 ポロニウム殺人事件に関するロシアに対する疑惑は深まるばかりです。
 
2 物的状況証拠

 1991年から2002年までの間、核兵器に転用可能なウランとプルトニウム、計約40kgがロシアの各施設から盗まれています。
 また、1993年にロシアの核関連研究所からポロニウムが10kg盗まれたとも言われています。
 他方、これまでポロニウム210が闇市場で取引された形跡は全くありません。
 以上から、今回の殺人に用いられたポロニウム210がロシア由来である可能性は極めて高いと考えられています。
 なお、ポロニウム210の半減期はわずか138日間なので、英国に持ち込まれたのは、最近のはずです。
 
3 人的状況証拠

 また、ロシアが怪しいという人的状況証拠は次のとおりです。

 ロシアの英国における諜報活動のレベルは、ソ連時代に比べて少しも減少していない。
 ソ連時代は、海外での暗殺はブルガリアや東独に代行させたものだが、ロシアになってから直接手を下すようになっていると見られている。
 今年初期にロシアで成立した反テロ法は、ロシア軍がテロの脅威と海外で戦うことを認めており、この法律が諜報機関にも同様のことを行う権限を公式に与えたと解する余地がある。
 プーチンがロシアで権力を掌握してから、既に20名以上のジャーナリストが不慮の死を遂げている。このほか、財界人や政治家も次々に暗殺されている。
 先月殺されたジャーナリストのポリツコフスカヤと、今回殺されたリトヴィネンコは親交があり、リトヴィネンコは生前、ポリツコフスカヤが、プーチンから人を介して脅迫を受けたと聞いたと語っている。

4 窮地に立つプーチン

 そもそも、現在のロシアでは法の支配が危機に瀕しており、TV網は政府によってコントロールされていて、国家権力至上主義と排外主義を国民に吹き込んでいます。
また、上述したように、政府に批判的なジャーナリストは投獄されたり殺されたりしており、議会は政府に手名付けられており、政党活動も萎縮してしまっています。
更に、人種差別的暴力がロシア全土で行われており、昨年は白系ロシア人によって少なくとも28名が殺害されています。
 ですから、欧米でのロシアのイメージは極めて悪くなっています。
 しかも、ロシアの豊富な化石燃料資源、とりわけ天然ガス資源を欧州や英国に売り込むこと等によって、欧州諸国や英国の生殺与奪の権利を確保しようとしているかのように見える、最近のプーチンの外交が、上記のロシアのイメージの更なる悪化をもたらしています。
 そのプーチンが、まさにEU首脳達とエネルギー問題等で協議に臨んでいる時にリトヴィネンコが死亡したので、プーチンは窮地に立たされています。
 (以上、
http://observer.guardian.co.uk/uk_news/story/0,,1957279,00.html
http://observer.guardian.co.uk/uk_news/story/0,,1957301,00.html
http://observer.guardian.co.uk/uk_news/story/0,,1957302,00.html
http://observer.guardian.co.uk/comment/story/0,,1957385,00.html
http://observer.guardian.co.uk/leaders/story/0,,1957392,00.html
http://www.latimes.com/news/opinion/la-ed-poison25nov25,0,4715228.story?coll=la-opinion-leftrail
http://www.ft.com/cms/s/42679b1a-7c29-11db-b1c6-0000779e2340.html
(いずれも11月26日アクセス)による。

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