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太田述正コラム#1546(2006.12.4)
<韓国の対日コンプレックス>

1 始めに

 朝鮮日報を読んでいると、韓国人が、旧宗主国たる隣人日本に対するコンプレックスの固まりであることがよく分かります。
 同紙の最近の記事・論説の中から、単純に自らをそしり、あるいは日本をほめるもの、そしてより複雑であるところの、自らをそしりつつ、あるいは日本をほめつつ、韓国社会に対する批判や朝鮮半島の指導者達に対する批判を行っているもの、をとりあげてみました。

2 単純なもの

 (1)自己毀貶

 カタールのドーハで開催中のアジア大会の野球の試合で、2日、韓国は日本に10対7で敗北したのですが、日本は社会人・学生選抜チームなのに、韓国はプロ野球選抜オールスターチームだったことから、朝鮮日報は、「これは、先日の台湾戦敗戦の衝撃をはるかに超える不名誉な記録であり、韓国の野球史上、最大の屈辱を味わったこととなる。しかも、試合を中継したMBCのスタッフまでもが「舌をかんで死んでしまいたい心境」、「国辱に値する」とし、韓国代表の不甲斐ない戦いぶりを非難した。」と報じました(
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/12/03/20061203000018.html
。12月4日アクセス)。

 日本では韓国戦での勝利など碌に報道もされませんでしたが、朝鮮日報のこの大げさな物言いには笑ってしまいますね。

 (2)日本誉褒

 今度は日本を褒めちぎっている記事をどうぞ。

 「日本の東京大学が、日本最大の信用評価機関「格付投資情報センター(R&I)」から、債務履行能力についての格付けで等級「AAA」を取得した。R&Iが格付けする669の企業や団体のうち、これまでに「AAA」を取得したのは、トヨタのような超一流企業を始めとする8つしかない。
 東京大学を始めとする日本の国立大学87校が法人に移行したのは、2004年のことだ。それまで日本の国立大も韓国の国立大と運営上の大きな違いはなかった。・・全ては法人に移行したことで、がらりと変わった。東京大学は大学経営協議会に民間CEOとしてJR(日本鉄道)の社長を招き入れ、企業の競争原理を取り入れた。また開校以来初めて、国際的なコンサルティング企業であるマッケンジーに経営分析を依頼した。さらに全学で大学が開発した技術の特許を取得し、それを企業に貸してロイヤリティーを得る技術移転会社(TLO)を設立した。これにより2003年に300件だった新技術の開発件数は2004年に550件、2005年には700件に増えた。現在、東京大学の総資産は1兆3000億円に達し、負債額の750億円を圧倒している。法人化してわずか2年で、150年の歴史を誇る東京大学が完全に生まれ変わったのだ。
 日本が2000年に国立大学の法人化を決断したのは、1995年から法人化を議論してきた韓国の動きがあったからだ。しかし韓国では縄張り意識の強い政府・大学双方が共に反対の姿勢を崩さず、10年以上の歳月を無駄にしてしまった。その結果、スイスのビジネスクールIMD(国際経営開発研究所)の発表する国際競争力ランキングで、韓国は大学競争力最下位という評価に甘んじることになった。」(
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/09/11/20060911000010.html
。9月11日アクセス)

 これだけ手放しで誉められると東京大学関係者ならずとも、体中がこそばゆくなりますね。

3 複雑なもの

 (1)大衆向け

 より複雑なものとして、怪獣映画の話をとりあげてみましょう。
 朝鮮日報はまず、この分野での先進国日本に素直に脱帽して見せます。

 「韓国最高の興行記録を樹立した映画『グエムル ??漢江の怪物??』(ボン・ジュノ監督)が、・・日本<でも9月に>封切られた<が、>日本のアニメを盗作したとしてネチズンの間で論争が巻き起こ<っ>ている。 ・・グエムル<が、>日本のアニメ『WXIII 機動警察パトレイバー』に登場する廃棄物13号と似ているというもの。反米という設定、下水道を舞台にした展開、怪物が焼かれて死ぬ結末も似ているという指摘だった。・・
 『グエムル』の盗作騒ぎで<とりわけ>懸念される部分は「怪物のデザイン」。同作の主人公である怪物と『廃棄物13号』の怪物のキャラクターが驚くほど似ているのだ。退化した足、背中に寄生した魚など細かい部分まで一致する。・・
 韓国はまともな特殊効果チームすらない状態で「怪物のデザイン」という未知の領域に挑戦した。絶望的な部分は何をどのように作ったとしても、日本の怪物と似ているという点だ。日本は名実共に怪物デザインの世界最強国だ。妖怪文化の伝統を持つ日本は、既に1950年から半世紀以上に渡り、爬虫類・両生類・鳥類などほとんどすべての動物をモチーフに、数千匹以上の怪物を作り出してきた。このうちのどれとも似ていない新しい創造物を作るのは容易なことではない。・・
 現代の怪物映画で日本の怪物の影響力を克服した唯一の例は『エイリアン』だ。H・R・ギガーという天才アーチストの力だった。しかし韓国の土壌で、このような特殊分野デザインの専門家を望むのは無理がある。韓国の怪物映画、特にデザインはまだヨチヨチ歩きの段階だ。『グエムル??漢江の怪物??』の韓国での大ヒットに過信することなく、今回の盗作騒ぎを機に、まだ先は長いということを認識する必要がある。独創的なキャラクターを想像できる基盤作りにも力を入れなければならない。同作の続編を考えているのならばなおさらだ。」
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/09/05/20060905000034.html
(9月6日アクセス、)及び
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/09/06/20060906000026.html
(9月7日アクセス))
 ただし、同紙は後で少し軌道修正をしています(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/09/07/20060907000027.html
。9月8日アクセス)。

 面白いのは、同紙が、現在の韓国社会を批判するかのごとき記事で締めくくっていることです。

 「・・『グエムル』は<日本での>初週の興行成績で7位にとどまった。韓国映画最高の興行作という自負を持って大々的にプロモーションを行ったことを考えれば、期待とは程遠い結果だ。・・<これは、>反米的な設定(怪獣は在韓米軍の廃棄物不法投棄により誕生した)<に対する日本人たちの違和感や、>政府に対する信頼が強い日本人たち<に>は『グエムル』の中で韓国人が韓国政府に不信を抱く内容が理解できない<といった原因が考えられる。>」(
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/09/07/20060907000028.html
。9月8日アクセス)と。

 この話も日本ではほとんど報道されていません。

 (2)インテリ向け

 何人かいる、朝鮮日報の東京特派員は、全員がしばしば、私をうならせる記事や論説を書きます。

 「日本<の最長の>好景気は1892年に始まって、1898年に幕を閉じた。その間に清日戦争(日清戦争、1894??1895年)があったことから、この好景気が「戦争特需」によるものだったことがわかる。清国から戦争賠償金として支払われた3億6000万円は、当時の日本の国家予算の4倍、日本が費やした戦争費用の1.5倍に相当したという。まさに「戦争ビジネス」で巨利を手にしたのだ。このカネが還元されたことで、好景気が続いたとみられる。ご存じのように、清日戦争はどの国が韓国を手に入れるかをめぐる植民地争いだった。それゆえ韓半島(朝鮮半島)が戦場となった。韓国が被害を受けたのはもちろん、続く露日戦争(日露戦争)を経て日本の植民地になるという悲劇を味わった。ということからもこの最長の好景気も、韓国人の立場からすると非常に気分の悪い話なのだ。
 日本<の三番目に長い>好景気は、1954年12月から1957年6月までの31カ月間続いた「神武景気」だ。・・この景気の踏み台となった事件こそ、われわれの悲劇である韓国戦争(朝鮮戦争)だ。日本は参戦した米軍に軍需物資を供給し、莫大な資金を蓄積した。・・韓国戦争を通じ、日本が得た直接的・間接的な恩恵を額にすると計46億ドルに上るといわれている。その十数年後、韓国経済が近代化する上で肥やしとなった対日請求権による資金が8億ドル(無償3億ドル)程度だったことを考えると、瞬間的に怒りと虚無感の入り交じった感情がこみ上げてくる。
 日本<の二番目に長い>好景気<が現在続いている好景気だ。この景気は>海外需要の拡大、すなわち輸出増加が<牽引しており、そ>の多くが中国経済の拡大によるものだ。58カ月間におよぶ今回の好景気の間に、日本の対中輸出は2.88倍も増加した。しかし・・韓国市場の需要<の貢献度も大きい。>同期間に日本の対韓輸出は1.89倍も増加した。韓国との貿易で日本が手にする貿易黒字も2001年の72億ドル(約8400億円)から、昨年には227億ドル(約2兆6400億円)に達し、3倍に増えた。その理由の一つとして、韓国企業が輸入に頼っている産業分野への投資をためらっていることが挙げられるだろう。好況と無縁な状況にある韓国が、いったいなぜ日本に利益をもたらしているのかを考えると「韓国はまた失敗を犯しているのではないか」といった懸念を抱かざるを得ない。
 <こ>うした事態が何度も繰り返される<の>は問題だ。しかも、そうした事態が頻発する理由が、すべて無能な指導者のせいだとしたら、・・他人に責任転嫁する前に、われわれ自身が反省すべき・・だろう。  日本の好景気を横目に、正直妬ましくて仕方がない今日この頃だ。」(
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/11/26/20061126000046.html
。11月27日アクセス)

 この記事は、言わずと知れた朝鮮半島のこれまでの指導者達に対する批判ですが、こうして三つの好景気の話をつきつけられると、日本の指導者達の質が確実に劣化してきていることを実感させられます。
 一回目の好景気は、日本の指導者が自らの血と才覚でかちとったものであったのに対し、二回目の好景気は、日本の指導者がずるく立ち回って米軍等に血を流させ、経済的果実だけをせしめた結果であり、三回目の好景気は、日本の指導者が棚ぼたで果実を手にした、というだけのことだからです。

4 終わりに

 色々考えさせてくれる朝鮮日報よ、ありがとう。

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