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太田述正コラム#1556(2006.12.9)
<地方の官制談合に思う>
当方、公私含めてネット空間ではほとんど情報発信をしていないのですが、読者が増えないと太田さんのコラムが読めなくなるようでは、ブログ開設などを少し考えなければならないかと思っている次第です。(といってもまだ実行レベルに辿り着いていませんが・・・)
最近のコラムでは、「韓国での按摩騒動」において、江戸時代における日本の按摩専業制について知り、またしても我が日本の「過去の」素晴らしさに感銘を受けました。一方で、現代の「格差容認」「優しさがない」社会と比較すると、日本人の退潮ぶり(とその緒要因)に背筋が寒くなります。
近年、縄文期や近代などバラバラですがだいぶ歴史を学びつつあり、今は松村久子女史の「驕れる白人と闘うための日本近代史」を読んでいます。まだ緒についたばかりですが、興味深い情報が得られそうな本です。とはいえ、面白がってばかりでは無意味ですので、得られた情報と知識を現代の社会と国際関係にどのように活かすべきか、それを考えるように努めてまいりたいと思います。
それでは、これからも素晴らしいコラムをお待ちしております。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――1 地方の官制談合の構造
官制談合で県知事の逮捕が続いています。福島県、和歌山県に続いて、12月8日には宮崎県でも辞めたばかりの安藤忠恕前知事が逮捕されました。
その共通の背景として、中小の県でも2億円を超えるカネがかかる知事選挙の実態があります。
(以上、
http://www.sankei.co.jp/shakai/jiken/061207/jkn061207001.htm
(12月7日アクセス)等による。)
宮崎県のケースについて、もう少し詳しく見てみましょう。
宮崎県は、都道府県が発注する2005年度の公共事業の平均落札率(予定価格に対する落札価格の割合)が全国で最も高い95.8%であり、最も落札率が低かった長野県に比べて20ポイント以上も高いことだけからも、談合が常態化している可能性がうかがえます(
http://news.www.infoseek.co.jp/society/story/28kyodo2006112801000426/
。12月9日アクセス)。
しかも、宮崎県には、同県の建設土木業界が宮崎県OBの再就職を受け入れ、代わりに県は発注の際、「地元優先」に配慮するというシステムがあり、今年4月末現在、100人を超すOBが土木建設業界に天下っています(
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061209i101.htm?from=main1
。12月9日アクセス)。
これだけ状況証拠がそろっておれば、宮崎県のほとんどの公共事業で官制談合が行われている、と考えてよいでしょう。
2 崩壊必至の談合構造
小泉首相が就任する前の2000年度には、全国の公共工事は年間30兆円もありましたが、2005年度にはそれが19.9兆円に減り、2006年度には更に18.2兆円へと縮小する見通しです。安倍政権も、引き続き年率3%程度ずつ公共事業予算の削減を進める考えを打ち出しています。
これに加えて、談合禁止法制の強化もあって、大手ゼネコンが2005年暮れに談合決別宣言を行う等、国のレベルでは談合構造が急速に崩れつつあります。
他方、地方にはまだ談合構造が残っているところが少なくない、というのが実情ですが、談合構造の崩壊は遅かれ早かれ確実に地方でも起きることでしょう。
(以上、
http://headlines.yahoo.co.jp/column/bp/detail/20061129-00000000-nkbp-bus_all.html
(12月9日アクセス)による。)
3 宮崎県前知事の罪
県庁職員出身の安藤前宮崎県知事は、宮崎県に官制談合構造が存在すること、他方、これを支える(民民の)談合構造そのものがやがて崩壊する運命にあること、を熟知していたはずです。
だから、安藤氏は、知事に就任したら、この官制談合構造をなくすために率先して尽力すべきであったのです。
ところが、知事選挙で世話になった東京のヤマト設計の社長からの強い要請を受けると、安藤氏は、漠然とした形ながら、天の声を発してしまったということのようです(読売前掲)。
4 感想
宮崎県のケースを通して見えてきた地方の官制談合の構造は、防衛施設庁をめぐる官制談合の構造と全く同じであることが分かります。
ところが、宮崎県の場合は、政治家である前知事が逮捕され、役人である県の出納長や部長が逮捕され、更に民間人のヤマト設計の社長らも逮捕されたり起訴されたりしているというのに、防衛施設庁の場合、同庁の官制談合システムに寄生した自民党の政治家連中は逮捕どころか取り調べすら免れ、この官制談合システムの存在を知りつつ放置しただけでなく、このシステムを自分達の再就職に、あるいは政治家へのゴマスリに活用し続けてきた防衛庁キャリアもまた、誰一人責任をとっていません。逮捕・起訴されたのは、末端の役人だけです。
防衛施設庁官制談合事件に関し、今年、コラムで何度も政治家と防衛庁キャリアの責任を追及してきましたが、我が身の非力をかこつ年の瀬です。
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