太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/
太田述正コラム#1638(2007.1.26)
<光線銃の登場>(2007.2.28公開)
1 光線銃と電子レンジ
光線銃(ray gun ないしheat-ray gun)は昔からマンガやSFの中では当たり前のように登場していましたが、ついにそれが現実のものになりました。
24日に米国のジョージア州の米軍基地で記者団の前に披露されたのです。
ただし、これは非殺傷兵器であり、本格生産開始は2010年を予定しています。
米軍による開発を受け、実際に製品化したのは米国のレイセオン社(Raytheon)であり、高機動性多目的車輪付車両(Humvee=HMMWV=high-mobility multipurpose wheeled vehicle)の屋根に載せた四角形の角のとれた大きなお皿のような発射機から、電子レンジ(microwave oven)に使われるマイクロ波(microwave)を人間に向けて照射する仕組みです。
レイセオン社と言えば、因縁を感じます。
というのは、電子レンジの原理は、レイセオン社の(マイクロ波を使う)レーダーの設置技士が作業中にポケットの中の食べかけのピーナッツ・クラスター・バーが溶けていたことから偶然発見したものであるからです。レイセオン社はマイクロ波による調理について1946年に特許をとり、1947年に最初の製品を発売するのです。(
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E5%AD%90%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8
。1月26日アクセス)
電子レンジもまた、軍事技術のスピンオフなのです。
2 光線銃の効能書
この光線銃の正式名称は積極拒否システム(Active Denial System)であり、マイクロ波のビームは500メートル(550ヤード)離れた位置にいる人にも有効であり、これまでのゴム弾等の非殺傷兵器の10数倍の有効距離があります。
このマイクロ波ビームは衣類を透過することができ、皮膚に当たると(家庭用の電子レンジは数センチの深さまで達するのに対し)0.4センチの深さまでしか達しませんが、当たった部位は54度に熱せられます。その結果、その人は爆風を浴びたような熱さを感じ、持っている物を落として逃げまどうというのです。
この光線銃は、暴徒と化した群衆を鎮圧する目的等に使用することが考えられています。
(以上、
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/6297149.stm、及び
http://www.guardian.co.uk/usa/story/0,,1998406,00.html
(どちらも1月26日アクセス)による。)
3 感想
お披露目の際には、志願した記者達には実際に照射してみせたというのですが、本物の暴徒に対して使われた場合、照射距離や照射部位が計算通りにならないことは必至であり、絶対に安全かどうか不安が残ります。
他方、どうして殺傷用の光線銃が登場しないのか不思議です。
恐らくかさばるだけでなくコストが高過ぎるからではないかと思われますが、マンガやSFの中での予言はなかなかそのものズバリの形では実現しない、ということなのかもしれませんね。
(光線銃はマイクロ波(microwave)ではなく、ミリ波(millimetre-wave)が使われています(http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/6300985.stm
。1月27日アクセス。以下同じ)。コラム#1638を訂正させていただきます。)
太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/