太田述正コラム#1740(2007.4.19)
<バージニア工科大学乱射事件(続)(その1)>(2007.5.18公開)

1 韓国の特異性の補論

 今回の事件に対する韓国の人々や在米の韓国系の人々の反応・・この事件を韓国人や韓国系の恥ととらえ、米国で韓国人や韓国系に対して怒りの矛先が向けられることに対し戦々恐々としている・・は特異としか言いようがありません。
 犯人のチョが韓国人の両親に育てられ、韓国で8歳まで過ごしたことは間違いないものの、今のところ、彼の今回の犯行と韓国的なものとを結びつけるものとしては、現在のところ、2004年のカンヌ映画祭でグランプリをとった、暴力的な韓国映画Oldboy(注1)くらいしか指摘されていないからです。

 (注1)チョがNBCに、二つの犯行の途中、送りつけたビデオや写真のうちの一枚の写真に、チョが金槌を振り上げたポーズをとったものがあるが、これはこの映画の中の一場面とそっくりだ(
http://thelede.blogs.nytimes.com/2007/04/18/updates-on-virginia-tech/  
。4月19日アクセス。以下同じ)。

 1992年にロサンゼルスで、黒人と韓国系の人々との間のいざこざが黒人による韓国系の人々の店に対する略奪を伴う暴動へと発展した時、韓国系の商店主達が拳銃を乱射して対応し、これが米国内での韓国系の人々に対するステレオタイプを生んだというにがい思い出(
http://www.latimes.com/news/opinion/la-oe-chang18apr18,0,273884,print.story?coll=la-opinion-center 
)が蘇ったであろうことは容易に想像できます。
 また、数年前に在韓米軍の軍用車両が韓国人の少女二人をひき殺した事故が起こった時に、韓国全土で反米感情が高まり、抗議デモが長期にわたって荒れ狂ったことから、同様の反応が今回の事件で米国で起きるだろうと思いこんでいるフシがあります(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/6568741.stm)。

 それもこれも、韓国人は、自分達が純血種であり、全員が大きな家族のようなものだと思っているためでしょう(ロサンゼルスタイムス上掲)。

 もっともそのおかげで、安倍首相訪米時に在米韓国系の諸団体が計画していた慰安婦問題抗議デモが中止になった(
http://j.peopledaily.com.cn/2007/04/18/jp20070418_70170.html
)ことは、まことに結構なことです。

2 米国の懐の深さ

 他方、米国では、反韓国系的ムードが全く見られないだけでなく、今からご紹介するような声が出ていることで、米国の懐の深さを改めて感じます。

 ある人は、最初の犯行が起こった時、犠牲者が女性であり、多分恋人の犯行ではないかと当初考えられたことからといって、犯人が第三者に危害を及ぼすとは思わず、キャンパス全体に警告を発することを怠ったのは、アナクロもいいところだ、と投書しました。

 もう一人は、「この種の虐殺事件が毎日起こっているとしよう。警察力がはるかに弱体で大部分事件の捜査ができないとしよう。この状態が何年も続いており、今では犯人達や共犯者達が全土で事実上パワーブローカーになってしまっているとしよう。銃撃に引き続いて犠牲者にひどい拷問が加えられるとしよう。家族は親戚達や両親達や子供達が殺害されたのか否かも分からないとしよう。これがイラクの現状だ。今回の事件で人々は大学の警察署長や学長が不手際であったと怒るのはもっともだ。その彼等がもっと沢山の虐殺事件を抱えているとしよう。どうして、われわれはイラクの治安に責任を持っている人々に対して同じように怒らないのだろうか。イラクでの犠牲者達は人間ではないのか。彼等は子供達や母親達や父親達や息子達ではないのか。われわれは究極的な責任を彼らに対して負っているのではないないのか。われわれは彼らの国の秩序を維持するための制度を破壊したのだから。」と投書しました。
 (以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/blog/2007/04/18/BL2007041801045_pf.html
による。)

(続く)