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自衛隊は空っぽの洞窟?(その6):消印所沢通信13
さて,「自衛隊は空っぽの洞窟?(その1)」(コラム#1700)
で,日英の攻撃ヘリについて比較したところ,太田氏から以下
のような反論をいただきました.
-------------------------------------------------------
<太田>
>リンクス<に>攻撃ヘリ並にTOWを搭載しても
スペック的に同じでも,実戦的な強さという意味では
攻撃ヘリの方が圧倒的に上です.
英国陸軍に納入されたタイプのガゼルAH1は,ATM運用能力を
持たず,武装はロケット弾と機関砲のみ.そのため,現在は
偵察・観測ヘリとして運用されており,通常は兵装を
搭載していない
私は拙著の中では,「攻撃ヘリ」という言葉を,戦車並びの
「対戦車機動攻撃力」たるヘリ,という意味で用いています.
TOW(ATM.対戦車誘導ミサイル)を搭載できるヘリなら
文句なく「対戦車機動攻撃力」でしょう.
また,打ちっ放しの対戦車ロケットを搭載できるヘリだって
「対戦車機動攻撃力」と言えるのでは?
-------------------------------------------------------
本日はこれについて考察してみましょう.
たしかに,偵察・観測ヘリにも対戦車ロケットを搭載する
ことは可能です.
フランス軍では湾岸戦争のときに,イラク軍戦車に対して
ガゼル・ヘリからHOTを発射した事例もあります.
しかし,英軍のガゼルAHはフォークランド戦争,
湾岸戦争,コソボ紛争,イラク戦争などで用いられましたが,
フォークランド戦争の時期を除いて非武装であり,
唯一武装したフォークランド戦争においても,その武装が
使用されることはありませんでした.※ 1
現在ではアパッチがある以上,わざわざガゼルを
再武装するようなリソースの無駄遣いなど英軍は
しないでしょう.
ガゼルのような脆弱な機体で対戦車攻撃など,兵士に
自殺しに行けと言っているようなものですから.
だからこそ実戦でも武装があるのに使わなかったし,
使うような任務に就かなかったわけであり,そしてそれ以降,
外してしまったわけです.※2
それにまた,対戦車兵器で武装できるだけの理由で
「対戦車機動攻撃力」に算定してよいなら,自衛隊のヘリも
同様の理由で算定されねばフェアな評価とは言えないでしょう.
実際,たとえば陸上自衛隊もUH-60JA 多用途ヘリコプターは,
当初は対戦車ミサイルやロケット・ランチャーの装備をする
計画でしたが,予算の関係で見送られたという経緯が
あります.※3
これはつまり,予算次第ですぐにでも武装へリ化する
ことが可能ということですね.
なお,「対戦車機動攻撃力」という単語は軍事用語としても
見慣れないものですので,そのようなレアな単語は定義や
出典を明記なされますと,議論が混乱せずに済むのでは
ないかと愚考いたします.
<脚注>
※1 ウィキペディアより
http://ja.wikipedia.org/wiki/SA_341_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)#.E3.
82.A4.E3.82.AE.E3.83.AA.E3.82.B9
※2 JDWのバックナンバーによれば,ガゼルの再武装という
話が2004年に出ているのですが,これはリンクス後継機
(今のフューチャー・リンクス) 計画が遅れていたせい.
しかも,ガゼルそのものがすでに老朽化して減勢が
始まっており,既存の機体にも任務不適合が多いという
ことで,武装化は沙汰止みになったようです.
それどころか,1 年ほど前には「ガゼルの早期退役を
検討中」なんて話も.
※3 ウィキペディアより
http://ja.wikipedia.org/wiki/UH-60_%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%
AF%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%82%AF#.E9.99.B8.E4.B8.8A.E8.87.AA.E8.A1.9B.E9.
9A.8A
なお,本コラムはmixi
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=15572896&comm_id=342133
におけるJSF,井上@Kojii.net,極東の名無し三等兵,
メッサー=ハルゼー各氏のレスを参照しました.
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<太田>
>現在ではアパッチがある以上,わざわざガゼルを
再武装するようなリソースの無駄遣いなど英軍は
しないでしょう.
>実戦でも武装があるのに使わなかったし,
使うような任務に就かなかったわけであり,そしてそれ以降,
外してしまった
(ガゼルを対戦車プラットホームとして用いることが可能で
あったという)フォークランド戦争は1982年、(フランスがガ
ゼルを対戦車プラットホームとして用いたという)湾岸戦争は
1991年、拙著が上梓されたのは2001年、そして今は2007年です。
2001年「現在」がどうであったかを知りたいものです。
いずれにせよ、英国において、かつてガゼルに対戦車
ロケットを装備していたという以上、私が英国の「対戦車機動
攻撃力」の中にこれをカウントをしたのは適切であったのでは
ないでしょうか。
他方、陸上自衛隊のUH-60については、対戦車ロケット類を
装備したことがない以上、「対戦車機動攻撃力」とは
言えないでしょう。
>「対戦車機動攻撃力」という単語は軍事用語として・・
見慣れない
一般的な軍事用語を連結しただけであって、軍事的素養のある
方であれば、誰でもその言わんとするところはご理解いただける
はずです。
さて,「自衛隊は空っぽの洞窟?(その1)」(コラム#1700)
で,日英の攻撃ヘリについて比較したところ,太田氏から以下
のような反論をいただきました.
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<太田>
>リンクス<に>攻撃ヘリ並にTOWを搭載しても
スペック的に同じでも,実戦的な強さという意味では
攻撃ヘリの方が圧倒的に上です.
英国陸軍に納入されたタイプのガゼルAH1は,ATM運用能力を
持たず,武装はロケット弾と機関砲のみ.そのため,現在は
偵察・観測ヘリとして運用されており,通常は兵装を
搭載していない
私は拙著の中では,「攻撃ヘリ」という言葉を,戦車並びの
「対戦車機動攻撃力」たるヘリ,という意味で用いています.
TOW(ATM.対戦車誘導ミサイル)を搭載できるヘリなら
文句なく「対戦車機動攻撃力」でしょう.
また,打ちっ放しの対戦車ロケットを搭載できるヘリだって
「対戦車機動攻撃力」と言えるのでは?
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本日はこれについて考察してみましょう.
たしかに,偵察・観測ヘリにも対戦車ロケットを搭載する
ことは可能です.
フランス軍では湾岸戦争のときに,イラク軍戦車に対して
ガゼル・ヘリからHOTを発射した事例もあります.
しかし,英軍のガゼルAHはフォークランド戦争,
湾岸戦争,コソボ紛争,イラク戦争などで用いられましたが,
フォークランド戦争の時期を除いて非武装であり,
唯一武装したフォークランド戦争においても,その武装が
使用されることはありませんでした.※ 1
現在ではアパッチがある以上,わざわざガゼルを
再武装するようなリソースの無駄遣いなど英軍は
しないでしょう.
ガゼルのような脆弱な機体で対戦車攻撃など,兵士に
自殺しに行けと言っているようなものですから.
だからこそ実戦でも武装があるのに使わなかったし,
使うような任務に就かなかったわけであり,そしてそれ以降,
外してしまったわけです.※2
それにまた,対戦車兵器で武装できるだけの理由で
「対戦車機動攻撃力」に算定してよいなら,自衛隊のヘリも
同様の理由で算定されねばフェアな評価とは言えないでしょう.
実際,たとえば陸上自衛隊もUH-60JA 多用途ヘリコプターは,
当初は対戦車ミサイルやロケット・ランチャーの装備をする
計画でしたが,予算の関係で見送られたという経緯が
あります.※3
これはつまり,予算次第ですぐにでも武装へリ化する
ことが可能ということですね.
なお,「対戦車機動攻撃力」という単語は軍事用語としても
見慣れないものですので,そのようなレアな単語は定義や
出典を明記なされますと,議論が混乱せずに済むのでは
ないかと愚考いたします.
<脚注>
※1 ウィキペディアより
http://ja.wikipedia.org/wiki/SA_341_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)#.E3.
82.A4.E3.82.AE.E3.83.AA.E3.82.B9
※2 JDWのバックナンバーによれば,ガゼルの再武装という
話が2004年に出ているのですが,これはリンクス後継機
(今のフューチャー・リンクス) 計画が遅れていたせい.
しかも,ガゼルそのものがすでに老朽化して減勢が
始まっており,既存の機体にも任務不適合が多いという
ことで,武装化は沙汰止みになったようです.
それどころか,1 年ほど前には「ガゼルの早期退役を
検討中」なんて話も.
※3 ウィキペディアより
http://ja.wikipedia.org/wiki/UH-60_%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%
AF%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%82%AF#.E9.99.B8.E4.B8.8A.E8.87.AA.E8.A1.9B.E9.
9A.8A
なお,本コラムはmixi
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=15572896&comm_id=342133
におけるJSF,井上@Kojii.net,極東の名無し三等兵,
メッサー=ハルゼー各氏のレスを参照しました.
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<太田>
>現在ではアパッチがある以上,わざわざガゼルを
再武装するようなリソースの無駄遣いなど英軍は
しないでしょう.
>実戦でも武装があるのに使わなかったし,
使うような任務に就かなかったわけであり,そしてそれ以降,
外してしまった
(ガゼルを対戦車プラットホームとして用いることが可能で
あったという)フォークランド戦争は1982年、(フランスがガ
ゼルを対戦車プラットホームとして用いたという)湾岸戦争は
1991年、拙著が上梓されたのは2001年、そして今は2007年です。
2001年「現在」がどうであったかを知りたいものです。
いずれにせよ、英国において、かつてガゼルに対戦車
ロケットを装備していたという以上、私が英国の「対戦車機動
攻撃力」の中にこれをカウントをしたのは適切であったのでは
ないでしょうか。
他方、陸上自衛隊のUH-60については、対戦車ロケット類を
装備したことがない以上、「対戦車機動攻撃力」とは
言えないでしょう。
>「対戦車機動攻撃力」という単語は軍事用語として・・
見慣れない
一般的な軍事用語を連結しただけであって、軍事的素養のある
方であれば、誰でもその言わんとするところはご理解いただける
はずです。
太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
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