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太田述正コラム#1788(2007.5.31)
<瀕死の自民党政権に安楽死を>
(本篇は、情報屋台用のコラムを兼ねています。)
1 始めに
英ファイナンシャルタイムスのピリング(David Pilling)記者は、「古い日本にはもう戻れない(No way back to old Japan)」と題する記事の中で、「安部晋三を震撼させた自殺(複数)(suicides)は、日本の時代遅れとなった戦後体制へのとどめの鉄槌(death throes)だ」と報じました(注)。
(注)この記事は 有料記事であり、これはその記事の紹介文(
http://www.ft.com/home/asia
(5月31日アクセス)だ。
自殺(複数)とは、言わずと知れた、(政治資金問題のほか、官製談合事件で揺れる緑資源機構との関係が取り沙汰されていた)松岡利勝農相と(この緑資源機構の前身の森林開発公団理事であり、この事件の関連で事情聴取と家宅捜索を受けていた)山崎進一氏の自殺のことでしょう(
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20070528k0000e040069000c.html (5月28日アクセス)、及び
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070529k0000e040037000c.html
(5月31日アクセス))。
もう一つの大問題は、年金記録のうち5,000万件が、誰のものか分かっていないことが判明したことです。
こんなことが起こったのは、1997年から1人に1つの基礎年金番号が割り振られ、転職や結婚などで厚生年金から国民年金に移るなど複数の年金に加入歴があっても記録を一元的に管理する制度が導入されたところ、その時社会保険庁が、本人の申請を呼びかけた以外に、記録を統合するための積極的な手立てを講じなかったからであるとされています。
これに加えて、窓口の対応や規定にも問題がありました。
あるはずの加入記録がない、と申し立てても、保険料の領収書がなければほとんどが門前払いをくわされ、支給ミスを証明しても、過去5年を超えるものは、会計法で時効とされて支払われない、という業務怠慢ぶりが事態を悪化させた、とされています。
(以上、
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070528ig91.htm
(5月29日アクセス)による。)
2 私のこれまでの問題提起
拙著「防衛庁再生宣言」(日本評論社。2001年)で、私は、「戦後の日本は、個人の自立の前提である国の自立を先延ばしにしたまま、ずるずると現在に至ってしまった。・・その結果、何が起こったか。政治の矮小化であり、国のリーダーの払底である」(53頁)、「牛は8000年前に家畜化されたが、その結果、防衛本能が低下し、脳のシワが少なくなり、また一年中発情するようになったという。カネまみれになっている・・政治家たちを見ていると、彼らがみんな牛に見えてくる。」(48頁)と訴えたところです。
そして、このような政治家の堕落が、いかに官僚や企業や一般国民を汚染しているかも拙著の随所で指摘しました。
汚染の一つの現れが政官業の癒着です。この癒着を背景とする官製談合や天下り問題については、つい先だっての「官製談合について」題するシリーズ(太田述正コラム#1663(情報屋台にも掲載)や#1669)でもとり上げたところです。
このシリーズの中で、以上のような問題の抜本的解消を図るためには、有権者が、一定期間にわたって自民党系の政治勢力を完全に中央と地方の政権の座から引きずり下ろす以外に方法はない、と申し上げたことも覚えておられることと思います。
3 私の感想
それにしても、林野庁(農水省)や社会保険庁(厚労省)の体たらくには開いた口が塞がりません。
林野庁の官僚OBであった松岡大臣は、口をつぐんだまま自殺してしまいましたが、歴代の林野庁長官で、国民に対して謝罪する人がどうして出ないのでしょうか。
また、そもそも、林野庁の現役・OB官僚、広くは農水省の現役・OB官僚で、官製談合問題等に取り組み、あるいは官製談合問題等を内部告発する人が出なかったのはどうしてなのでしょうか。
同じようなことが、社会保険庁の業務怠慢に関し、歴代の社会保険庁長官、社会保険庁の現役・OB官僚、広くは旧厚生省の現役・OB官僚について言えます。
しかし、農水省や旧厚生省の官僚や官僚OBだけを責めるわけにはいきません。
全官庁を眺めてみても、官僚OBで天下りを拒否する人も、天下り先を自発的に辞める人も、この期に及んでほとんど出てこないのは、私の理解を超えています。
彼らは、一体どういう料簡なのでしょうか。
もちろん、悪いのは官僚や官僚OBだけではありません。
死に体となって久しい自民党政権の下で喜々として審議会委員を務め、中には議員や大臣にまでさせてもらって自民党政権の広告塔の役割を果たし、自民党政権の延命に力を貸した御用学者達の責任も重大です。
そして、究極的には、冒頭に掲げた記事のような形で外国のメディアに引導を渡されることとなった自民党に、戦後ずっと権力を与え続けてきた、大方の日本国民の皆さんの責任こそが問われているのです。
来るべき参議院議員選挙、及びそれに恐らく引き続き行われることとなるであろう総選挙で、遅ればせながら、日本国民の皆さんが、責任を果たし、瀕死の自民党政権を安楽死させることを願ってやみません。
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