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太田述正コラム#1753(2007.5.1)
<暮れゆく覇権国の醜聞(続x5)>(2007.6.1公開)
1 始めに
世銀のウォルフォヴィッツ総裁に関わる醜聞が更に表沙汰になっています。
米ブッシュ政権の闇はまことに深いと言わざるをえません。
2 醜聞その1
新たな醜聞の一つは、そもそも北アフリカ/中東で育ち、英国籍を取ったリザ・・総裁の愛人・・がどうして米国務省に出向できたのか、ということです。
もとより、友好国の中堅官吏が交換計画で米国の中央官庁に勤務することはよくあることです。
この場合、身上調査(security clearance)が既に派遣国でなされているものをベースに行われるわけです。
しかし、リザは、国際機関に勤務している外国籍の人物であり、英国政府の機密を扱う仕事をしたことがないのですから英国政府が彼女の身上調査をしたはずがなく、また、世銀でも身上調査をしてはおらず、しかも米国務省でも、身上調査を行わないまま彼女を勤務させたわけですが、こんなことは前代未聞です。
もとより、身上調査が行われていないがゆえに入構許可証が与えられなくても、リザは国務省内で、常に国務省職員と共に行動する(permanent escort付きでいる)ことを条件に「勤務」することはできましたが、そんな措置がとられた形跡ももちろんありません。
リザに対して、2003年にウォルフォヴィッツの口利きで、彼女が世銀の有給休暇をとってイラクに民間企業の契約社員として派遣された際、米国防省によって彼女の身上調査が行われていた、という可能性はどうでしょうか。
つまり、リザを国務省に受け容れた時点の彼女の上司であった米国務省のチェイニー(娘)が、文書で米国防省によるこの身上調査を援用しつつ、リザの国務省入構許可証を申請した、という可能性です。
しかし、このような文書が発出された形跡もまたありません。
しかも、仮にそんな文書が発出されていたとしても、手続き的にはやはり違法であることは免れない、というのです。
不当な圧力がかかって法がねじ曲げられた、としか考えようがないのです。
(以上、
http://www.latimes.com/news/opinion/la-oew-whalen30apr30,0,6866656,print.story?coll=la-opinion-center、
http://www.arabnews.com/?page=7§ion=0&article=95257&d=21&m=4&y=2007
(どちらも5月1日アクセス)による。)
3 醜聞その2
もう一つの醜聞は、ワシントンポストの記事に引用されたり、自らロサンゼルスタイムスにコラムを書いたりしてウォルフォヴィッツ擁護の論陣を張っている、米ジョンズ・ホプキンス大学教授のウェッジウッド(Ruth Wedgwood)が、総裁と「癒着」した間柄であったということです。
ウォルフォヴィッツは政治学の博士号を持っていますが、ジョンズ・ホプキンス大学の高等国際問題研究大学院(SAIS)の長をしていた2002年頃に、米司法省勤務歴があるとはいえ、何の博士号も持っていない単なる弁護士のウェッジウッドを、SAISがロースクールではないにもかかわらず、また、彼女が全く外交に携わったことがないというのに、「法と外交」(つまり国際法)担当の教授に据えたのです。
彼女自身、履歴の中で、ウォルフォヴィッツの招きでSAISに入ったと記したことがあります。
そんな人物の総裁擁護の論陣は、やらせだと言われても仕方がないでしょう。、
(以上、ロサンゼルスタイムス上掲、及び
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/04/15/AR2007041500433_pf.html
(4月16日アクセス)、並びに
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-wedgwood17apr17,0,1473306,print.story?coll=la-home-commentary
(4月17日アクセス)による。)
3 感想
夜郎自大にして、依怙贔屓ばかりして、法をねじまげ、ウソをついて、責任逃れをする、このようなウォルフォヴィッツの姿は、ブッシュ政権のネオコン達、ひいてはブッシュ政権そのものの姿の忠実な写し絵である、と思うのは私だけではないでしょう。
考えてもみてください。
フセイン政権打倒後のイラクの復興支援がうまくいかなかった最大の原因の一つは、ブッシュ政権が、私利私欲を優先して、リザのようなうさんくさい人物やうさんくさい企業ばかりを、縁故で復興支援業務に携わらせたからです。
ブッシュ大統領がウォルフォヴィッツをかばい続けざるをえないのは当然です。
総裁の姿は大統領自身の姿だからです。
まさにこれは、暮れゆく覇権国、米国を象徴する醜聞なのです。
日本が、そんな米国の保護国であり続け、そんな米国と共に、全世界の心ある人々の軽蔑と怒りの対象となりつつ、没落して行くことをあなたは肯んじるのですか。
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