太田述正ブログは移転しました 。
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太田述正コラム#1810(2007.6.15)
<防衛庁再生宣言の記述をめぐって(続x3)>
1 始めに
このシリーズは、軍事に関心のない方には、お目障りかもしれませんが、軍事愛好家の皆さんと私とのやりとりが、ようやく安全保障の議論に発展する兆しを見せていることもあり、再度、やりとりの一部とこれに対する私のコメントをご披露させていただきます。もうしばらくご辛抱下さい。
本篇も即時公開します。
2 やりとり
<太田>
<今までの皆さんとのやりとりを振り返ってみると、>率直に申し上げて、皆さんの方が余りに拙攻だったということでしょう。典拠と言ったら、ウィキペディアに出てくる一センテンスくらいじゃ、どうしようもありません。
<alpha-OMEGA>
ホークT1.(訓練型)とT1.A(サイドワインダー搭載型)の区分をwikipedia(しかも日本語版があるのにわざわざ英語版)を根拠にして、しかも間違った引用(練習機型と局所防御型の機数がごちゃまぜ)をやらかしたお方が言えたセリフではないと思うのですが? JSF氏も他の方も軍事常識や運用方法の面から反論されていたのですが、その点を無視して自分が正しいと言い張るおつもりなのでしょうか?
<JSF>
>>>誰が<ホークは>「老朽機だから」と言ったのですか? 「練習機だから」ではありませんか?(JSF)
>>
>>「老朽」と「老旧」とは意味が全く違います、新品でも「老旧」でありうるのです。お分かりですね。(太田)
>
>質問をはぐらかして逃げないで下さい。誰も老旧だなんて言ってないでしょう。練習機だから<戦闘機には>カウントすべきではないという話がなんで貴方のブログの記事<(コラム#1804のことか?(太田))>ではすり替わっているんですか?
>発言を根本から捏造されてはたまらないですよ・・・(JSF)
↑これについては答えて頂けないのですか?
<バグってハニー>
<コラム#1808を拝見しましたが、>私とJSF氏の意見はほぼ一致していると思います。先生はまだ異論があるようですが...。もう一度、JSF氏のサイトを冷静に読めば何がおかしいのかにそのうち気付くと思います。
今までの繰り返しにしかならないですが...、
>航空自衛隊とイギリス空軍が戦闘を行った場合、航空自衛隊の圧勝に終わります。
私はこれまで一貫して数の多寡を議論してきました。「劣勢」というのももちろん数においてという意味です。戦闘の優劣が兵器の数だけでは決まらないことは承知しております。私がNo.712でミリタリーバランスの注釈の一文
>スクアドロン(飛行中隊)の強さは運用されている航空機、国によって異なる。
をわざわざ引用したのはそのこと(ミリタリーバランスの数の引用の限界)を示すためです。だからといって太田氏の単純な数による日英の戦力比較に意味がないとは考えていません。
>そして戦闘機と戦闘用航空機は意味が違います。
最初の投稿No.714以来、私は一貫して
> 「戦闘機」とはFighterに対応する日本語
として用いています。もしも、私が自身の主張の中で戦闘機という用語を曖昧な意味で用いている箇所があれば指摘してください。
太田氏がミリタリーバランスだけに依拠して著述したのがおかしいという意見があるようですが、私はそうは思いません。そもそも、ミリタリーバランスは装備も運用の仕方もバラバラの各国の戦力に統一した基準を当てはめて定量的に戦力を比較する目的のもとに書かれています。二国間の戦力を比較するのにはこの上ない資料といえるでしょう。大事なことはそれを引用する者の裁量が入り込まないように必ず対応する項目を抜き出してくることではないでしょうか。その点において太田氏の引用の仕方は厳密さを欠いていたことは確かだと思います。
戦闘機の数を比較したいのであれば、一番単純なのはミリタリーバランスが戦闘機(FTR)として計上している航空機の数を抜き出してくることです。その例はすでにコラム#1806で示しました。太田コラム#1806ではミリタリーバランスの戦闘機の定義が示されていますが、実際にミリタリーバランスが戦闘機として計上している機種を見れば、ミリタリーバランスが言う戦闘機とは何であるのかは明確だと思います。すなわち、F.3とF-15J、制空専用の防空戦闘機です。この場合、太田氏の著作とは日英の優劣が逆転してしまいますが、私はそれでもよかったと思います。というのは、日本は制空専用戦闘機が多い代わりに、JSF氏が指摘したとおり爆撃能力のある戦闘機は英国よりも少ないからです。すなわち、これは日本の戦力が英国との比較において「歪」である一例であり、太田氏の著作の該当部分の文意は損なわれないと思うからです。
しかし、この戦闘機の定義はあまりにも狭くて一般的な用法とは必ずしも一致していないと思われます。一般大衆向けに書かれた本で制空戦闘機と戦闘攻撃機を分けて議論することはあまり生産的ではないかもしれません。そこで、次善の策として戦闘用航空機の数を比較することを私は提案しました。こちらもミリタリーバランスがその定義に従ってすでに数字を用意してくれています。また、この数字には潜在的な戦力も含まれているので、より適正な比較であるともいえます。ただし、JSF氏の言う通り、ニムロッドは戦闘機とはかけ離れていますから、それを除いて比較するというのは最も妥当だと私も思います。
ところで、
>これは防衛型の軍隊と侵攻型の軍隊の違いです。
JSF氏はこれまで太田氏にいろいろと批判を加えてこられましたが、おそらく太田氏が同書の該当部分で主張したかったのはまさしくそのことだったのだと思います。そして、さらに太田氏が主張したいのは
>航空自衛隊とイギリス空軍が戦闘を行った場合、航空自衛隊の圧勝に終わります。
という考え方が必ずしも正しくないということだと私は思うのです。
(明日に続く)
3 私のコメント
(1)始めに
バグってハニーさん(BH。日米のハーフで米国在住)は、軍事愛好家であると自称されていたと思いますが、日本の軍事愛好家の皆さんに彼を見倣って欲しい点がいくつかあります。
第一に、BHさんの今回の投稿からもお分かりにように、彼が安全保障問題に強い関心を持っているという点です。
軍事フェチそのものについてどうこういうつもりはありませんが、安全保障問題に関心を持つと、軍事知識が宝の持ち腐れになりません。
第二に、彼が、ミリタリーバランス(ミリバラ)を手元に置いているか、容易にミリバラにアクセスできる環境にいるという点です。
BHさんが説明されていることからもお分かりいただけると思いますが、軍事を論ずるにも、安全保障問題を論ずるにもミリバラは必要不可欠です。
第三に、彼が、常にミリバラ等の典拠に拠りながら考えたり議論をしたりしているという点です。
なお、軍事のグローバルスタンダードは英国と米国が設定していることもあり、典拠は極力英語のものであるべきでしょう。
ただし、BHさんにも一つだけ苦言があります。
>私とJSF氏の意見はほぼ一致していると思います。先生はまだ異論があるようですが...。もう一度、JSF氏のサイトを冷静に読めば何がおかしいのかにそのうち気付くと思います。
こういう言い方を品位がないというのです。
そもそも、保管機をカウントすべきだとする私の見解を問題にされているのか、私によるミリバラの「戦闘機」や「戦闘用航空機」の定義の紹介内容を問題にされているのかすら分かりません。思わせぶりなことをいわず、具体的に論じるべきでしょう。
(2)どこまでが戦闘機か
さて、JSFさんの、率直に言って意味不鮮明なご指摘ですが、
>サイドワインダーを積めるT1.Aは75機、他は非武装機です。
T.1Aを戦闘機としてカウントすること事態が馬鹿らしいのですが、それ以前に非武装のT1まで含めて141機と主張するのは、水増しに水増しを重ねる行為です。
と以前の投稿でJSFさんがおっしゃっていることからすると、alpha-OMEGAさんのご指摘と同じご趣旨だと解釈してもよさそうです。
その上で、私はお二方が、ホークは性能が低い(=老旧機である)ので、ホークT1.Aを「戦闘機」、すなわち「空中戦のための兵器・アビオニクス・性能に係る能力を備えた航空機」(コラム#1808)にカウントすることすら疑問なしとしないのに、「空中戦のための兵器・アビオニクス・性能に係る能力を備えた航空機」ではないホークT1(正確にはT1.A以外のホーク)までも太田が戦闘機にカウントしたのはおかしい、と主張されているものと受け止めています。
(「ホークは性能が低い」なんて言っていない、とおっしゃるのなら、そこは無視してください。)
私の回答は以下のとおりです。
ホークの話は、航空自衛隊のF-1が「戦闘機」にカウントされることを前提に、F-1の非武装版、すなわち「空中戦のための兵器・アビオニクス・性能に係る能力を備えた航空機」ではないバージョン、であるところのT-2も「戦闘機」にカウントすべきかどうか、という話と連動している、というのが考慮すべき第一点です。
そして、ホークの話はまた、ミリバラが、ホークT1を戦闘用航空機にカウントしない一方でT-2を戦闘用航空機にカウントしていること、とは切り離して決着すべきことである、というのが考慮すべき第二点です。
以上二点を踏まえて、私は拙著においてT-2は「戦闘機」にカウントしない一方でホークT1は「戦闘機」にカウントしているところ、両方ともカウントするか、どちらもカウントしないか、に統一すべきであったと考えます。
最後に、再度BHさん。
>戦闘機の数を比較したいのであれば、一番単純なのはミリタリーバランスが戦闘機(FTR)として計上している航空機の数を抜き出してくることです。その例はすでにコラム#1806で示しました。太田コラム#1806ではミリタリーバランスの戦闘機の定義が示されていますが、実際にミリタリーバランスが戦闘機として計上している機種を見れば、ミリタリーバランスが言う戦闘機とは何であるのかは明確だと思います。すなわち、F.3とF-15J、制空専用の防空戦闘機です。
というお言葉ですが、決して「明確」ではありませんよ。
BHさんが典拠とされているミリバラは私の手元にないのですが、現在私の手元にあるミリバラ2000〜2001とミリバラ2007を見ると、前者では部隊別の記述のところには機数が入っておらず、後者では入っています。恐らく、後者の体裁のミリバラを手にしておられるのだと思います。
しかし、FTRと銘打った部隊の他、F(戦闘)がついた部隊であるFGAに配備されている航空機だけが戦闘機ではありません。航空自衛隊の例で言うと、偵察飛行隊(RECCE sqn)や教導飛行隊(Aggressor sqn)にも歴とした戦闘機であるF-4EやF-15が配備されています。逆に、教育飛行隊(複数)(TRG sqns)に配備されている機の中にも、T-2のように、戦闘機にカウントするかどうかが議論になるような機が配備されています。
ですから、「防空」戦闘機であれ、その他の戦闘機であれ、機ごとの総数を知りたいと思ったら、部隊別の記述のところではなく、機種ごとの総数が記述されているところを参照した方が確実なのです。
もとより、そうしたところで、なお一義的な結論を出せない場合があることは、これだけ戦闘機論争が続いていることからも、お分かりいただけるでしょうが・・。
<防衛庁再生宣言の記述をめぐって(続x3)>
1 始めに
このシリーズは、軍事に関心のない方には、お目障りかもしれませんが、軍事愛好家の皆さんと私とのやりとりが、ようやく安全保障の議論に発展する兆しを見せていることもあり、再度、やりとりの一部とこれに対する私のコメントをご披露させていただきます。もうしばらくご辛抱下さい。
本篇も即時公開します。
2 やりとり
<太田>
<今までの皆さんとのやりとりを振り返ってみると、>率直に申し上げて、皆さんの方が余りに拙攻だったということでしょう。典拠と言ったら、ウィキペディアに出てくる一センテンスくらいじゃ、どうしようもありません。
<alpha-OMEGA>
ホークT1.(訓練型)とT1.A(サイドワインダー搭載型)の区分をwikipedia(しかも日本語版があるのにわざわざ英語版)を根拠にして、しかも間違った引用(練習機型と局所防御型の機数がごちゃまぜ)をやらかしたお方が言えたセリフではないと思うのですが? JSF氏も他の方も軍事常識や運用方法の面から反論されていたのですが、その点を無視して自分が正しいと言い張るおつもりなのでしょうか?
<JSF>
>>>誰が<ホークは>「老朽機だから」と言ったのですか? 「練習機だから」ではありませんか?(JSF)
>>
>>「老朽」と「老旧」とは意味が全く違います、新品でも「老旧」でありうるのです。お分かりですね。(太田)
>
>質問をはぐらかして逃げないで下さい。誰も老旧だなんて言ってないでしょう。練習機だから<戦闘機には>カウントすべきではないという話がなんで貴方のブログの記事<(コラム#1804のことか?(太田))>ではすり替わっているんですか?
>発言を根本から捏造されてはたまらないですよ・・・(JSF)
↑これについては答えて頂けないのですか?
<バグってハニー>
<コラム#1808を拝見しましたが、>私とJSF氏の意見はほぼ一致していると思います。先生はまだ異論があるようですが...。もう一度、JSF氏のサイトを冷静に読めば何がおかしいのかにそのうち気付くと思います。
今までの繰り返しにしかならないですが...、
>航空自衛隊とイギリス空軍が戦闘を行った場合、航空自衛隊の圧勝に終わります。
私はこれまで一貫して数の多寡を議論してきました。「劣勢」というのももちろん数においてという意味です。戦闘の優劣が兵器の数だけでは決まらないことは承知しております。私がNo.712でミリタリーバランスの注釈の一文
>スクアドロン(飛行中隊)の強さは運用されている航空機、国によって異なる。
をわざわざ引用したのはそのこと(ミリタリーバランスの数の引用の限界)を示すためです。だからといって太田氏の単純な数による日英の戦力比較に意味がないとは考えていません。
>そして戦闘機と戦闘用航空機は意味が違います。
最初の投稿No.714以来、私は一貫して
> 「戦闘機」とはFighterに対応する日本語
として用いています。もしも、私が自身の主張の中で戦闘機という用語を曖昧な意味で用いている箇所があれば指摘してください。
太田氏がミリタリーバランスだけに依拠して著述したのがおかしいという意見があるようですが、私はそうは思いません。そもそも、ミリタリーバランスは装備も運用の仕方もバラバラの各国の戦力に統一した基準を当てはめて定量的に戦力を比較する目的のもとに書かれています。二国間の戦力を比較するのにはこの上ない資料といえるでしょう。大事なことはそれを引用する者の裁量が入り込まないように必ず対応する項目を抜き出してくることではないでしょうか。その点において太田氏の引用の仕方は厳密さを欠いていたことは確かだと思います。
戦闘機の数を比較したいのであれば、一番単純なのはミリタリーバランスが戦闘機(FTR)として計上している航空機の数を抜き出してくることです。その例はすでにコラム#1806で示しました。太田コラム#1806ではミリタリーバランスの戦闘機の定義が示されていますが、実際にミリタリーバランスが戦闘機として計上している機種を見れば、ミリタリーバランスが言う戦闘機とは何であるのかは明確だと思います。すなわち、F.3とF-15J、制空専用の防空戦闘機です。この場合、太田氏の著作とは日英の優劣が逆転してしまいますが、私はそれでもよかったと思います。というのは、日本は制空専用戦闘機が多い代わりに、JSF氏が指摘したとおり爆撃能力のある戦闘機は英国よりも少ないからです。すなわち、これは日本の戦力が英国との比較において「歪」である一例であり、太田氏の著作の該当部分の文意は損なわれないと思うからです。
しかし、この戦闘機の定義はあまりにも狭くて一般的な用法とは必ずしも一致していないと思われます。一般大衆向けに書かれた本で制空戦闘機と戦闘攻撃機を分けて議論することはあまり生産的ではないかもしれません。そこで、次善の策として戦闘用航空機の数を比較することを私は提案しました。こちらもミリタリーバランスがその定義に従ってすでに数字を用意してくれています。また、この数字には潜在的な戦力も含まれているので、より適正な比較であるともいえます。ただし、JSF氏の言う通り、ニムロッドは戦闘機とはかけ離れていますから、それを除いて比較するというのは最も妥当だと私も思います。
ところで、
>これは防衛型の軍隊と侵攻型の軍隊の違いです。
JSF氏はこれまで太田氏にいろいろと批判を加えてこられましたが、おそらく太田氏が同書の該当部分で主張したかったのはまさしくそのことだったのだと思います。そして、さらに太田氏が主張したいのは
>航空自衛隊とイギリス空軍が戦闘を行った場合、航空自衛隊の圧勝に終わります。
という考え方が必ずしも正しくないということだと私は思うのです。
(明日に続く)
3 私のコメント
(1)始めに
バグってハニーさん(BH。日米のハーフで米国在住)は、軍事愛好家であると自称されていたと思いますが、日本の軍事愛好家の皆さんに彼を見倣って欲しい点がいくつかあります。
第一に、BHさんの今回の投稿からもお分かりにように、彼が安全保障問題に強い関心を持っているという点です。
軍事フェチそのものについてどうこういうつもりはありませんが、安全保障問題に関心を持つと、軍事知識が宝の持ち腐れになりません。
第二に、彼が、ミリタリーバランス(ミリバラ)を手元に置いているか、容易にミリバラにアクセスできる環境にいるという点です。
BHさんが説明されていることからもお分かりいただけると思いますが、軍事を論ずるにも、安全保障問題を論ずるにもミリバラは必要不可欠です。
第三に、彼が、常にミリバラ等の典拠に拠りながら考えたり議論をしたりしているという点です。
なお、軍事のグローバルスタンダードは英国と米国が設定していることもあり、典拠は極力英語のものであるべきでしょう。
ただし、BHさんにも一つだけ苦言があります。
>私とJSF氏の意見はほぼ一致していると思います。先生はまだ異論があるようですが...。もう一度、JSF氏のサイトを冷静に読めば何がおかしいのかにそのうち気付くと思います。
こういう言い方を品位がないというのです。
そもそも、保管機をカウントすべきだとする私の見解を問題にされているのか、私によるミリバラの「戦闘機」や「戦闘用航空機」の定義の紹介内容を問題にされているのかすら分かりません。思わせぶりなことをいわず、具体的に論じるべきでしょう。
(2)どこまでが戦闘機か
さて、JSFさんの、率直に言って意味不鮮明なご指摘ですが、
>サイドワインダーを積めるT1.Aは75機、他は非武装機です。
T.1Aを戦闘機としてカウントすること事態が馬鹿らしいのですが、それ以前に非武装のT1まで含めて141機と主張するのは、水増しに水増しを重ねる行為です。
と以前の投稿でJSFさんがおっしゃっていることからすると、alpha-OMEGAさんのご指摘と同じご趣旨だと解釈してもよさそうです。
その上で、私はお二方が、ホークは性能が低い(=老旧機である)ので、ホークT1.Aを「戦闘機」、すなわち「空中戦のための兵器・アビオニクス・性能に係る能力を備えた航空機」(コラム#1808)にカウントすることすら疑問なしとしないのに、「空中戦のための兵器・アビオニクス・性能に係る能力を備えた航空機」ではないホークT1(正確にはT1.A以外のホーク)までも太田が戦闘機にカウントしたのはおかしい、と主張されているものと受け止めています。
(「ホークは性能が低い」なんて言っていない、とおっしゃるのなら、そこは無視してください。)
私の回答は以下のとおりです。
ホークの話は、航空自衛隊のF-1が「戦闘機」にカウントされることを前提に、F-1の非武装版、すなわち「空中戦のための兵器・アビオニクス・性能に係る能力を備えた航空機」ではないバージョン、であるところのT-2も「戦闘機」にカウントすべきかどうか、という話と連動している、というのが考慮すべき第一点です。
そして、ホークの話はまた、ミリバラが、ホークT1を戦闘用航空機にカウントしない一方でT-2を戦闘用航空機にカウントしていること、とは切り離して決着すべきことである、というのが考慮すべき第二点です。
以上二点を踏まえて、私は拙著においてT-2は「戦闘機」にカウントしない一方でホークT1は「戦闘機」にカウントしているところ、両方ともカウントするか、どちらもカウントしないか、に統一すべきであったと考えます。
最後に、再度BHさん。
>戦闘機の数を比較したいのであれば、一番単純なのはミリタリーバランスが戦闘機(FTR)として計上している航空機の数を抜き出してくることです。その例はすでにコラム#1806で示しました。太田コラム#1806ではミリタリーバランスの戦闘機の定義が示されていますが、実際にミリタリーバランスが戦闘機として計上している機種を見れば、ミリタリーバランスが言う戦闘機とは何であるのかは明確だと思います。すなわち、F.3とF-15J、制空専用の防空戦闘機です。
というお言葉ですが、決して「明確」ではありませんよ。
BHさんが典拠とされているミリバラは私の手元にないのですが、現在私の手元にあるミリバラ2000〜2001とミリバラ2007を見ると、前者では部隊別の記述のところには機数が入っておらず、後者では入っています。恐らく、後者の体裁のミリバラを手にしておられるのだと思います。
しかし、FTRと銘打った部隊の他、F(戦闘)がついた部隊であるFGAに配備されている航空機だけが戦闘機ではありません。航空自衛隊の例で言うと、偵察飛行隊(RECCE sqn)や教導飛行隊(Aggressor sqn)にも歴とした戦闘機であるF-4EやF-15が配備されています。逆に、教育飛行隊(複数)(TRG sqns)に配備されている機の中にも、T-2のように、戦闘機にカウントするかどうかが議論になるような機が配備されています。
ですから、「防空」戦闘機であれ、その他の戦闘機であれ、機ごとの総数を知りたいと思ったら、部隊別の記述のところではなく、機種ごとの総数が記述されているところを参照した方が確実なのです。
もとより、そうしたところで、なお一義的な結論を出せない場合があることは、これだけ戦闘機論争が続いていることからも、お分かりいただけるでしょうが・・。
太田述正ブログは移転しました 。
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