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防衛庁再生宣言の記述をめぐって(続x8)
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ガゼル

2007年06月17日
太田述正コラム#1817(2007.6.17)
<防衛庁再生宣言の記述をめぐって(続x8)>

1 始めに

 「大きな絵柄」に関する論議をお届けします。
 拙著を上梓した際に私が期待した論議が、日本の軍事愛好家の皆さんからもそれ以外の皆さんからも6年半もの間、全く提起されず、バグってハニー(BH)さんから初めて提起されたことに敬意を表するとともに、日本の軍事愛好家の皆さんの猛省を促したいと思います。

2 JSFさんのBHさんへの反論

>どちらの手法にせよ、日英の戦力差はさらに縮まり、日本は英国の約7〜8割の戦闘機を保有または運用していることになります。(バグってハニー(BH))

 私の計算では8〜9割です。そしてこの程度の差ならBVR戦闘が出来る機体の数で英国の倍の日本は、空中戦で圧倒的優位に立てます。まぁ、7割でも覆ることは無いでしょう。

>> JSF氏:航空自衛隊とイギリス空軍が戦闘を行った場合、航空自衛隊の圧勝に終わります。

>もう一つの可能性は自衛隊の不戦敗です。普通、無意識のうちに英軍が日本に攻め込むというシナリオを想定しますが、当然、日本が英国に攻め込むというシナリオもあります。JSF氏も認めるとおり、自衛隊には外征力がないので、そもそも戦闘が起こらない→自衛隊の不戦敗になります。(BH)

 そもそも戦力比較を行っているのであって、実際に対戦するシミュレーションを行うのが目的ではありません。お互い遠すぎますし。

>日本が打って出る必要性に駆られることは今のところ想像しにくいですが、ありえないことではありません。今、在韓米軍はどんどん縮小していますが、米軍が完全に撤退した後に、南北朝鮮で戦端が切り開かれるといった可能性があると思います。その際、米国が何らかの政治的判断により参戦しないと判断した場合、日本は窮地に追い込まれます。たとえ、日本本土が直接被害を受けることがなくても、韓国には何万人とも言う日本人駐在員・観光客がおり、外征力を欠いた今の自衛隊の戦力ではこれを見殺しにするしかないからです。(BH)

 そういった条件の場合、韓国軍の協力が得られます。釜山に橋頭堡を確保して艦船(フェリーを動員しても良い)を使用するか、南部の空港に民間機を含む輸送機を下ろして退去します。そもそも目と鼻の先です。この場合、侵攻用の外征力は必要ありません。

>太田氏は著書の中で、自衛隊の戦力は「蜃気楼のようなもので」「実態は殆ど何もな」く「あまりにも弱体」などと刺激的な言葉を繰り返していますが、これは日本が他国の侵略に簡単に屈服すると言う意味ではありません。太田氏の見解はそれとは正反対でしょう。ソ連の脅威が喧伝されていたときであっても、自衛隊・米軍の方があまりにも優勢であったので、手加減しながら机上演習を続けていたことを暴露したのは太田氏自身です。(BH)

 では「蜃気楼のようなもので」「実態は殆ど何もなく」「あまりにも弱体」などというセリフは使ってはなりません。

>兵員装甲車の数が少ない、「肝心の空母や揚陸強襲艦といった攻撃用の艦艇を全く持っていない」、といった文言から自衛隊の防御力ではなく、攻撃力・外征能力が著しく劣っていることを太田氏が問題視していることが推察されます。攻撃ヘリや戦闘機の数を俎上に載せたのもこれらを攻撃力の尺度として用いたかったからでしょう。(BH)

 日本国は専守防衛国家であり、侵攻用戦力は特に必要が無い。また攻撃ヘリの戦力は英軍以上であるし、戦闘機戦力は空中戦闘で英軍を圧倒できます。

>例えば、英海軍にはヘリ揚陸艦オーシャンというのがあります。
http://en.wikipedia.org/wiki/HMS_Ocean_%28L12%29
>英海軍はこれに最大18機のヘリを搭載して、実際にイラク戦争で使用しています。これは、太田氏が指摘した通り、自衛隊が持っていない兵器の一つです。(BH)

 自衛隊はそもそも侵攻型軍隊ではない。

>ガゼルはそれ自身は対戦車攻撃力を有していなくても、英陸軍がガゼルを対戦車攻撃の要としてカウントしていることに変わりはありません。
http://www.army.mod.uk/equipment/ac/gazelle.htm
>というのは、ガゼルはリンクスなどの攻撃ヘリと対にして対戦車戦に投入されるからです。
http://www.army.mod.uk/aac/units/3_regiment_aac/662_squadron/index.htm
>(中ほどに、リンクス6機、ガゼル6機で部隊が編成されたことが書かれています。)
>英陸軍のガゼルが対戦車ヘリではなかったとしても、太田氏が同機を「対戦車機動攻撃力」にカウントしたことは的外れではありません。形には表れずとも、日本にはなくて英国にあるものとして、このような部隊運用のノウハウも挙げられます。(BH)

 ハニー氏、その主張はあまりにもおかしい。戦闘ヘリが観測ヘリとタッグを組んで運用されるのは常識でしょう? 貴方もそれくらいのことは理解している筈だ。そのような理屈でガゼルを「対戦車機動攻撃力」にカウントするのであれば、陸自のOH-6やOH-1もカウントしなければおかしい。それが道理でしょう?

>そして、日本に決定的に欠けているのは実績です。英国はこのような対戦車ヘリ部隊を湾岸戦争やイラク戦争に投入して実際に多大な戦果を上げています。すなわち、これらの兵器、部隊はすでに実戦でテスト済みです。(BH)

 コブラは米軍が使用し多大な実績を上げています。自衛隊に配備されているものと同じものです。

>対戦車攻撃力は攻撃ヘリの数比較だけでは決まりません。対戦車部隊を敵地まで輸送し展開する能力、戦闘を継続するための補給、部隊を運用するノウハウ...。これは単なる後付の解釈変更ですが、太田氏がいう「対戦車機動攻撃力」の機動とは対戦車へリ部隊を機動的に運用する能力と定義すれば、太田氏がこのような議論を尽くしておらず、それが同書の目的ではないとしても、日本の「対戦車機動攻撃力」は英国よりも劣っているという太田氏の指摘は、とりもなおさず真実を突いていることに変わりはありません。(BH)

 いいえ、明らかに間違いです。太田氏は「武器の値段」で「対戦車機動攻撃力」の優劣を語っているのですら。しかも値段の安いガゼルやリンクスを、高価なコブラと同じ値段で計算している。そして機体数を掛けたその値段が戦力比だという。
 どう見ても水増しに水増しを重ねる行為です。

>自衛隊の装備は防御型で攻撃力・外征力を著しく欠いていたり、自衛隊が実戦に投入されたことがないのは自衛隊の責任ではありません。それは、憲法の制約の下、政治家が行った数々の決断の帰結にしか過ぎません。太田氏の論考はそのような政治問題には触れずに、自衛隊の装備に着目してボトムアップ式に日本の安全保障における潜在的な問題点、すなわち、防御は固いが打って出ることができないという問題点を軍事にはほとんど関心がない一般大衆に対して喚起しようとした点がユニークであったと私は思います。(BH)

 前提となる数値自体が間違っていますので、説得力がありません。

>太田氏の引用が厳密さを欠いていたことは確かですが、自衛隊の装備を通して日本の安全保障の問題点を訴えようとした太田氏の著書の意義は全体として損なわれたわけではないと思います。同書が9/11の前に書かれたことに思いをいたせば、自衛隊の装備の問題点を指摘した同書は慧眼にあふれていたともいえます。おそらく、太田氏にも全く予期できなかったのは6年も経って挑発的な文言に反応したのが軍事に関心のない一般大衆という想定読者ではなく軍事愛好家であったことではないでしょうか。(BH)

 間違った数字を主張し、何も知らない一般大衆を騙すような行為は不誠実です。

3 太田のとりあえずのコメント

 私が日本の軍事安全保障の大きな図柄をとりあげているのは、拙著の該当箇所のほか、コラムでは枚挙に暇がないのですが、特にコラム#30と58(内容的にオーバーラップがある)が特に重要です。
 拙著の該当箇所は、2000年頃の状況をとりあげているのに対し、コラム#30と58では、冷戦時代の状況をとりあげており、両者はセットで読まれるべきものです。
 それぞれ、私が何を言いたかったかを一言ずつでご説明すれば、前者では、全く使い道がなくなった自衛隊、ということであり、後者では、ソ連の脅威どころか自衛隊こそソ連の脅威であったということです。

 もう少し敷衍しましょう。

 冷戦時代には、米軍の対ソ侵攻拠点としての日本列島をソ連の経空、経海攻撃から守り、安んじて米軍に対ソ侵攻をさせるという役割を自衛隊が担っていただけでなく、海上自衛隊の対潜機は、ソ連の核弾道弾搭載潜水艦を含む潜水艦を攻撃・撃破するという役割を担っていました。
 どころが、上記の日本列島防御能力という観点からも、潜水艦攻撃能力という観点からも、自衛隊は過剰な能力を持っていました。
 (ソ連の核弾道弾の日本列島への脅威は捨象している。)

 このように、もともと過剰であった自衛隊は、ソ連が崩壊して冷戦が終わり、そもそも、日本列島防御能力も潜水艦攻撃能力もいらなくなると、存在根拠を全く失ってしまうのです。
 (もちろん、北朝鮮も中共も工作員やゲリラを夜陰に乗じて日本に上陸させることはできるし、中共は爆撃機も潜水艦も持っているけれど、少なくとも冷戦終焉当時はほとんど無視できるレベルでした。)

 その上で、私が拙著の当該箇所で言いたかったことを、前提から申し上げると次のとおりです。

 日本列島防御も潜水艦攻撃も必要がなくなったとなると、それ以外のこと、つまり、外国に対する武力による威嚇または武力の行使もしくは国連平和維持活動への全面的参加を目指すか、さもなくば大軍縮するしかない。
 (より正確な言い方をすると、憲法を改正するか憲法解釈変更を行って集団的自衛権行使を認めない限り、自衛隊は大軍縮するしかない。)
 仮に大軍縮はしないというのなら、対潜機以外に攻撃的能力を殆ど欠いている自衛隊を、攻守にバランスのとれた自衛隊へと改造しなければならない。
 ところが防衛庁内外には自衛隊を改造しよう、改造に向けて布石を打っておこうという気運が見られない。
 このままの自衛隊は、「蜃気楼のようなもので」「実態は殆ど何もな」く「あまりにも弱体」だと言わざるをえない。
 自衛隊がいかに攻守のバランスがとれていないか、政治経済体制や戦略的位置や累積防衛費等で日本と似通っている英軍とおおざっぱな比較をしたので、実感してほしい。

 BHさんは、私の思い描く大きな図柄を的確にとらえているのに、JSFさんは完全にズレていることがお分かりだと思います。
 拙著の該当箇所を批判しようと思うのなら、この図柄に照らして、私の記述が不適切であるという指摘をするか、または、この図柄そのものがおかしい、という指摘をすべきなのです。 
 いずれにせよ、コラム#30と58を読まれ、じっくり考えられた上で、軍事愛好家の皆さん、ぜひもう一度私にチャレンジしてみてください。

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太田述正コラム#1816(2007.6.17)
<防衛庁再生宣言の記述をめぐって(続x7)>

1 始めに

 掲示板
 http://sol.la.coocan.jp/wforum/wforum.cgi
は、島田さんが提供されていたのですが、2に掲げるやりとりの箇所等を踏まえ、私のことを慮ってこの掲示板を閉鎖されました。
 私は、むしろ永久にこのやりとりをインターネット上に残したいと考え、まずはその箇所を再録し、私のコメントを付したものをコラムとして公表させていただくことにしました。
 私は、何としてでも軍事愛好家の皆さんの中の有望な方々に本格的な軍事研究家へと脱皮して欲しいと願っており、そのためにも、皆さんに自分達の姿を何度も正視していただく必要があると考え、このような対応をさせていただいた次第です。
 なお、このシリーズの前回に言及した「大きな絵柄」に係る論議は、次回のコラムに回します。

2 島田掲示板上でのやりとり

<太田>
 コラムには仕立てられないお粗末な話しなのでここで処理します。
 <JSFさん、>私が何度も聞いていることにどうして答えないの。
 ミリバラの戦闘機の定義にどうして、(少なくとも)<ホークの>T1.Aが該当しないの?
 当時練習機として使用されていようと支援機として使用されていようと、関係ないの。
 あなたが、ホークを私の言う「老旧機」と考えているためではないか、と忖度してさしあげただけですよ。
 そうじゃないというのなら、どうしてミリバラの定義の「戦闘機」に該当しないか、逃げ回らずに説明しなさい。
 ついでに、ガゼルは1999〜2000年当時武装していなかった、と断言したのは間違いでした、と認めなさい。
 まだ頑張るつもりなら、ウィキペディア以外の典拠を見つけてごらん。
 差別用語と言われるかもしれないけど、女々しいぞ。

<JSF>
>これも、コラムには仕立てられないお粗末な話しなのでここで処理します。

 貴方は「老旧機」の話をコラムに立てていたというのに、訂正はコラムに立てないというのか。
 なんて卑怯な態度なのでしょう。

>あなたが、ホークを私の言う「老旧機」と考えているためではないか、と忖度してさしあげただけですよ。

 私が言っても居ないことを捏造したのだから、その点は謝罪し訂正してください。

>私が何度も聞いていることにどうして答えないの。
>ミリバラの戦闘機の定義にどうして、(少なくとも)T1.Aが該当しないの?

 練習機にサイドワインダー積んでマトモな戦力になると思っているんですか? それで日英戦闘機比較なんて出来ません。水増し行為ですね。

>当時練習機として使用されていようと支援機として使用されていようと、関係ないの。

 その通りです。能力で全てが決まるのです。ホークT.1Aでは対戦闘機戦闘は無理です。

>そうじゃないというのなら、どうしてミリバラの定義の「戦闘機」に該当しないか、逃げ回らずに説明しなさい。

 ホークは亜音速練習機として設計された機体だからです。

>「老旧」という言葉は、確か30年ほど前、陸海空幕僚監部の自衛官のどなたかから初めて、「老朽」と対比する形で教わった言葉だったと思います。
>現在使われていないとすると、昔使われていた言葉が廃れてしまったか、あるいはもともとその自衛官の方の冗談だったのかもしれませんね。
>私は、便利な言葉だと感心した記憶があります。

 太田氏、そんな言い訳しかできないのですか。
 私は<ホークは>「練習機だから」と言っていた筈です。「老旧機だから」などということは一言も言っていない。貴方の勝手な解釈で私の発言を改竄されるのは、許せません。
 記事の訂正をお願いします。
 ああ、ところで、私の知り合いの自衛官に聞いてもそのような防衛庁用語など存在しないと言われました。
 それと調べて見ましたが、「老旧」とは日本語ではなく中国語です。

>ついでに、ガゼルは1999〜2000年当時武装していなかった、と断言したのは間違いでした、と認めなさい。

 拒否します。

>まだ頑張るつもりなら、ウィキペディア以外の典拠を見つけてごらん。

 現実にガゼルは実戦に投入されていながら一度も発砲していません。

>差別用語と言われるかもしれないけど、女々しいぞ。

 明確な捏造(老旧機なんたら)を行ったくせに逃げ回る貴方の方が女々しいです。
 素直に謝罪したらどうですか?

3 太田のコメント

 確かに私はコラム#1810で、

>ホークは性能が低い(=老旧機である)ので、ホークT1.Aを「戦闘機」、すなわち「空中戦のための兵器・アビオニクス・性能に係る能力を備えた航空機」(コラム#1808)にカウントすることすら疑問なしとしないのに、「空中戦のための兵器・アビオニクス・性能に係る能力を備えた航空機」ではないホークT1(正確にはT1.A以外のホーク)までも太田が戦闘機にカウントしたのはおかしい、と主張されているものと受け止めています。
 (「ホークは性能が低い」なんて言っていない、とおっしゃるのなら、そこは無視してください。)(太田)

と「老旧」という言葉を使いましたが、ここで私はきちんと、この「老旧」という言葉は「性能が低い」という意味で使っています、と記しています。それ以上、何をどうせよと言うのですか。
 ところであなたは、
 
>><ホークが>どうしてミリバラの定義の「戦闘機」に該当しないか、逃げ回らずに説明しなさい。(太田)
>ホークは亜音速練習機として設計された機体だからです。(JSF)

とおっしゃってますね。
 どうしてここで、練習機とだけ書かずに、「亜音速」という修飾語句を入れたのですか。
 それは、「性能が低い」という趣旨ではないのですか。

 更にあなたが、

>練習機にサイドワインダー積んでマトモな戦力になると思っているんですか? それで日英戦闘機比較なんて出来ません。水増し行為ですね。(JSF)
>>当時練習機として使用されていようと支援機として使用されていようと、関係ないの。(太田)
>その通りです。能力で全てが決まるのです。ホークT.1Aでは対戦闘機戦闘は無理です。(JSF)

とおっしゃっていることから、あなたがホークが、練習機として開発されあるいは練習機として使用されているかどうかは問題にしておられず、もっぱら、ホークが「マトモな戦力」ではなく、「対戦闘機戦闘・・能力」が低いこと、すなわち私が言うところの「性能が低い」ことを問題にしておられることは明らかですよね。
 どうしてこんなことまで私に言わせるのですか。

 その上で、私があなたに問いただしているのは、ミリバラの戦闘機の定義のどこに「ただし「性能が低い」機、例えば「亜音速」機は除く」と書いてあるのですか、ということです。
 書いてないでしょう。
 ということは、あなたはミリバラのこの定義が不適切であると考えているのですね。それなら、私との議論はそこで終わりですね、ミリバラと議論をしてください、と申し上げているのです。

 次にあなたは、

>>ついでに、ガゼルは1999〜2000年当時武装していなかった、と断言したのは間違いでした、と認めなさい。(太田)
>拒否します。(JSF)
>>まだ頑張るつもりなら、ウィキペディア以外の典拠を見つけてごらん。(太田)
>現実にガゼルは実戦に投入されていながら一度も発砲していません。(JSF)

 とおっしゃるが、それならあなたは、当時のミリバラがガゼルを攻撃ヘリにカウントしたことをどう説明するのですか。
 武装(私見では武装する運用構想のあるものを含む)していない攻撃ヘリなんて落語みたいな話なので、あなたはミリバラのこの箇所は間違っていると主張しているとしか思えませんね。しかし、ウィキペディアじゃミリバラを論駁できませんよ。ミリバラ並、あるいはそれ以上に信頼性の高い別の典拠に基づいて、あなたの主張を展開しなければなりませんよ、と言っているのです。
 それができないのなら、「ガゼルは1999〜2000年当時武装していなかった、と断言したのは間違いでした、と認めなさい」と申し上げているのです。
 「ガゼルは実戦に投入されていながら一度も発砲してい」ないというあなたの指摘を仮に正しいと認めるとしても、それなら、実戦に一切投入されたことがない自衛隊は、当然実戦で一度も発砲していないのだから武装していない、ということになってしまいますよ。
 言うことに事欠いて、無茶苦茶を言わないでください。

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防衛省08:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
2007年06月16日
太田述正コラム#1814(2007.6.16)
<防衛庁再生宣言の記述をめぐって(続x6)>

 (前回の続きです。なお、前回の<太田>の「発言」中のミスプリを何カ所か訂正してブログに再掲載してあります。)

<太田>
 バグってハニー(BH)さんのおかげで、ガゼル論争にほぼ決着がつきましたね。

 まず、JSFさんが典拠としてきたウィキペディアの
http://en.wikipedia.org/wiki/Westland_Gazelle#Operational_history
British Gazelles were only armed when used in the Falklands, where they were fitted with machine guns and rocket pods, but these were not used.
は誤りだったということです。

 その理由は次のとおりです。
 BHさんの見つけてくれた
http://www.army.mod.uk/aac/units/3_regiment_aac/662_squadron/index.htm

には、1980年代半ばにリンクス6機とガゼル6機からなる対戦車飛行中隊が改編によって編成されたとあり、その編成が2000年夏までの間に、ガゼルが対戦車中隊からリタイアする形で再び改編された旨の記述がない、というのが第一点です。
 そして、上記対戦車飛行中隊の改編について、リンクスだけの12機からなる陸軍軍団隷下の対戦車飛行中隊から、単なる(独立の?)対戦車飛行中隊にし、その際、リンクス6機をガゼル6機で置き替えた、と記されているのが第二点です。
 ここから、常識的に考えて、当時のこのガゼルが非武装であったとは思えないのです。 

 補強材料は、やはりBHさんが見つけてくれた、
http://www.army.mod.uk/equipment/ac/gazelle.htm

です。
 このサイトは、現在の状況を英国防省自身が記述したものですが、ガゼルの武装について、
2 7.62mm machine guns (not standard)

と記されています。
 これは、対戦車任務を解除されて支援任務に専念している現在といえども、常装ではないけれど、ガゼルが機関銃を搭載している場合があること、従って当然ガゼルに関して機関銃を搭載する運用構想があること、を意味します。
 いわんや、ガゼルが対戦車任務に従事していた2000年当時においておや、ということです。
 だからこそ、ミリバラ2000〜2001年は、英陸軍のガゼルを攻撃ヘリにカウントしていたわけです。
 私は、当時ガゼルが、機関銃を常装していたことはもちろん、それ以外の、戦車に対してもある程度は有効な強力な兵器を常装していた可能性がある、と思います。

 それはともかく、上記ウィキペディアの記述だけに拠って、ガゼルはフォークランド戦争の後は、非武装となった、と主張してきた(BHさん以外の)軍事愛好家の皆さんもまた、誤っていたことがはっきりしたと言っていいでしょう。

 ところで、「専門家」と「シロウト」の違いは、間違いをおかすかどうかではありません。(もとより、間違っていてばかりでは話になりませんが・・。)
 どんな専門家だって間違いはあります。
 例えば、ウィキペディアとは違って、専門家が執筆しているはずのブリタニカだって、平均して、ウィキペディアの自然科学分野一項目当たりの誤り4箇所に対して誤りが3箇所もあります(コラム#1092)。
 「専門家」のメルクマールは、私見では、その「専門」分野に係る典拠の信頼性を見分ける能力なのです。
 ウィキペディアには、上述したように必ずと言ってよいほど誤りがあることからも、単独でそれに拠れるほどの信頼性はありません。せいぜい、補足的に使われるべきものです。
 他方、ミリバラはブリタニカやウィキペディアのような百科事典ではなく、各国の軍事力比較に関する専門書であり、しかも信頼性が国際的に認められている専門書です。
 日英軍事力比較が議論になっている時にすら、そのミリバラにすぐアクセスしようとしない人、あるいはアクセスできない人は、およそ軍事愛好家ではあっても、軍事の「専門家」ではありえないのです。
 
 もう一つ、「専門家」に求められるものがあります。
 それは、木を見てかつ森が見える、ということです。
 日本の社会科学がなぜダメかについてはいくつか理由がありますが、その大きな一つが、専門家の教育が、専門分野の教育だけに偏っていることです。
 米国では、学部の4年間すべてが教養課程のような趣があるだけでなく、博士号取得をめざす院生でも、修士課程で、専門分野よりはるかに広汎な分野の教育を徹底的に受けます。裾野が広くなければ山は高くなれないのです。
 私は英米同様、日本にも、(防衛大学校以外の)大学や大学院に軍事学者がいてしかるべきだと思います。
 いずれはそうなるでしょうが、拙著を読んで、その細部にばかりこだわり・・それももちろん大切なことであることは間違いありませんが・・拙著の大きな絵柄には全く関心を持っていないように思われる(BHさん以外の)軍事愛好家の皆さんを見ていると、皆さんの中からは、軍事学者どころか、軍事専門家すら育たないのではないか、という危惧の念を持ちました。

 こんなことを言われて悔しいでしょう。
 悔しかったら、まず軍事専門家になり、そして軍事学者になってください。
 心から応援しています。

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太田述正コラム#1813(2007.6.16)
<防衛庁再生宣言の記述をめぐって(続x5)>

1 始めに

 本シリーズもいよいよ佳境に入ってきました。
 JSFさんとバグってハニーさん(BHさん)ご両名の絶大なるご貢献に心から感謝申し上げます。
 本篇も即時公開します。

2 ご両名と私とのやりとり

<JSF>
>JSFさんは、ミリバラがいかに信頼が置けないか、という主張をされているわけです。(太田)

 いいえ、ミリバラ記載の自衛隊の戦闘機数は編成単位の数でしかなく、予備機や保管機を含んでいません。一方、イギリス軍の機体の数は、常用機と予備機の数が詳細に書かれています。
 そして太田さんの著書内容は「自衛隊は予備機を含まず、英軍は全保有数」で比較している為、比較になっていないというわけです。つまりミリバラが悪いというより、太田さんはミリバラの内容を読めていないのです。

<バグってハニー>
 JSF氏は、このことに関してご自身のサイトで明瞭に説明したと思いますが、私の言葉に置き換えて説明したいと思います。

 JSF氏が注目したのはミリタリーバランスではF-15が約170機となっているのに対して同時期の防衛白書では同じF-15が203機とされており、明確に食い違っている点です。氏はこれは防衛白書が保管機を含めた全保有機を数えているのに対してミリタリーバランスは保管機を除いた実際の配備数だと解釈しました。この見解はミリタリーバランスの注釈に裏付けられています。

Stocks of equipment held in reserve and not assigned to either active or reserve units are listed as 'in store'. However, aircraft in excess of unit establishment holdings, held to allow for repair and modification or immediate replacement, are not shown 'in store'. This accounts for apparent disparities between unit strengths and aircraft inventory strengths

 装備のうち予備役は、また現役でも予備役でもなくても保管されているものは「保管中」と記した。しかし、航空機はこの限りではない。部隊を編成した後の剰余機、つまり、修理中や改修中や交替用の機体は「保管中」には含まれない。これが部隊別の戦力と装備一覧の戦力とが食い違う原因である。

 最後の一文は、ミリタリーバランスでは一般的に各装備が、部隊編成一覧表と装備一覧表の二箇所に出てくることを指しています。これを頭に入れて日本を見ると航空自衛隊は部隊編成一覧しかなく装備一覧を欠いています。そして、「保管中」の機体は一切、記されていません。これは、ミリタリーバランスからは日本の保管機が何機あるのか知ることができないことを示しています。

 この問題に対する解決法は二つあります。ミリタリーバランス以外の資料を用いて、例えばJSF氏が例示した資料を用いて保管機込みの全自衛隊機を調べることです。この場合、自衛隊機は増えます。その計算例はJSF氏のサイトにあります。

 もう一つの手は英国も保管機抜きにすれば、それでもミリタリーバランスを用いて比較ができます。日本とは逆に英国の項では部隊別の配備数が書いてないですが、装備一覧の項では配備数と保管機数が分けて書いてあるので、後は保管機を足さなければいいだけです。この場合、英軍機が減ります。その計算例は私がNo.738で示しました。

 どちらの手法にせよ、日英の戦力差はさらに縮まり、日本は英国の約7〜8割の戦闘機を保有または運用していることになります。

<JSF>
>私とJSF氏の意見はほぼ一致していると思います。先生はまだ異論があるようですが...。もう一度、JSF氏のサイトを冷静に読めば何がおかしいのかにそのうち気付くと思います。(BH)

 私もこのシリーズの連載をあと3回くらい書く予定なので、何時かきっと気付いてくれると思います。


>をわざわざ引用したのはそのこと(ミリタリーバランスの数の引用の限界)を示すためです。だからといって太田氏の単純な数による日英の戦力比較に意味がないとは考えていません。(BH)

 数の比較自体は構いませんが、練習機を戦闘機扱いするのは水増し行為だと申し上げています。

>太田氏がミリタリーバランスだけに依拠して著述したのがおかしいという意見があるようですが、私はそうは思いません。そもそも、ミリタリーバランスは装備も運用の仕方もバラバラの各国の戦力に統一した基準を当てはめて定量的に戦力を比較する目的のもとに書かれています。二国間の戦力を比較するのにはこの上ない資料といえるでしょう。大事なことはそれを引用する者の裁量が入り込まないように必ず対応する項目を抜き出してくることではないでしょうか。その点において太田氏の引用の仕方は厳密さを欠いていたことは確かだと思います。(BH)

 ミリタリーバランスには価値があります。ですが書いてある数値の意味を理解しようとせず、ただ書いてあるからといって表面上の数値のみ引用するやり方が許されるのは、素人だけです。

>戦闘機の数を比較したいのであれば、一番単純なのはミリタリーバランスが戦闘機(FTR)として計上している航空機の数を抜き出してくることです。その例はすでに以前示しました。太田コラム#1806ではミリタリーバランスの戦闘機の定義が示されていますが、実際にミリタリーバランスが戦闘機として計上している機種を見れば、ミリタリーバランスが言う戦闘機とは何であるのかは明確だと思います。すなわち、F.3とF-15J、制空専用の防空戦闘機です。この場合、太田氏の著作とは日英の優劣が逆転してしまいますが、私はそれでもよかったと思います。というのは、日本は制空専用戦闘機が多い代わりに、JSF氏が指摘したとおり爆撃能力のある戦闘機は英国よりも少ないからです。すなわち、これは日本の戦力が英国との比較において「歪」である一例であり、太田氏の著作の該当部分の文意は損なわれないと思うからです。(BH)

 いえ、制空戦闘機が100機しかない英軍こそ歪んでいると言えるでしょう。米軍は戦闘爆撃機の他に制空戦闘機もきちんと数を確保しています。フランス軍もです。ロシア軍もです。
 そして自衛隊は対地爆撃能力こそ英軍にくらべ劣っていますが、対艦攻撃能力は上回っていますので、防衛構想として正しい選択です。

>しかし、この戦闘機の定義はあまりにも狭くて一般的な用法とは必ずしも一致していないと思われます。一般大衆向けに書かれた本で制空戦闘機と戦闘攻撃機を分けて議論することはあまり生産的ではないかもしれません。そこで、次善の策として戦闘用航空機の数を比較することを私は提案しました。こちらもミリタリーバランスがその定義に従ってすでに数字を用意してくれています。また、この数字には潜在的な戦力も含まれているので、より適正な比較であるともいえます。ただし、JSF氏の言う通り、ニムロッドは戦闘機とはかけ離れていますから、それを除いて比較するというのは最も妥当だと私も思います。(BH)

 太田氏が戦闘機といったり戦闘用航空機といったりブレているのが気に掛かります。私としては戦闘機相手に戦闘を出来るのが戦闘機くらいに考えてくれればいいと思っています。故にニムロッドは除外しますし、ホーク練習機も除外します。

>ところで、

>> これは防衛型の軍隊と侵攻型の軍隊の違いです。

>JSF氏はこれまで太田氏にいろいろと批判を加えてこられましたが、おそらく太田氏が同書の該当部分で主張したかったのはまさしくそのことだったのだと思います。そして、さらに太田氏が主張したいのは

>>航空自衛隊とイギリス空軍が戦闘を行った場合、航空自衛隊の圧勝に終わります。

>という考え方が必ずしも正しくないということだと私は思うのです。(BH)

 空中戦闘を行えば航空自衛隊は確実に勝てます。現代航空戦はBVR戦闘が勝利の鍵です。

<太田>
>Stocks of equipment held in reserve ・・ aircraft inventory strengths

 なるほど。
 ミリバラ2000〜2001(PP6)にもあるこの記述を見落としていました。
 ご両名、ご指摘、大変ありがとうございました。
 そうである以上は、航空自衛隊の'aircraft in excess of unit establishment holdings, held to allow for repair and modification or immediate replacement’・・これは何と名付けるべきでしょうね。「保管機」という言葉を用いるわけにはいかない(注)し、さりとて「予備機」よりも広い概念ですよね。「予備機等」とでもしますか・・を別の公刊資料で補った上で、(ミリバラの英空軍と海軍のところの機数には、この予備機等も計上されているという前提で、)改めて日英比較をすべきでした。

 (注)バグってハニーさん。この英文は、「しかし、航空機はこの限りではない。・・」という訳よりも、「なお、航空機中、・・」と訳す方がより適切だと思いますよ。
 
 さて私は、保管機はもちろん、この予備機等も、日英比較の際に機数としてカウントすべきだという立場ですが、この点については、ご異論はあるのですかないのですか。
 また、カウントすべきだという前提の下で、、航空機数を当時の、例えば防衛白書に拠って一部補正した場合、「戦闘用航空機」(除く対戦機)の日英比較はどうなりますかね。
 日本が英国の8割まで高まりやしないと思うのですが・・。

 ところで、英軍の当時のホークは、どうしてすべて、ミリバラにいう「戦闘機」に該当しないのですか。これにもぜひお答え下さい。
 この点がはっきりしないと、(本来の意味の)「戦闘機」ベースの日英比較がいつまで経ってもできませんので・・。
 (本来の意味での)「戦闘機」ベースの日英比較は止めた方がよい、というのであれば、そうしますが・・。

<バグってハニー>
>航空自衛隊とイギリス空軍が戦闘を行った場合、航空自衛隊の圧勝に終わります。(JSF)

 もう一つの可能性は自衛隊の不戦敗です。普通、無意識のうちに英軍が日本に攻め込むというシナリオを想定しますが、当然、日本が英国に攻め込むというシナリオもあります。JSF氏も認めるとおり、自衛隊には外征力がないので、そもそも戦闘が起こらない→自衛隊の不戦敗になります。

 日本が打って出る必要性に駆られることは今のところ想像しにくいですが、ありえないことではありません。今、在韓米軍はどんどん縮小していますが、米軍が完全に撤退した後に、南北朝鮮で戦端が切り開かれるといった可能性があると思います。その際、米国が何らかの政治的判断により参戦しないと判断した場合、日本は窮地に追い込まれます。たとえ、日本本土が直接被害を受けることがなくても、韓国には何万人とも言う日本人駐在員・観光客がおり、外征力を欠いた今の自衛隊の戦力ではこれを見殺しにするしかないからです。

 太田氏は著書の中で、自衛隊の戦力は「蜃気楼のようなもので」「実態は殆ど何もな」く「あまりにも弱体」などと刺激的な言葉を繰り返していますが、これは日本が他国の侵略に簡単に屈服すると言う意味ではありません。太田氏の見解はそれとは正反対でしょう。ソ連の脅威が喧伝されていたときであっても、自衛隊・米軍の方があまりにも優勢であったので、手加減しながら机上演習を続けていたことを暴露したのは太田氏自身です。
http://blog.mag2.com/m/log/0000101909/?userid=1019090&STYPE=2&KEY=%97%A4%8F%E3%8E%A9%89q%91%E0%82%CC%8A%F7%8F%E3%89%89%8FK

 兵員装甲車の数が少ない、「肝心の空母や揚陸強襲艦といった攻撃用の艦艇を全く持っていない」、といった文言から自衛隊の防御力ではなく、攻撃力・外征能力が著しく劣っていることを太田氏が問題視していることが推察されます。攻撃ヘリや戦闘機の数を俎上に載せたのもこれらを攻撃力の尺度として用いたかったからでしょう。

 例えば、英海軍にはヘリ揚陸艦オーシャンというのがあります。
http://en.wikipedia.org/wiki/HMS_Ocean_%28L12%29
 英海軍はこれに最大18機のヘリを搭載して、実際にイラク戦争で使用しています。これは、太田氏が指摘した通り、自衛隊が持っていない兵器の一つです。

 ガゼルはそれ自身は対戦車攻撃力を有していなくても、英陸軍がガゼルを対戦車攻撃の要としてカウントしていることに変わりはありません。
http://www.army.mod.uk/equipment/ac/gazelle.htm
 というのは、ガゼルはリンクスなどの攻撃ヘリと対にして対戦車戦に投入されるからです。
http://www.army.mod.uk/aac/units/3_regiment_aac/662_squadron/index.htm
 (中ほどに、リンクス6機、ガゼル6機で部隊が編成されたことが書かれています。)
 英陸軍のガゼルが対戦車ヘリではなかったとしても、太田氏が同機を「対戦車機動攻撃力」にカウントしたことは的外れではありません。形には表れずとも、日本にはなくて英国にあるものとして、このような部隊運用のノウハウも挙げられます。

 そして、日本に決定的に欠けているのは実績です。英国はこのような対戦車ヘリ部隊を湾岸戦争やイラク戦争に投入して実際に多大な戦果を上げています。すなわち、これらの兵器、部隊はすでに実戦でテスト済みです。

 対戦車攻撃力は攻撃ヘリの数比較だけでは決まりません。対戦車部隊を敵地まで輸送し展開する能力、戦闘を継続するための補給、部隊を運用するノウハウ...。これは単なる後付の解釈変更ですが、太田氏がいう「対戦車機動攻撃力」の機動とは対戦車へリ部隊を機動的に運用する能力と定義すれば、太田氏がこのような議論を尽くしておらず、それが同書の目的ではないとしても、日本の「対戦車機動攻撃力」は英国よりも劣っているという太田氏の指摘は、とりもなおさず真実を突いていることに変わりはありません。

 自衛隊の装備は防御型で攻撃力・外征力を著しく欠いていたり、自衛隊が実戦に投入されたことがないのは自衛隊の責任ではありません。それは、憲法の制約の下、政治家が行った数々の決断の帰結にしか過ぎません。太田氏の論考はそのような政治問題には触れずに、自衛隊の装備に着目してボトムアップ式に日本の安全保障における潜在的な問題点、すなわち、防御は固いが打って出ることができないという問題点を軍事にはほとんど関心がない一般大衆に対して喚起しようとした点がユニークであったと私は思います。

 さて、6年前に太田氏が訴えた問題意識はそもそも議論する価値もなく、杞憂に終わった問題ではありません。9/11、それに引き続いてアフガン、イラク戦争が起こり、同盟国からの要請を受けて、日本にはこの外征力に欠く自衛隊でどのような貢献ができるのかという難問が突きつけられました。6年の間に日本は英国に近づくための歩みをたとえ小さかろうとも確実に続けてきました。現在では、法の改正により自衛隊の主任務に海外派遣が加えられ、自衛隊はどのような任務・役割を負うべきかが政治家によって議論されています。今後はその結論に従って、自衛隊にどのような装備が必要であるかという議論に移っていくことでしょう。

 太田氏の引用が厳密さを欠いていたことは確かですが、自衛隊の装備を通して日本の安全保障の問題点を訴えようとした太田氏の著書の意義は全体として損なわれたわけではないと思います。同書が9/11の前に書かれたことに思いをいたせば、自衛隊の装備の問題点を指摘した同書は慧眼にあふれていたともいえます。おそらく、太田氏にも全く予期できなかったのは6年も経って挑発的な文言に反応したのが軍事に関心のない一般大衆という想定読者ではなく軍事愛好家であったことではないでしょうか。

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2007年06月15日
太田述正コラム#1811(2007.6.15)
<防衛庁再生宣言の記述をめぐって(続x4)>

1 始めに

 JSFさんが、一つ前の私のコラム(#1808)に反論を寄せられました。
 一読して、議論の体裁をなしていないので、大変残念に思いました。
 しかし、軍事に関する知識が特に豊富であるとお見受けするJSFさんを切り捨てるのは忍びないので、私の「脚注」や「全般的コメント」をつける形で、この反論をコラム仕立てにさせていただきました。

2 JSFさんの投稿と私の脚注

>私は<この一連のやりとりを>エンジョイしたし、ほとんど時間はとられていません。(太田)

 それは凄いですね。私は忙しい中で寝る時間を削って書かざるを得ませんでした。遅筆なんですよ(注1)。

 (注1)率直に申し上げて、遅筆過ぎます。私なら、JSFさんのこの投稿、30分もかけずに書いて、昨夜中に投稿できていたでしょう。そうしていただいておれば、本日既に配信した私のコラム(#1810)に反映できたのに、残念です。(太田)

 それでは反論の纏めをとりあえず此処に書いておきます。

>自衛隊に保管機がないからといって、それはないでしょう。(太田)

 いや、F-4ファントム12機がモスボールされていると説明している筈ですが。予備機の話もしましたよね? (注2)
http://obiekt.seesaa.net/article/44754397.html

 (注2)ミリバラの数字が間違っていると言われてしまうと、そこで私との議論は終わりです。そもそも、そんな話は、私にせずにミリバラにしてください。(太田)

>第一、そんな「戦闘機」の定義では、自衛隊のF-1だって戦闘機に入らなくなってしまいかねませんよ。(太田)

 ええ、あれ「支援戦闘機」ですから。本当ならジャギュアやハリアー、トーネードGR.4も同じ様なものです。 純粋な意味でのイギリス軍の戦闘機はトーネードF.3だけで、100機程度しかありません、って解説しましたよね。
http://obiekt.seesaa.net/article/44474371.html

 その上で対戦闘機戦が何とか出来そうな機体も含めて「戦闘機」扱いしています。するとジャギュアやF-1は何とか含められますが、練習機ホークT.1Aでは対戦闘機戦闘は無理なので、除外します(注3)。

 (注3)ホークを「戦闘機」から除外する理由がJSFさんの一方的見解だけでは話しになりません。ホークT1.A(或いはT1)が、ミリバラの定義による「戦闘機」、すなわち「空中戦のための兵器・アビオニクス・性能に係る能力を備えた航空機」にあたらない理由をきちんと説明しなければダメです。(太田)

>自衛隊は、331機変わらず、であり (太田)

 ですからそれ、予備機を含んでいない数値です。F-15が170機って全保有数じゃないことくらい、理解できていますよね? 一方でイギリス軍は予備機を含めた全保有数をカウントしている。 それは全く比較になっていません(注4)。

 (注4)ここでも、ミリバラの数字が間違っている、或いは平仄があっていない、とおっしゃっているわけで、私との議論はそこで終わりです。繰り返しますが、こんな議論はミリバラとしてください。(太田)

3 太田の全般的コメント

 JSFさんは、ミリバラがいかに信頼が置けないか、という主張をされているわけです。
 仮にJSFさんが、できるだけ英文典拠に基づき、ミリバラにおける「戦闘機」等の定義の不適切性を論証し、日本の自衛隊と英軍についての説明や数字の誤りを指摘した論文を執筆することができたとしたら、まず、僭越ながら私のブログにでも掲載させていただいた上で、翻訳者を募るなりして英語に翻訳した上で、ミリバラの発行元であるIISSに公開質問状形式で送付するに値します。
 本当にそれが実現した暁には、JSFさんの令名は世界にとどろくでしょう。
 やってみませんか。
 ただし、そのためにも、遅筆を克服されるとともに、議論の仕方(論文の書き方)を大幅に改善される必要がありますね。

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