カテゴリ: 捕鯨


太田述正コラム#1782(2007.5.27)
<英国・日本・捕鯨(その2)>(2007.7.14公開)

3 米国の裏切りと日本の捕鯨

 (1)記事Aの概要

 1982年に国際捕鯨委員会で捕鯨禁止が決まり、すべての商業捕鯨が1986年に終わることとなった。
 これは環境保護団体の全面的勝利と言ってよかったが、現在、ノルウェーとアイスランドは商業捕鯨を行っているし、日本も、科学的調査と称して捕鯨を行っている。
 一体どうしてそんなことになってしまったのか。

 日本は、絶滅に瀕していない鯨種まで捕鯨が禁止されたことに怒りを募らせていた。
 そもそも、かつて日本よりはるかに大量の捕鯨を行ってきた英国や米国から、日本が鯨を絶滅に追いやろうとしていると非難されてきたことに、日本は割り切れない思いを抱いていた。
 そこで日本は、ノルウェー、ペルー、ソ連とともに、捕鯨禁止の適用除外を宣言した。
 これは国際捕鯨委員会加盟国の権利として認められていたことだった。(ノルウェーは、この宣言を踏まえ、商業捕鯨を続けて現在に至っている。)

 しかし、日本にとって不幸なことに時期が悪過ぎた。
 先の大戦において叩きつぶした日本が、経済大国となって米国を脅かし始めたことに対する反発が米国で強まっていたのだ。

 このムードに乗ずる形で、米国の環境保護団体は、米国民、米国の政治家達、そしてレーガン政権に働きかけ、日本に対して捕鯨を止めるように圧力をかけさせようとした。
 当時、米国には、国際的な環境保全協定を遵守しないとみなした国の米国の経済水域内での漁獲割り当てを減らすことができることとした法律(The Packwood-Magnuson Amendment)と、好ましからざる国に対して経済制裁を科することができることとした法律(Pelly Amendment)があった。
 そして、日本は、アラスカ沖を中心とする米国の経済水域で年間100万トン以上の漁獲高を挙げていた。1983年には4億2,500万米ドル相当の漁獲高があったと算定されている。
 1984年末には、環境保護団体が連合して、レーガン政権に、上記2法律を日本に対して発動するように求める訴訟を提起した。
 しかし、レーガン政権はこの訴訟を無視して日本政府と交渉し、日本は上記適用除外宣言を撤回し、1988年に捕鯨を止め、米国は上記2法律を日本に対して発動しない、というラインで両国は合意した。
 1986年6月には上記訴訟の米最高裁判決が下され、米国政府は日本政府と合意を交わす権限があるとされ、環境保護団体は敗訴した。
 その翌月、日本は上記適用除外宣言を撤回した。
 この時点では、日本は本当に捕鯨を止めるつもりであったと思われる。

 ところが、米国の漁業者達は、環境保護団体等と一緒に、日本の漁法がネズミイルカ、アザラシ、鳥に危害を加えているとして、米国の経済水域から日本の漁船を閉め出すよう求めて訴訟を提起した。
 米国政府は、日本の漁獲割り当てを1985年の90万トンから、翌年には半分にし、翌々年には10万4,000トンまで削減した。そして、1988年には割り当てをゼロにした。
 日本政府や日本の漁業者達は、米国にだまされたと怒り狂った。

 数ヶ月も経たないうちに、日本は、科学的調査のための捕鯨を始めると宣言した。
 そして、彼らは、米国と英国にぶったたかれ続けてきたけれど、正義は自分達の側にあるとし、絶対に白旗を掲げることなく頑張ることを心に誓ったのだ。
 どうやら、環境保護団体はやり過ぎて、日本を心底怒らせてしまい、一旦捕鯨をあきらめた日本にUターンをさせてしまった、というのが真相のようだ。

 (2)私のコメント

 以前確か、捕鯨問題での対米抵抗こそ、意識するとせざるとにかかわらず、日本が米国の保護国的な国の在り方からの脱却を期して行った最初の動きである、と申し上げたことがあるはずです。
 この記事を読んで、皆さんもこの私の指摘はもっともだと思われたのではないでしょうか。

4 総括的コメント

 このBBCの二つの記事は、米国のメディアならぬ英国のメディアだからこそ書けたと私は思います。
 だから私は英国が好きなのです。

(完)


太田述正コラム#1781(2007.5.26)
<英国・日本・捕鯨(その1)>(2007.7.13公開)

1 始めに

 捕鯨問題については、これまで何度となくとり上げてきた(コラム#766〜768、1272、1273、1307、1313、1317、1318、1320)ところですが、英BBCが2回に渡って、日本側の視点を紹介する記事を電子版に掲載したので、ご紹介の上、私のコメントを記したいと思います。
 便宜上、後の方の記事B(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/6667797.stm
。5月24日アクセス)を、最初の記事A(
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/6659401.stm
。5月19日アクセス)より先にとり上げることにしました。

2 日本人の宗教意識と捕鯨

 (1)記事Bの概要

 日本は、殺生戒を持つ仏教の国であり、また、欧米流の動物愛護精神も普及しているというのに、どうして爆発性の銛を使った残酷な捕鯨を止めないのだろうか。

 そこで、1600年代から捕鯨が行われてきた山口県長門市の捕鯨博物館を訪問した。
 日本人は、宗教的理由から支配者達は、長く肉食を禁じてきた。
 しかし、海の幸に関しては、魚類と動物とを区別することなく、食してきており、鯨は、8,000年前からずっと食用に供されてきた。
 油だけ採って後は捨ててしまった欧米とは全く違って、鯨の油や骨は肥料にされ、肉は、陰茎を含むあらゆる部位が調理され食された、と展示されている。。
 長門の人々が捕鯨を止めてから1世紀が経つ。
 それでも、毎年、人々は伝統的な衣装をまとい、伝統的な舟に乗って、伝統的な銛をかざして金属製でスクリューで走る鯨を捕るお祭りを行っている。
 長門には、鯨の胎児の共同墓もある。
 捕った鯨が胎児を宿していると、人々は、この胎児を海の見えるお寺の境内に17世紀に設けたこの墓に葬ってきた。鯨の胎児は、生前海を見ることがなかったので、死後は毎日海が見えるようにというわけだ。
 このお寺には、亡くなった檀家の戒名が記録されている過去帳があるが、ちゃんと仏教式の戒名をつけた鯨の過去帳も残されている。
 住職は、鯨に対する人々の感謝の念から、鯨も弔いの対象になってきたと語った。
 このお寺は浄土真宗に属しており、この宗派では、僧侶が妻帯することも、信者が一定の制限の下で肉食することも認めてきた。
 この住職は、「開祖の・・<親鸞>聖人がある漁村を1207年に訪れた時、一人の漁師が妻とともにやってきて、自分達は魚を捕りそれを食べたり売ることで生きてきたが、死んだ後地獄に落ちるのだろうかと質問した。すると聖人は、もしお前達が魚達に感謝し、きちんと供養する・・この魚達が平和のうちに眠ることを祈る・・のであれば、何も心配することはない、とお答えになった。これを聞いた二人は泣いて安心した。」という話も披露してくれた。

 日本では、タイ等の他の東アジア諸国とは違って、色鮮やかな寺院があらゆる街角にあるというわけでもなければ、オレンジ色の衣を纏った僧侶達が喜捨を求めて歩き回っている姿も見られないが、それでも仏教の教えや習慣はいまなお生きている。
 私には、冒頭掲げた鯨をめぐる日本の「矛盾」について、若干なりとも理解が深まった思いがした。

 (2)私のコメント

 BBCは、同じ英国のガーディアンやファイナンシャルタイムスに比べると、日本に関し、時に杜撰な、あるいは偏見のある記事が出ることがあり、クォリティーが低いのですが、この記事はなかなか秀逸だと思います。
 ただし、若干補足すれば、

 「『後漢書』「倭伝」に日本は「土気は温かくなごやかで、冬も夏も野菜が生産され、牛・馬・虎・豹・羊・鵲はいない」 と紹介され<てい>ます。この表現は『魏史』「倭人伝」の狗奴国の記事と似ており、紋切り型で忠実な描写ではないかもしれませんし、また遺跡から骨が出るので牛馬 もいたのですが、しかし、牧畜でなく畑が目立つ風景だったことは確かでしょう。肉(シシ)も食べてはいたけれど猪、鹿(カノシシ)で、狩猟によるものが主でした。コーサンビーは、インドの菜食主義が豊かな農作物を生み出すインドの大地を抜きには成り立たないことを指摘しますが、同じことが日本の風土にもいえるでしょう。仏教の影響をうける以前から、日本には米を柱とする肉食に依存しない食文化が確立されていたようです・・。日本で最初の肉食の禁令は、天武4年(675年)4月の禁令とされています(注)が、<このように、>四つ足を食べない伝統の起源は、はるかに古い<の>かもしれません」(特に断っていない限り
http://user.numazu-ct.ac.jp/~nozawa/c/husessho.html
(5月26日アクセス)による。)

 (注)日本では、聖武天皇(〜749年)の頃、改めて魚や肉の殺生の禁令が出たことを契機に、それまで魚醤が使用されていたところ、穀醤(大豆を原料とする醤油、等)が使用されるようになったとされる(
http://blog.livedoor.jp/yoshikonbu1130/archives/cat_50003094.html
。5月26日アクセス)。

というわけであり、日本人の、肉食の忌避はもとより、あらゆる生き物への慈しみについても、仏教伝来以前からの日本人の生き様ないしは宗教意識に根ざす、と考えるべきでしょう。
 ちなみに、

 「すでに江戸時代から合理主義的な考え方が育っていて、明治初期、その土壌に福沢輸吉らが蒔いた肉食肯定の種は、すぐには芽を出さず、食肉消費量の伸びに結びつかなかったけれど、肉食を受け入れる傾向は着実に成長して、第二次大戦後、政府が栄養改善運動にのりだし学校給食で肉が出されると、流通革命でスーパーが全国くまなく商品を行き渡らせるようになったこともあいまって、肉食文化はいっきに花開いたのでしょう。」(典拠:同上)

という次第であり、戦後のこの過程で学校給食を通じて、肉食一般とともに、鯨食の習慣もまた日本全国に広まった(コラム#766、767、1698)ことを付言しておきましょう。

(続く)


太田述正コラム#1783(2007.5.27)
<英国・日本・捕鯨(続)>

1 始めに

 捕鯨問題に関する前回のコラムに対し、ある読者から批判が掲示板上に寄せられました。そこで、回答することにしました。

 このやりとりは、事柄の性格上、ただちに公開します。

<ある読者>

>日本政府や日本の漁業者達は、米国にだまされたと怒り狂った。

は見当違いというものです。
 なぜならアメリカは、日本がモラトリアムに対する異議申し立てを撤回しようがしまいがそれとは関係なく自国漁業者保護のため「アメリカ200海里内における外国船に対する漁獲割り当てを段階的に減らして行く」という方針を取っていたからです。
 少なくとも日本政府はそのことを知っていたわけでして。
 にもかかわらず「だまされた」と言って国民を煽るのはどうかと思いますね。
 このあたりのことは下記国会答弁における佐竹五六氏の発言からうかがい知ることができます。
  ↓
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/109/1230/10907301230002c.htm

<太田>

 引用された国会答弁以外の典拠をお持ちであれば、お示しいただきたいが、この国会答弁を読む限り、BBCの記事はおおむね的確である、と判断せざるをえません。
 なお、一般論として申し上げますが、国会答弁を読む場合は、通常の文献資料を読む場合以上に、行間を読むことに心がけなければなりません。
 政治家であってもそうですが、佐竹五六氏(当時水産庁長官)のような役人であれば、一層、political correctness に配意した発言を行うものだからです。
 前置きはこれくらいにして、佐竹氏がどんなことを言っているか、本当はどんなことを言いたかったかを検証してみましょう。
 
 佐竹氏の答弁:

 アメリカの200海里内の漁獲割り当ての根拠になるマグナソン法という法律がございますが、これは簡単に申し上げますと、まず資源的に見て許容漁獲量を決める、それからアメリカの国内漁業者のとる量をまず引く、残ったものを諸外国に割り当てると、こういう仕組みになっているわけでございます。ここ1、2年急速にアメリカの漁業者の漁獲能力が増大してきているわけでございまして、そのことが外国に対する割り当て量を極度に圧縮しているわけでございます。
 ・・これは日本だけが減らされているわけではないわけでございまして、韓国それからその他アメリカ200海里内に入漁しているすべての国が全部減らされているわけでございます。それは先ほど申し上げましたように、そもそも外国に割り当てる量そのものが減ってきているわけ でございますから当然のことでございまして、その中では私どもとしてはシェアは当時と同じだけ、大体7割から8割のものは確保しているわけでございます。
 ・・<要するに>、鯨の問題に関係なくアメリカは自国漁業者の割り当て量をふやし、諸外国に対する割り当て量を減らす、こういうことをやっているわけでございまして、これは鯨の問題とは直接には関係のない問題だというふうに理解すべきだろうと思うわけでございます。

→マグナソン法に関するタテマエ論を展開することで米国に配慮している・(太田)

 ・・<他方、>パックウッド・マグナソン<修正>法<(PM法)>は、・・一言で言えば、IWCの決議の効果を減殺するようなそういう行為をした国に対しては、米国200海里内の漁獲割り当て量を直ちに半減する、1年目に直ちに半減する、それから1年たってゼロにする、こういうことでございます。
 ・・<日本が調査捕鯨を開始しようとしていることに対し、>今IWCの会議に提案されました・・アメリカ<の>提案がなぜ出されたかということでございますけれども、これは専らアメリカの国内法である<このPM法>の発動を容易にするためというふうに理解することが正しいというふうに私ども判断しております。

→PM法については、タテマエ論を展開して米国に配慮する余地がないので、本当のことを言っている。(太田)
 
 ・・日本側といたしましては、<これまで、>IWCの<捕鯨>モラトリアムの決定に対する異議申し立てを撤回し、その反面として<米国によるPM法>の発動を抑え<てき>た・・わけでございま<すが、>・・私どもも国際条約で認められた権利を行使することに対して、国内法制を使って条約上認められた権利の行使を妨げようとする<アメリカの>やり方については、これは大変不当な措置ではないかということについて常に事あるごとにアメリカに対して強く抗議は申し入れております。
 しかしながら、現実にこれが有効に機能をしているわけでございま<す。>

→ここでは、マグナソン法とPM法を一括りにした上で、米国が、この2法を使って、日本に捕鯨を止めさせる目的をももって、米国の経済水域内の日本の漁獲割り当てを劇的に減らしてきたこと、日本が漁獲割り当てをゼロにされるようなことのないようにするために捕鯨モラトリアムの決定に対する異議申し立て(適用除外の宣言)の撤回に追い込まれたこと、をほのめかすとともに、そのような米国のやり口に対し、率直に憤りを表明している。(太田)

 私どもとしてはもちろん訴訟で争うというような方法が全くないわけではございませんけれども、対抗する手段を持たないわけでございます。また、200海里内の漁業資源をどのように使うかはまさに沿岸国の権利であるという国際慣習も確立されているわけでございまして、大変私どもとしてはアメリカのやり方は不当ではあると思いますけれども、有効な対抗手段を持たないわけでございます。一方、・・中に<はアメリカの200海里内の漁業に>ほとんど100%・・依存している漁業者もいるわけでございまして、それらの漁業者のこともまた考えなければならないということも御理解いただけるのではないかと思います。
 それから、さらに申し上げますと、もう一つアメリカとの関係ではジョイントベンチャーという方式での我が国の加工母船がアメリカ200海里内で操業してい るわけでございます。これは御承知のようにアメリカの漁船から魚を洋上で買い付けてそれを加工する、・・これの根拠になっております日米漁業協定がことし<(1987年)>の12月で失効するわけでございます。・・これは<協定>延長交渉に今入っているわけでございますが、この延長・・はアメリカの上下院の承認が必要になるわけでございまして、そのことに対してどのように影響するかというようなこともまたこの問題を判断する際の一つの材料であるわけでございます。

→米国の経済水域内での日本の漁業を維持したいという思惑から、捕鯨問題で強く出られない日本の苦衷を、おおむね率直に吐露している。(太田)

 <さて、>我が国が捕獲調査を実施いたしました場合には、さまざまな経過から判断いたしましてPM法が発動される公算は極めて大きいわけでございます。そのような事態を招きますことは、日米両国にとって漁業関係はもとより日米関係全般にとって大変不幸なことでございます。したがいまして、私どもといたしましては、当然の条約上の権利の行使でございますけれども、なおその調査の実施の手順あるいは方法について検討を加え、国際的な支持を我が国の捕獲調査の実施について得るようにし、一方アメリカに対しても一定の自制を求めてまいる所存でございまして、鯨か200海里内の漁獲かと 単一に割り切るのではなくて、何とか両方生かす道はないか、・・かように考えているわけでございます。

→米国の経済水域内での日本の漁獲割り当てがゼロにならなければ、調査捕鯨は開始しないこともありうること、そして漁獲割り当てがゼロになれば調査捕鯨を開始すること、をほのめかしている。(太田)

・・<いずれにせよ、商業捕鯨>の存続を図るために調査をやるということは、絶対にこれはIWCでは通らないわけでございまして、もしそういうふうな印象を与えるとすれば、かえって疑似商業捕鯨であるという非難を招くわけでございますので、科学者の意見もよく聞きましてその客観的必要性があるかどうかということについて精査していきたいと思います。

→開始しようとしている調査捕鯨の実態が商業捕鯨であることを暗に認めている。(太田)

 先ほど来・・カナダの学者の・・北米における文化価値を他の社会に押しつけることは間違っている<とする>・・論文を引用されて先生御指摘ございまして、まことに私どもも全く同じ考え方でございますが、そのような非常に不当な見解を主張する国とも我々は漁業の面においてもさまざまな関係をしていかなければならないわけでございまして、粘り強くそれを是正する、させるということで、お互いに対話を断つというような道は選ぶべきではないのではないか、かように考えております。

→米国に対する根本的不信感を率直に表明している。(太田)

 以上、見てきたように、佐竹氏の答弁は、役人の答弁としてはめずらしく、「行間を読む」必要がほとんどないくらい率直な答弁ですが、その答弁から、

>アメリカは、日本がモラトリアムに対する異議申し立てを撤回しようがしまいがそれとは関係なく自国漁業者保護のため「アメリカ200海里内における外国船に対する漁獲割り当てを段階的に減らして行く」という方針を取って<おり、>少なくとも日本政府はそのことを知っていた

という投稿子の主張を読み取ることは到底できません。

 いずれにせよ、米国の経済水域内での日本の漁獲割り当てがゼロとなったことを受けて、佐竹氏の「警告」通り、低次元で申し上げれば、米国の経済水域で失った魚を捕鯨の再開で取り戻すため、高次元で申し上げれば、米国の背信行為に対する異議申し立てのため、日本は捕鯨を再開(調査捕鯨を開始)して現在に至っているわけです。

 よって、

><太田さんが>「だまされた」と言って国民を煽るのはどうかと思いますね

 というご指摘はあたりません。
 それはともかく、BBCが、捕鯨問題で日本は米国にだまされたのだと示唆することで、英国民、ひいてはアングロサクソンの人々を煽っていることは確かです。
 捕鯨禁止を叫ぶアングロサクソン陣営が内部分裂を始めたこと、そしてそれを英国のBBCが始めたことが面白いと思ったので、BBCの2記事をご紹介させていただいた次第です。

太田述正コラム#13202006.6.26

<捕鯨再論(続々)(その4)>

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

コラム#1318・捕鯨再論(特別篇)に関し、ハンドルネーム「くじら君」から以下のような問題提起がありました。(於ブログ掲示板。ホームページの掲示板に転載済み。)

(引用始め)

>鯨類の中には増えすぎている種類もある、という点については、科学的には決着がついている、と言ってよいでしょう。

その種は南極海のミンククジラのことですか?

もしそうでしたら「増えすぎている」かどうかはまだ科学委員会での合意はありませんけど。

「半減」を示唆するSOWERのデータがあるくらいですからとても「増えている」なんて言えないと思います。

それから即死率のことですけども日本の場合はノルウェーとは違って(耳垢栓欲しさゆえ)頭は狙わないので心臓を狙うわけですが「頭は絶対ダメ」という意識が働くためどうしたって心臓より下の腹などに当たる確率が高くなってしまい当然腹なんかでは即死しませんからクジラはその分長い間苦しんでのた打ち回るいうわけです。

したがって日本の即死率はノルウェーのそれの約半分ってことになってしまいます。

(引用終わり)

後半の即死率の方の話から行くと、「爆発後、鯨が瞬時に動きを止める場合が20%ないし40%しかなく、数秒から数分後に動きを止める場合が80%ないし60%ある」(コラム#1318)と申し上げた、20%80%という数字はノルウェーの数字であり、40%60%という数字は、日本の数字です。どうして日本の数字がノルウェーより低く出るのか、おかげさまで理由がよく分かりました。

さて、「鯨類の中には増えすぎている種類もある、という点」についてですが、セント・キッツを含むカリブ海島嶼諸国6カ国が共同提案して採択された例の決議の中にthe Commission adopted a robust and risk-averse procedure (RMP) for calculating quotas for abundant stocks of baleen whales in 1994 and that the IWC’s own Scientific Committee has agreed that many species and stocks of whales are abundant and sustainable whaling is possible; ‘というくだりがあり(http://www.iwcoffice.org/_documents/commission/IWC58docs/Resolution2006-1.pdf前掲)、IWC自身がひげ鯨(baleen whale)については豊富(abundant)であるとしていると指摘したことがあり、かつIWCの科学委員会(Scientific Committee)が鯨の様々な種類が豊富であるとしていると指摘しているのは、事実誤認だ、ということですか?

この点については、本篇の本文中で触れる米国政府のスタンスも参照してください。

5 今後の展望

 来年のアンカレッジで開催されるIWCで議長国となる米国の今次IWC代表は、科学的調査の名の下で、この5年間で1,000頭も捕鯨頭数が増えたという状態をそのまま維持するわけにはいかないとし、捕鯨は解禁しつつ、種類ごとにきちんとした捕鯨枠を設定して獲りすぎの鯨種が出ないようにすべきであることを示唆しています。

 日本としても望むところです。

(以上、http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/5100936.stm6月21日アクセス)による。)

しかし、捕鯨禁止派のEUの3カ国の代表達はEU内で、そして同じく捕鯨禁止派のブラジル代表は中南米内で、それぞれIWC加盟国を増やして、反捕鯨国が再びIWCで多数を回復できるよう努力する、と語っています。

EU15カ国のうち14カ国がICWに加盟していて、うち1カ国しか捕鯨解禁を支持している国はありません。EUへの新規加盟が予定されている10カ国のうち、既に3カ国はICWに加盟済みだが、残りの国にも加盟を働きかけていく、というのです。

ブラジルもまた、アルゼンチンと連携しつつ、中南米内でICW加盟国を増やそうとしており、反捕鯨国による多数奪還を楽観視しています。

(以上、http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/5100578.stm(6月21日アクセス)による。)

日本を中心とする捕鯨解禁陣営も、当然同様の努力を続けるでしょうから、結果がどうなるかは分かりませんが、大国だろうがミニ国家だろうが、また海洋国ならまだしも内陸国まで、あらゆる国に平等に一票が与えられる、というIWCの意志決定システム・・これは国連と同じですが・・には問題ありと言わざるをえません(注8)。

(注8)今次IWCで最後に上程された決議案は、開催国のセントキッツ提出の、742,000米ドル(うち25万米ドルは警備経費)の追加資金供与を求めた決議案であり、開催国がほとんどの経費を負担するという慣例に反するものだけに、採決の結果は3030で、否決された。ミニ国家がIWCに加盟していることによる悲喜劇だと言えよう(BBC上掲)。

 来年のICWも目が離せそうもありませんね。

太田述正コラム#13182006.6.25

<捕鯨再論(特別篇)>

 (太田述正コラムの有料講読申込者数は74名に達しました。次の目標の85名を射程にとらえた、と言いたいところです。有料購読者数が今増えることが、将来の購読料の低減、ひいては全面的無料制への復帰を可能にします。皆さん、どうかご協力を!)

1 捕鯨問題の残された論点

 鯨類の中には増えすぎている種類もある、という点については、科学的には決着がついている、と言ってよいでしょう。

 残された論点は、捕鯨は残酷か、鯨類は高等哺乳類か、という二つです。

 

2 捕鯨は残酷か

 現在の捕鯨は、基本的に、先端に爆薬を仕込んだ銛(explosive grenade harpoon)を鯨に打ち込み、1フィートほど体内に食い込んだ所でこの爆薬を爆発させて鯨の脳に衝撃を与えて鯨を殺すやり方をとっています。

 問題は、爆発後、鯨が瞬時に動きを止める場合が20%ないし40%しかなく、数秒から数分後に動きを止める場合が80%ないし60%あるという点です。後者の場合、通常ライフルで鯨の脳を撃ち抜いてトドメを指しています。

 Whalewatch等の鯨愛護団体は、この間、鯨は激痛に襲われているはずであり、残酷なので捕鯨は禁止すべきだ、と主張しています。

 これに対し、捕鯨国であるノルウェーのある女性の研究者は、鯨は爆発によって瞬時に死亡するが、脊髄反射で動き続ける場合があるだけだ、という仮説を提示しています。というのは、アザラシ(seal)の場合は、既にそのことが証明されているからです。問題は、鯨の場合、巨大でしかも冷水域に棲息しているだけに、このことを証明する実験を、人間が鯨に機器をとりつけることで行うこと大きな危険が伴うことです。

(以上、http://www.slate.com/id/2143986/前掲、及び

http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/3542987.stm

http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/3847167.stm(どちらも6月23日アクセス)による。)

 それにしても、この議論に日本の科学者が加わっていないようなのは残念です。

3 鯨類は高等哺乳類か

 上記論点は、少なくとも欧米人の観点からは、鯨類が高等哺乳類であるかどうか、という論点と深く関わっています。

 鯨類が地球の主人である人類に近い存在であるならば、殺してはならないし、いわんや残酷な殺し方をしてはならない、というわけです。

 私に言わせれば、こんな理屈はナンセンスです。

 皆さん、われわれがいつも食べている動物の中で豚が一番頭がよいということはご存じでしたか?

 その豚を、体を回転させることができないどころか、前と後ろに一歩ずつしか動けない狭い、コンクリート床の空間に閉じこめ、雌豚であればその状態で子豚を生ませ、子豚を取り去って、またただちに妊娠させる、ということを繰り返し、最後は畜殺しているのです。

 (以上、http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2006/06/19/2003314449(6月20日アクセス)による。)

 このような、豚の生涯にわたる扱いの方が、鯨の殺され方よりはるかに残酷だと思いませんか?

 そこで、動物愛護運動が特に盛んなEUでは、食用の豚の飼育方法の改善に取り組んできていますが、改善し過ぎると豚肉の国際競争力の大幅な低下につながることから、遅々として進んでいません

http://lin.lin.go.jp/alic/week/2000/sep/454eu.htm。6月21日アクセス)。

 さて、進化学的に言うと、鯨は豚や牛と同じグループに属し、他方、犬や猫は馬やコウモリと互いに近いのですが、これらの動物はいずれも人間が属する霊長類とは遠く離れた存在です

http://j.peopledaily.com.cn/2006/06/20/jp20060620_60743.html

http://jp.encarta.msn.com/encnet/refpages/search.aspx?q=%e3%83%96%e3%82%bf(どちらも6月21日アクセス))。

 鯨類は豚よりも更に頭が良いのかどうか、つまびらかにしませんが、動物愛護団体が鯨の殺し方が残酷だと言うのであれば、それより前に、いや少なくともそれと平行して、豚の飼育方法の抜本的改善に取り組んで欲しいものです。

太田述正コラム#13172006.6.25

<捕鯨再論(続々)(その3)>

 (24日中に有料購読申込者数が72名になりました。しかし、25日午前0時を回ってから、1600現在まで、有料講読申し込みがありません。有料化の目的は、コラムに係る経費の確保に尽きます。次の目標は85名、そして最終目標は110名(個人会員ベース)の有料購読者の確保です。この最終目標を超過達成できたり、コラムがらみの仕事で定期的な収入が入ってくるようになったりしたら、来年以降の購読料はその分だけ値下げすることをお約束します。将来的には全面的無料講読制への復帰を目指しています。まだ迷っておられる方は、有料化のこのような趣旨をご理解いただき、ぜひとも

ohta@ohtan.net

宛有料講読を申し込まれるようお願いします。)

 注目すべきは、この決議が、「食糧安全保障と国家発展のために資源を利用することに関する主権に係る政府の政策を動かそうとして、国際的なNGO諸団体のいくつかが脅しを用いた利己的なキャンペーンを行っていることは認められず、これを排斥する」と述べていること

http://www.slate.com/id/2143986/。6月20日アクセス)です。

 これは単なる修辞ではなく、今次IWC開催国のセント・キッツ・・この決議の共同提案国でもある・・は、捕鯨禁止を唱えるNGOに対し、断固たる対応を行いました。

 グリーンピースが、日本の捕鯨船の進路妨害をして衝突事件を起こした船でセント・キッツの港に入港しようとしたところ、セント・キッツ当局は安全保障上の理由でこれを拒否したため、この船は洋上を余儀なくされました。

 このグリーンピースが、上記決議が採択された翌日の20日に、この船から船外機付きのゴムボートで砂浜に乗り付け、日本等による毎年2,000頭近い捕鯨に抗議して鯨の墓標に見立てた(このゴムボートで運んできた)プラカードを砂浜に立てようとした時には、催涙ガスや機関銃を携行した警察隊がグリーンピース関係者10名・・その大部分は空港から正規に入国していた・・を公務執行妨害で逮捕し、密輸品とみなされたプラカードを踏みつけて壊しました。

 逮捕の理由を聞かれると、警察の責任者は、「ゴミが浜に打ち上げられたので、集めてゴミ廃棄場に投棄したまでのことだ」と答えたものです。

(以上、http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-whales21jun21,1,6910440,print.story?coll=la-headlines-world(6月22日アクセス)による。)

4 逆転勝利の背景

 日本の外務省は無能でやる気がないかも知れないけれど、日本外交・・この場合は農水省が中心となった・・も結構やるじゃないか、と思われた方がおられそうですね(注6)。

 (注6)農水省(水産庁)は、第一に、カリブ海島嶼諸国等に対し、漁業に係る援助を専門家も派遣して熱心に行うことによって捕鯨解禁陣営を増やしてきた

http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/5088132.stm。6月19日アクセス)

    し、第二に、科学的調査目的の捕鯨を次第に増やすことによって補撃禁止陣営に圧力をかけてきたし、第三に、今次IWCでは、科学的調査目的の捕鯨に余り目くじらを立てるようなら、次回のIWCで、エスキモーによる少数の捕鯨に対するこれまでの日本側陣営の賛同を撤回する、と言明してゆさぶりをかけた。

 遺憾ながら、必ずしもそうではありません。

 日本の宗主国たる米国がブッシュ政権であり、捕鯨に係る日本の「独自」外交を黙認してくれていたからこそ、上記決議の採択に至った、というのが実態なのです(注7)。

 (注7)日本が、(同じくIWC加盟国である)ノルウェーとちがって、商業捕鯨ができない立場に追い込まれたのは、宗主国米国の裏切りによることは、以前(コラム#766で)指摘したところだ。

 

ブッシュ政権は、米国の歴代政権中、最も科学を無視する政権であり、とりわけ環境問題に関心が薄いことでも知られています。

 そうだとすれば、捕鯨問題は、環境問題(鯨類の保全)ではなく文化の問題(高等生物たる鯨を殺すなv.特定の食物の摂取を禁じるな)であるだけに、ブッシュ政権は一見、鯨が種類によっては増えすぎているという科学的知見など無視して、捕鯨禁止をごり押ししそうに思えます。

 しかしそうはならない理由があるのです。

 第一の理由は、対テロ戦争に大わらわのブッシュ政権にとって捕鯨問題は、(対イラン経済制裁等を含め、)対テロ戦争遂行に当たって何でも言うことを聞く保護国日本が、米国にとって優先順位が極めて低い捕鯨問題で「独自」外交を行うことくらいは大目に見ることにしたからです。

 第二の理由は、石油業界寄りのブッシュ政権が、鯨に苦痛を与えているとして、エアガンによって地震波を起こして石油や天然ガスの埋蔵場所を探知することを禁止しようとしている各種自然保護団体を煙たく思っているからです。しかもブッシュ政権としては、エアガンの使用禁止は、潜水艦探知機器であるアクティブ・ソナーの使用禁止にまで発展しかねない、と懸念しているふしがあるのです。

(以上、特に断っていない限り

http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-whales22jun22,1,24561,print.story?coll=la-headlines-world(6月23日アクセス)による。)

太田述正コラム#13132006.6.23

<捕鯨再論(続々)(その2)>

 (有料申込者数は、6月231800現在68名です。増加ペースがかなり落ちてきました。それでも次の目標クリアまで後17名です。他方、無料登録者数は1364名と、有料化宣言直前まで後1名まで回復しました。ちょっと無料購読者にサービスしすぎたかもしれません。「続」「続々」等は同一シリーズとはみなさないことととし、しかも一週間に「2回以上6回以下」のコラム(「新規」コラムではない!)配信しか保証しない、そして新規シリーズは全コラムを(週「2回以上6回以下」の範囲内で)配信する、というラインに再々度無料配信方針を変更させていただきます。)

しかし、一体どうして日本側は最初の2回の投票で敗れたのでしょうか。

 BBC上掲は、「日本のこれまでの同盟国のうち現れなかった国があったし、何カ国か捕鯨禁止陣営に寝返った国があった」と指摘していましたが、それがどの国かがわかりません。

 せっかく日本の新聞では唯一特派員を派遣した讀賣(注1)も、「IWC加盟国は70か国だが、分担金を支払わないなどで投票権を失った国が捕鯨支持国に多かった模様だ。」http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20060617it02.htm。6月18日アクセス)と頼りない限りです。

 (注1)ただし、共同と時事は特派員を派遣している。

 翌日になってようやく少しはっきりしてきました。日本側陣営と目されてきた中共・韓国・ソロモン諸島・キリバスが棄権に回ったというのですhttp://www.guardian.co.uk/japan/story/0,,1800662,00.html。6月19日アクセス)。中共と韓国は、ここでも、日本の足をすくうという快感に抗しきれなかった、ということでしょうか。

 その頃、「初日の終了時点で、捕鯨支持派とされるガンビアやトーゴが新たに分担金を支払って投票権を認められたため、今後の採決は捕鯨国に有利になる可能性があるとの見方が出ている。」というやや明るい兆しがみえて来ました(

http://www.sankei.co.jp/news/060618/kok070.htm、及びhttp://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20060619/mng_____kok_____003.shtml(どちらも6月19日アクセス)(注2

(注2)両紙とも共同電をそのまま掲載したもの。

3 日本側逆転勝利

 その後、日本側は更に2個の決議案で敗退し、4連敗となった

http://www.taipeitimes.com/News/world/archives/2006/06/20/2003314606。6月21日アクセス)

ところで、18日に起死回生の歴史的な大逆転が起こりました。

 今次IWC開催国であるセント・キッツを始めとするカリブ海の6島嶼国が共同提案した、商業捕鯨再開を促す決議案が賛成33、反対32、棄権1(中共)で可決されたのです(注3)。

 (注3)IWCの全加盟国は70カ国だから、出席していない国が4つあるわけだ。

 この決議は、1986年における商業捕鯨の禁止は鯨の頭数が回復するまでの暫定的な措置であったところ、「もはやその必要性はなくなった」とし、IWCの調査の結果は、「鯨が魚類を大量に捕食していて、沿岸諸国は食糧安全保障上の問題に直面している」ことから、商業捕鯨は再開されるべきである、と宣言したものです。

 この決議案の趣旨説明の際、共同提案6カ国の代表は、捕鯨の禁止は「新植民地主義」の一形態であって、富める諸国が、小さい島嶼国家群の経済発展と自然資源活用を妨げる結果となっている「感情的な」議論を押しつけようとしてきた、と怒りをこめて語りました。

 このうちのグレナダの代表に至っては、自分達の祖先は奴隷としてカリブ海の島嶼に拉致されてきてサトウキビ畑でこき使われ、塩漬けの魚を奴隷主から与えられ、それを食うように強いられたものだが、どの面下げて今度は鯨をとるなとか食うなと言うのか、と捕鯨禁止諸国代表を難詰するという激しさでした。

 この決議採択に決定的な役割を果たしたのがデンマークでした。

 デンマークは、それまでの決議案ではことごとく捕鯨禁止派の側に立って票を投じてきたのですが、デンマーク領であるグリーンランドやファーロー諸島(Faeroe Islands)の漁民の立場(注4)に配意したものと見られています。

(以上、http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-whales19jun19,1,6578173,print.story?coll=la-headlines-world(6月20日アクセス)による。)

 (注4)ノルウェーは商業捕鯨を続けてきているし、アイスランドは日本同様調査目的の捕鯨を実施していることを思い出して欲しい。ノルウェーもアイスランドもグリーンランドやファーロー諸島の隣組だ。

 商業捕鯨再開のためには、75%の賛成票が必要なので、上記決議が採択されからといって、実態が何一つ変わるわけではありませんが、その象徴的な意味には計り知れないものがあります。

 ロサンゼルスタイムスだけでなく、英米の主要メディアは軒並み特派員をIWCに派遣しており、センセーショナルにこの「大敗北」を報道しました(注5)(典拠省略)。

(注5)特派員を送っていなかったのは、NYタイムスくらいだ(ロイター電を使用)。

太田述正コラム#13072006.6.20

<捕鯨再論(続々)(その1)>

  (コラムの有料講読を申し込まれた方の数は、6月192330現在で26名になりました。更なるお申し込みをお待ちしています。)

1 始めに

 ドイツで開催されているサッカーのワールドカップでは、日本の悪戦苦闘が続いています。

 しかし、平行してもう一つの死闘が日本を主役として続けられています。国際捕鯨委員会(IWC)での捕鯨解禁派と捕鯨禁止派との間の死闘です。

 どちらも、日本(側)が勝とうが負けようがわれわれが命までとられる話ではありません。

 しかし、前者と違って、後者の帰趨には世界史的意味がある、ということは、私がつとに申し上げてきた(例えばコラム#1273)ところです。

 それにしては、前回私が(コラム#1273で)捕鯨問題をとりあげた以降も、日本側に劣勢に立たされたという危機意識から、英米のメディアが一貫して本問題に強い関心を持ち続けた(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/06/04/AR2006060400635.html(6月6日アクセス)、http://observer.guardian.co.uk/world/story/0,,1794987,00.html(6月11日アクセス)、http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/5066538.stm(6月12日アクセス)、http://www.cnn.com/2006/WORLD/americas/06/15/whaling.ap/index.html(6月16日アクセス)、及びhttp://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/5080508.stm(6月16日アクセス))というのに、日本のメディアの本問題への関心の低さは際だっていました。

2 日本側敗北?

元凶はわが外務省ではないか、と思い始めたのは、カリブ海のミニ国家の一つであるセントキッツ(St. Kitts )で開催された今回のIWCで行われた最初の採決の結果が出る直前に上梓されたロサンゼルスタイムスの記事(http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-whales16jun16,1,3235831,print.story?coll=la-headlines-world。6月17日アクセス)を読んだ時でした。

というのも、捕鯨禁止派の切り込み隊長といった趣のある豪州のキャンベル(Ian Campbell)環境相が、新しくIWCに加盟した太平洋のミニ諸国に対し、日本側に同調すれば、豪州は観光ボイコットをするぞ、と露骨に恫喝していたというのに、わが外務省筋は記者の質問に対して、「われわれは日本の会社はもはや商業捕鯨には興味を持っていないと思っている。また、捕鯨が日本の文化の一部だといった議論をしているわけでもない。考えても見て欲しい。これは第三次世界大戦が起きるような問題ではない。捕鯨はトヨタがそうであるような意味では、日本経済にとって重要ではない。」などと評論家のような答え方をしていた(ロサンゼルスタイムス上掲)のですから・・。

これでは、せっかくIWC日本代表団の一員である森下丈二水産庁資源管理部遠洋課課長補佐(捕鯨班長)(京大卒・ハーバード大学院卒)(http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/%90X%89%BA%8F%E4%93%F1/list.html。6月19日アクセス)が英BBCにまで生出演して、「多くの日本人は欧米人、つまり外の世界が、彼らの感情的な価値観を日本に押しつけていると考えている。だから多くの日本人は、欧米人は弱い者いじめで傲慢だと考えている。・・豊富な鯨類は適度に活用しつつ少なくなっている鯨類は保護する、ということに何ら問題はないとわれわれは思っている。これは他の野生動物や漁業資源の保全・管理と全く同じ話なのだ。」だから、「科学と恐らくは国際法」は日本側に味方している、と力説(http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/5085730.stm。6月17日アクセス)しても、どうしようもないではありませんか。

こんな外務省なら、ない方がマシです。

案の定、捕鯨禁止派と捕鯨解禁派の共通の票読みに反して、IWCの出だしの二つの投票・・海に棲息するイルカ等の小型哺乳類をIWCでは扱わないことにする決議案と、秘密投票制を導入する決議案のいずれの採決でも日本側は敗北してしまいました(BBC上掲)。

昨年のIWCではすべての決議案で日本側(捕鯨解禁派)は敗北こそしたものの、捕鯨禁止派との票差はほとんどなくなっていました。しかも、その後四つの国がIWCに新規加盟し、うち三つの国は日本側寄りだとされていた(BBC上掲)にもかかわらず・・。

太田述正コラム#12732006.6.3

<捕鯨再論(続)>

1 始めに

 ガーディアンとワシントンポストにも捕鯨問題の記事が出たので、追加しておきます。

2 ガーディアン

 ガーディアンの記事(台北タイムス(http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2006/06/02/2003311320。6月3日アクセス)に転載されたもの)は、客観的記述に終始しています。

この記事は、英国、ニュージーランド、オーストラリア、そして米国が率いる反捕鯨陣営は、今年の国際捕鯨委員会の帰趨について悲観的である、と記しており、反捕鯨運動がアングロサクソン諸国の産物であることを改めて思い出させてくれます。

 興味深いのは、この記事の次のくだりです。

 「昨年のIWC総会における惜敗の後、日本は<西インド諸島中の>セントキッツで開催される今年のIWC総会での敗北を回避するため、大変な努力を行った。先月、日本は東京で、ノルウェー等の捕鯨解禁派の諸国を集めて秘密の会合を主催した。これは、これまでIWC総会に経費の点から出席を見合わせてきた弱小諸国の多くを、今次カリブ海における総会に出席させるための戦術を準備するためだった。日本はまた、ベリーズ・マリ・トーゴ・ガンビア、等の、最近IWCに加盟したけれどこれまで投票したことがない諸国に経済援助を増額してきたことが知られている。今年早々、日本は捕鯨解禁派である、太平洋の島国のツバルに100万米ドル以上の経済援助を行う約束をしたが、その後、同様の約束をナウル・キリバス、等の太平洋の極貧諸国にも行った。更に先週、日本はその他の太平洋諸国に対し、巨額の経済援助案を提示した。また、日本は昨年、7つのアフリカ諸国と8つのカリブ海・中央アメリカ諸国の国家元首を東京に招待している。このすべてが日本に右に倣えした形でセントキッツで投票することが期待されている国々だ。更に、昨年日本から、少なくとも総額3億米ドルの経済援助がアンティグア・ドミニカ・グレナダ・パナマ・セントルシア・セントヴィンセント/グレナディン・セントキッツ/ネヴィスに供与された。これらの経済援助の多くは、これら諸国の漁業の振興のためと謳われているが、日本が一貫して鯨が<増えすぎたことが>漁獲量減少の原因であると訴えてきたことが思い起こされる。」

 この伝で行くと、日本の小泉政権が、インド洋とイラクに自衛隊を派遣した上に、在日米軍の再編に3兆円もの大盤振る舞いを「約束」したのも、反捕鯨陣営の盟主たる米国のブッシュ政権を捕鯨解禁問題で日本に強く当たれないようにするための深謀遠慮であった、ということになるのかもしれませんが、さすがにこの記事は、このことは書いていません。

 いずれにせよ将来、仮に日本が米国から「独立」することがあるとすれば、後世の英米の歴史家は、その始まりは、日本の捕鯨委員会での多数派工作とその成功であった、と評することになりそうですね。

3 ワシントンポスト

 ワシントンポストの記事(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/06/01/AR2006060101684_pf.html。6月3日アクセス)は、一見客観的記述に終始しているようではあっても、その実捕鯨解禁派に好意的な内容になっています。

 それは一つには、米国の大学教授を登場させて、捕鯨の全面的禁止は、科学的必要性ではなく、政治的信条に基づいて断行されたのであって、「この全面禁止は、恒久的なものとして提案されたわけではなかった。・・科学に基づいて到達された結論ではなかった。このような結論に到達したのは、鯨は特別な動物であって、何が起ころうと殺されるべきではない、というプロパガンダを信じ込んでいる人々が沢山いたからだ。」と言わせているからです。

 そしてもう一つには、ノルウェーの漁業・沿岸省の幹部に、バイキングは紀元900年代から捕鯨を行ってきたということが史料で裏付けられており、「アングロサクソン世界の文化的な好みによって支配されるわけにはいかない」と言わせているからです。

 アングロサクソンの気まぐれでグローバルスタンダードになったものが、アングロサクソンが正気に戻って撤廃ないし改変される、というままある話ではなく、アングロサクソンが打ち立てたグローバルスタンダードを、日本を中心とする非アングロサクソン諸国が結束してその座から引きずり下ろす、という珍しい出来事が、今まさに起ころうとしているわけです。

 アングロサクソン、就中米国が打ち立てたグローバルスタンダードの中には、鯨の話以外にも不条理なものはいくらでもあります。

 日本は、これらの鯨以外の不条理なグローバルスタンダードの撤廃・改変に向けてもイニシアティブを発揮することが世界中から期待されているという自覚を持ち、この期待に応えるためにも一刻も早く米国から「独立」すべきなのです。

太田述正コラム#12722006.6.2

<捕鯨再論>

1 始めに

 一年ほど前に(コラム#766??768で)捕鯨問題を取り上げたところです。

 この6月中に開催される国際捕鯨委員会(International Whaling CommissionIWC)の総会にひっかけて、英米系のニューヨークタイムス、アジアタイムス、クリスチャンサイエンスモニターの三紙が、相次いで捕鯨問題の論考や論説を載せたのですが、三者三様で興味深いので、ご紹介しましょう。

2 ニューヨークタイムス

 ニューヨークタイムスは、スェーデン語の雑誌の元編集者なる人物・・実在の人物かどうか疑問がわく・・の、次のような論考を掲載しました。

 この論考は、「鯨を保全しつつ、同時に食べよう」という挑発的な見出しの下で、「1985年から実施されてきた・・捕鯨の・・全面禁止は多大なる成果を挙げた。・・鯨には37種類あるが、<もはや>そのうち7種類しか絶滅の危機に瀕していない。しかも、本当に深刻な状況にあるのはそのうちの2種類だけだ。・・すべての鯨種の保全について心配しなければならない状況ではなくなった。」としています。

(以上、http://www.nytimes.com/2006/05/23/opinion/23armour.html?pagewanted=print(5月24日アクセス)による。)

これは、捕鯨禁止運動の総本山とも言うべき米国で、ついに日本の主張に全面的に賛同する論説が出現した、という意味で画期的なことだと言えるでしょう

ニューヨークタイムスが日本に対するバイアスを克服しつつあるのではないか、と以前(コラム#10171018で)記したところですが、この論説を見てますますその感を深くしています。

3 アジアタイムス

 アジアタイムスは、英紙インディペンデント等に寄稿しているという触れ込みの英国人らしき人物の論考を掲載しています。

 これは、捕鯨解禁派へと改心すべきかどうか、ハムレットのように思い悩んでいる、といった風情の論考です。

 この論考が評価できるのは、日本人が捕鯨全面禁止派を食物文化帝国主義者(culinary imperialistsとみなしていることや、日本の水産庁が、鯨、とりわけミンク鯨は増えすぎている、と考えていることを紹介するとともに、日本の捕鯨関係業者のことをどんなに客観的に書いても、英国での編集段階で、狂った野蛮な日本人というステレオタイプに沿った形で書き直されてしまうとか、英国の新聞に日本の捕鯨関係業者の記事が載ったところ、その業者の所にEメール攻勢がかけられ、サイトの閉鎖に追い込まれたことがある、等と正直に指摘している点です。

 しかし、次のような点はいただけません。

 今度の捕鯨委員会掃海で、調査捕鯨と称して捕鯨をやっている日本とアイスランド、それにそもそも捕鯨禁止に最初からコミットしていないノルウェーの三カ国が、参加国の過半数の票集めに成功しそうであり、そうなれば、三分の二以上の票が必要な捕鯨解禁はできなくても、秘密投票制の導入等、捕鯨解禁に向けてのイニシアティブをとれるようになる、と指摘し、それがあたかも日本が、経済援助攻勢によって発展途上の小国の票集めをしたためだけのように書いたり、鯨が増えているという水産庁の見解には疑問がある、と何の根拠も示さずに書いたりしているからです。

(以上、http://www.atimes.com/atimes/Japan/HF01Dh03.html(6月1日アクセス)による。)

4 クリスチャンサイエンスモニター

 捕鯨全面禁止に依然固執する論説を載せたのがクリスチャンサイエンスモニターです。

 「十分まだ頭数が回復していないというのに、IWCが鯨類の虐殺(slaughter)を認める可能性があることは、まだ反捕鯨諸国で大騒ぎにはなっていない。しかし、海洋の健康維持に係る鯨の重要性に鑑みれば、大騒ぎをしてしかるべきだ。もし国連総会や米国がすみやかに行動をとらないのであれば、日本商品の不買運動を消費者が行う必要がある。・・<日本の>財界の首脳達も時々反対しているところの日本におけるナショナリズムの復活が、<日本の>捕鯨解禁への取り組みの背後にあるのだろう。・・文化的理屈をこね、<IWCの>弱小加盟国を札束攻勢でなびかせてきた日本による長年におよぶ捕鯨解禁への努力に鑑みれば、鯨の頭数の状況に関する事実と論理による議論がIWCの動向を決定することにはなりそうもない。・・どちらかが<この勝負から>降りなければならない。より降りやすい日本の方が降りるべきだ。」

(以上、http://www.csmonitor.com/2006/0602/p08s02-comv.html(6月2日アクセス)による。)

これは、日本が捕鯨に係る国際ルールを一貫して遵守してきたにもかかわらず、日本が米国内の多数意見に従わないとして、それこそ「事実と論理」もものかわ、日本に対する制裁の発動を国連や米国政府に求め、国連や米国政府がすみやかに動かないのなら、米国人は日本商品の不買運動を行うべきである、と訴える悪質なデマゴギーであり扇動です。

クリスチャンサイエンスモニターは、もはや高級紙である資格を失った、と言うべきでしょう。

太田述正コラム#7682005.6.27

<捕鯨(その3)>

「私はかねてから、イギリス文明と日本文明は、・・「多元主義と寛容の精神」<や>「社会・政治の基本構造(edifice)の安定を揺り動かすことなく、最も抜本的な革命を発動(affect)することを知っている」点<等、>アングロサクソン以外の(西欧文明等の)どの文明に比べても互いに共通点が多く、従って日本人は、イギリスを最もよく理解できる立場にあると指摘してきました。」(コラム#84

このような「文明の親縁性といい、保有するパワー(経済力及び文化力)といい、米英両国を中心とするアングロサクソンにとって、日本は最大かつ最良の同盟国ということにならざるを得ない」(コラム#224)のであり、「日本は一刻も早く米国の保護国的地位から脱し、米国の対等なパートナーとして、集団的自衛権の行使ができるように措置すべきです。その上でまずは、もう一つのアングロサクソン国、オーストラリアとの連携を強めるべきでしょう。このたびのイラクにおける日豪連携・・は、その方向性を示すものとして注目されます。」(コラム#654) 以上が、私の基本的な考え方であることは、ご承知の方も多いと思います。

 その日本とアングロサクソン諸国とが真っ向からぶつかり合ったのが先の大戦です。

 私はこれまで、これはできの悪い(bastard)アングロサクソンたる米国が最大の責任を負うべき、世界史上の一時的な逸脱現象である、と繰り返し指摘してきました(コラム#100116200346)。

 しかし、この種の逸脱現象は両者間でいつでも起こり得るのであって、先の大戦の時のように全面的対決に至るケースもあれば、捕鯨問題のように、全般的には良好な関係が維持されている中で、部分的に鋭い対決状態を呈するケースもある、と認識すべきなのです。

 ではどうして、先の大戦や捕鯨問題の原因は文明の対立であると私が考えているか、についてご説明しましょう(注9)。

 (注9)以下はあくまでも試論であり、ぜひご意見等を寄せていただきたい。

 ここでは、アングロサクソン文明と日本文明がそれぞれいかなるものであるかについての詳しい説明は省きますが、アングロサクソン文明が近代の殆ど全てを生み出した文明であることは私が力説しているところであり、この文明が文化や富を生み出す力でいまだに世界をリードしていることは周知の事実です。

 ちょっと日本人の皆さんに想像力を働かせてみていただきたいのですが、仮に日本文明がそうだったとすれば、他の文明を皆さんはどうご覧になるでしょうか。恐らく、一段低いものとして見下されるのではないでしょうか。そして、その「一段低い」他の文明に対しては、自分の文明に害を及ぼす可能性のある部分は抹殺ないし無害化し、その上で、害を及ぼさないと考えられる部分は世界遺産ないし天然記念物的に可能な範囲で保全しつつ、できる限り自分の文明を普及しようとされるのではないでしょうか。

 アングロサクソンは、まさにこのような、階層的世界観を抱いているのです(注10)。それは、最上階の四階にいるアングロサクソンが、身内である三階の準アングロサクソン(スイス・オランダ・北欧諸国等)、よそ者であり潜在敵であるところの二階の(上記以外の)欧州諸国等、そして保護すべき対象であるところの一階のサハラ以南のアフリカ諸国等、に君臨しているという四層からなる世界観です。

 

 (注10)このような階層的世界観を持ったアングロサクソン文明以外の文明として、古典ギリシャ文明と支那文明がある。現時点に立って振り返ってみると、支那文明の(東夷・南蛮・西戒・北狄を蔑視する)階層的世界観は無知に基づく奢りにほかならなかったが、古典ギリシャ文明は、アングロサクソン文明と並ぶ人類文明の白眉であり、(バルバロイを蔑視する)階層的世界観を抱いて当然だった。いずれにせよ、古典ギリシャ文明はローマ文明に飲み込まれて事実上消滅してしまったし、支那文明は見る影もなく落魄して現在に至っている。

     注意すべきは、階層的世界観イコール人種差別的世界観ではないことだ。

古典ギリシャ文明(ヘレニズム文明を含む)で言えば、アレクサンドロス(Alexander大王は、「東西を融合し、ひとつの帝国にまとめようとした。ペルシャ人の若者をマケドニア軍に編入し、マケドニア式の訓練をおこなった。いっぽう、自らはペルシャの生活様式をとりいれ、東方の女性と結婚し、士官たちにも東方から妻をめとることを奨励した」(オンライン・エンカルタ百科事典ダイジェスト。6月25日アクセス)し、支那文明は、民族や人種を問わぬ、漢文を書き言葉として用いることができる人々(漢人)による文明だった。

アングロサクソン文明に関しても、最初からケルト系のブリトン人を主体としてそれにゲルマン系のアングロサクソン等が混じるという雑多な人々が担い手だった(コラム#379)こともあってか、イギリス人も米国人も、人種的純粋性への執着などは持たない。

一つだけ例を挙げれば、ネルソン(Horatio Nelson)提督率いるイギリス艦隊がナポレオンのフランス・スペイン連合艦隊を屠り去った、1805年の有名な地中海トラファルガー沖海戦(Battle of Trafalgar)だ。イギリス艦隊の総兵力は18,000人だったが、その構成を見ると、当時のイギリス海軍がいかに国際色豊かな組織であったかが分かる。すなわち、イギリス人のほか、約四分の一の4,000人がアイルランド人であり、その他トルコ人・支那人・フランス人・イタリア人・米国人・アフリカ人等、がいた。ネルソンの旗艦ビクトリー(HMS Victory)の828人の乗組員だけ見ても、イギリス人・西インド諸島人・米国人・オランダ人・イタリア人・フランス人・マルタ人・アイルランド人がいた。ちなみに総員中最年少は8歳、最年長は68歳であり、また、女性が1人いた。http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/magazine/4110478.stm。6月22日アクセス)

こういう雑多な構成の乗組員で、当時としては最もハイテクであった軍艦からなる艦隊を一糸乱れず動かしたのだから、ネルソンが近代マネージメントの祖と言われる(コラム#128)のも当然だ。

 アングロサクソンのユニークさは、動物の世界まで階層的世界観を持ち込んでいることです。

 つまり、動物を、犬猫等の愛玩動物・牛豚馬等の有用動物・その他の動物、の三つに明確に仕分けし、愛玩動物は人間に準じる存在としてその殺傷を禁じるとともに安楽死の対象とし、食用等の有用動物は石油等と同様厳格な資源管理の対象とし、その他の動物は人間に害をなさない限り、自然環境と同様保護の対象とするのです。

 ところが、アングロサクソン以外にとってまことにはた迷惑なのは、人間界についても動物界についても、アングロサクソンが時々勝手に線引きを変えてしまうことです。

 先の大戦は、義和団の乱当時に、アングロサクソンの総意によって一階から三階に二階級特進した日本(コラム#754)が、一階の支那の人々を迫害していると(半ば意図的に)曲解した米国・・アングロサクソンの総帥になりつつあった・・が、日本を二階に降級させたために起こった、と見ることができます。

 そして捕鯨問題は、アングロサクソンが、かつて有用動物に仕分けされていた鯨について、それが有用でなくなった頃にたまたま「高等」哺乳類であることが判明したこともあって、これを勝手に愛玩動物に仕分け直したために起こった、と見ることができるのです(注11)。

 (注11)アングロサクソンは、かつて「その他の動物」扱いだったイルカについても、鯨目に属すが故に鯨と同様「愛玩動物」に仕分け直し、イルカを日本が「虐殺」していることに対し、猛烈な抗議運動を開始して現在に至っている(http://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/this_world/3956355.stm200411月9日アクセス)。

 以上のような差別的なアングロサクソン文明に対して、人間(個人・人種・民族・文明)相互はもとより、人間を含むすべての動物相互、ひいてはすべての生き物相互を差別しない、一視同仁の日本文明は強く反発し、その結果両者の衝突、とあいなるわけです。

 アングロサクソン文明も日本文明も、極めて普遍性のある文明であると思いますが、非差別性の点に関しては、日本文明の方により普遍性があります。

このことをアングロサクソンに理解させるためにも、残念ながら先の大戦では日本は敗れるべくして敗れたけれど、捕鯨問題では負けるわけには行きません(注12)。

 

(注12)捕鯨問題では、「二階」のノルウェーが前述したように日本と共闘している(http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/4530415.stm。6月24日アクセス)。しかも、韓国も、そして中共までもが日本寄りの姿勢を見せているhttp://www.asahi.com/international/update/0623/008.html(6月23日アクセス)及びhttp://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/4123826.stm(6月24日アクセス))。

太田述正コラム#7672005.6.26

<捕鯨(その2)>

 2000年に日本が、それまで南極海と太平洋でミンク(mink)クジラを対象に実施してきた調査捕鯨の鯨種を、マッコウ(sperm)クジラとニタリ(Bryde’s/sei)クジラにも拡大することにしたところ、アングロサクソン諸国は一斉に日本を非難し、クリントン米政権は、(殆ど実質的な意味はなくなっていたが)200カイリ水域から日本漁船を完全に閉め出す措置をとりました。(http://www.kcn.ne.jp/~ca001/E18.htm及びhttp://www.local.co.jp/news-drift/comment-hogei.html(どちらも6月25日アクセス))

 2001年にはノルウェーが、日本に鯨肉の輸出を始めます(注5)。

 (注5IWC加盟国は鯨の商取引は禁じられているが、ノルウェーも日本も商取引の権利を留保しているので、ノルウェーから日本への鯨肉の輸出は可能。この時もグリーンピース等は激しい抗議運動を展開した。(http://www.kcn.ne.jp/~ca001/E18.htm上掲)

 日本は今年のIWC年次総会で、北海道・宮城県・和歌山県等について原住民生存捕鯨を認める決議案を提出したけれど否決されました(http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20050623i112.htm。6月23日アクセス)(注6)。

 (注6)日本の17世紀以来の「原住民生存捕鯨」基地として最も有名だった太地を抱える和歌山県は、学校給食での鯨肉の使用を再開した(http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/4106688.stm。6月19日アクセス)。ちなみに、カナダ・インドネシア・スリランカ・南太平洋諸国という、IWCに加盟していない諸国がずっと捕鯨を行ってきているが、これらはおおむね原住民生存捕鯨(伝統捕鯨とも呼ばれる)の範疇に属する捕鯨だと言えよう。

また、日本が表明した、調査捕鯨の再拡大方針(南極海のミンククジラの捕獲枠を倍増させ、新たにナガス(fin/humpback)クジラなど大型鯨を対象に加える)に対してオーストラリアが撤回を求める決議案を提出し、可決されましたが、日本は法的拘束力のないこの決議を無視する予定です(注7)。

 (注7)たまたま同じ時期に北海道のファーストフードチェーンが鯨バーガーを発売したことと併せ、英国の環境保護団体や動物愛護団体から、日本に対する激しい抗議が寄せられている(http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/asia-pacific/4122800.stm及びhttp://www.guardian.co.uk/japan/story/0,7369,1512371,00.html(どちらも6月24日アクセス)、http://www.sankei.co.jp/news/050625/kok037.htm(6月25日アクセス))。

また、オーストラリアでは、北西部の町にある日本人墓地の一画が壊されるという事件が起こったが、これは日本の調査捕鯨拡大への怒りが原因ではないかと取り沙汰されている(http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050624k0000m030001000c.html。6月23日アクセス)。

 これら決議案の採決状況を見ると、このところ次第に商業捕鯨解禁派がモラトリアム継続派を票数で追い上げてきており、来年あたりの年次総会では逆転するのではないかと噂されています。これは、新規加盟国に商業捕鯨解禁派が多い(注8)ためです。

(以上、特に断っていない限りhttp://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/4118990.stm及びhttp://www.asahi.com/international/update/0623/007.html(どちらも6月23日アクセス)による。)

 (注8)新規加盟国中の解禁派の多くは、日本からODAをもらっているアフリカ・カリブ海諸国だ。これら諸国のホンネは、解禁後、日本に捕獲枠を譲渡して収入を得るところにあると考えられている。なお、逆転したとしても、商業捕鯨解禁には(調査捕鯨の禁止も同じだが)四分の三以上の票が必要なので、当分膠着状態に変化は生じない。(http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/4110606.stmhttp://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/4114368.stm、及びhttp://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/4117888.stm(いずれも6月24日アクセス))。

 他方、商業捕鯨モラトリアム継続派は、一貫して調査捕鯨の禁止も主張してきたところです。つまりこれら諸国は、原住民捕鯨を除く捕鯨の完全禁止を追求してきたのであり、票数の逆転が間近であるというのに、いや間近だからこそ、ますます商業捕鯨解禁派への敵愾心を燃やしているのです。

3 捕鯨問題の論点

 以上見てきたことから、捕鯨の完全禁止をめぐる争いは、日本とアングロサクソン諸国との対立であると言って良いと思います。

その主要論点は次のとおりです。

 第一に、鯨だけを捕獲の対象外とすれば、鯨が相対的に増えてしまい、鯨が食用にするイカ等の海洋生物が減少してしまう、と日本は主張していますが、アングロサクソン側はこれに反論しており、両者とも決定的決め手に欠ける感があります。

 第二に、爆薬入りの銛を使用した現在の捕獲方式は、鯨に死に至るまでに著しい苦しみを与え、残酷なので、捕鯨を禁じなければならないとアングロサクソン側は主張していますが、日本側はこの捕獲方式を開発したノルウェーとともに、鯨は一瞬で死に至ると反論しており、やはり両者とも決定的決め手に欠ける感があります(http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/3847167.stm及びhttp://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/3847167.stm(どちらも6月24日アクセス))。

 第三に日本は、日本の一部の地域では昔から、そして20世紀に入ってからは日本全国で食生活の一環となってきた鯨を食べることを禁じるのは、文化帝国主義だと主張しているのに対し、アングロサクソン側は、鯨が真に日本全国で食生活の一環となったのは戦後の一時期に過ぎないと反論しています。

この論点では日本側はやや分が悪いと言わざるを得ません。しかし、日本の農林水産省当局としては、鯨でアングロサクソンに譲れば、(鯨とは違って)昔からずっと日本全国で食生活の一環となってきたマグロを始めとする様々な魚種が、次々に恣意的に全面禁漁の対象にされかねない、という思いがあるようです。

 第四に、捕殺しなければ鯨(各鯨種)の増減の調査はできないとして調査捕鯨の継続を日本は主張しているのに対し、アングロサクソン側は、日本の調査捕鯨は鯨(各鯨種)の増減の調査と称しつつも捕鯨数が多すぎる上、捕殺後市場で売却しており、その実態は商業捕鯨以外のなにものでもないと批判するとともに、鯨の皮膚さえ採取できれば、DNAを調べることで、鯨(各鯨種)が増えているか減っているかは分かる(http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/4282627.stm。6月24日アクセス)、として、調査捕鯨の禁止を主張しています。

この論点でも日本が不利という感は拭えませんが、にもかからわず、日本が次第に調査捕鯨枠を拡大してきているのは、確信犯的行為なのでしょう。

 第五に、これが最大の論点なのですが、鯨(各鯨種)の絶滅は回避しなければならない、という点では双方とも一致しつつも、長期にわたったモラトリアムの結果、既に商業捕鯨が可能な水準まで鯨の頭数が回復していると日本が主張しているのに対し、アングロサクソン側はこれを真っ向から否定しており、両者ががっぷり四つに組んでいる状況です。

(以上、特に断っていない限りhttp://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/4106688.stm前掲及びhttp://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/2051091.stm(6月24日アクセス)による。)

4 対立構造の文明論的考察

 以上の五つの論点のうち、第三は歴史認識をめぐる論争、そしてその他は自然科学的論争の体裁をとっています。

 しかし、実は、これは先の大戦と同様、日本文明とアングロサクソン文明との間の文明の衝突なのであり、先の大戦の延長戦を両者が戦っている、と見るべきなのです。

太田述正コラム#7662005.6.25

<捕鯨(その1)>

1 始めに

 私は、学校の給食や家の食事で時折鯨のしぐれ煮やカツレツを食べて育った世代に属します。

 学校では、日本では、捕鯨した鯨のほぼ全部位を、食用を含む様々な用途に活用しているということを、教科書の図を見ながら教わったものです。

 そんな私が1974年にスタンフォード大学に留学して、初めて35マイル離れたサンフランシスコに遊びに行った時のことです。たまたま立ち寄った自然史博物館のロビーで目にしたのが、捕鯨に反対する展示でした。

 鯨は高い知能を持っているので捕鯨してこれを食べるのは可哀想であり、しかも鯨が絶滅に瀕しているので捕鯨は中止すべきだ、という主旨だったと記憶しています。

 その時、人間が食用にしている数多の動物の中で鯨だけを特別視していることと、科学の成果を展示すべき博物館が、正規の展示室外とはいえ、このような政治的主張を織り込んだ展示を行っている(、あるいは許している)ことに反発した記憶があります。

 また、1988年に英国の国防省の大学校に留学した時のことです。ある日講師の一人が、本題から脱線して捕鯨禁止を当然視するような発言を行ったので、反論しようと質問事項をコーディネーターに提出したけれど、質問する機会が与えられず、悶々とした思いのまま帰宅したことがありました。

 現在、韓国で国際捕鯨委員会(IWCInternational Whaling Commission)(注1)の年次総会が開催されていることから、日本や英国等のマスコミで捕鯨問題が報道されており、この機会にこの問題の文明論的な意味を考えてみることにしました。

 (注1IWC1948年に設立され、日本を始め米国・英国・ロシア・フランス等の43カ国が加盟している(2002年現在)。IWCが規制対象としている鯨種は82種類の鯨類のうち13種類の大型鯨類(シロナガス・ミンク・マッコウ等)。IWCの加盟国のうち、日本は鯨類捕獲調査(調査捕鯨)を、ノルウェーは商業捕鯨を、また、米国・ロシア・デンマーク・セントビンセントは原住民生存捕鯨を行っている。クジラの管理に関する取り決めは科学的情報に基づき決定しなければならないものとされ、IWCの科学委員会は資源量の推定などクジラの管理に関する科学的な勧告を行っている。(http://www8.cao.go.jp/survey/h13/h13-hogei/2-2.html。6月23日アクセス)。

2 捕鯨問題の事実関係

 たかが鯨と言うなかれ。

 1853年のペリー(Matthew Calbraith Perry)准将率いる黒船の来航は、日本近海までやってきていた捕鯨船員の保護と食料・飲料水の確保のために幕府に開国を迫ることが目的だった(注2)ことを、よもやお忘れでは?

 (注2)米国を代表する文学作品の一つで、捕鯨がテーマであるメルヴィル(Herman Melville1819?91年)のMoby-Dick白鯨)が、黒船来航の直前、1851年に出版されている。

欧米では、捕鯨はもっぱら鯨油生産のために行われ、マッコウ油は蝋燭や洗剤、口紅などの原料に、ナガス油はマーガリンなどに加工されました。

しかし次第に、鯨油によって作られていた工業製品の原料が、ひまわり油・綿実油・パーム油・石油等に切り替えられて行きます。

 鯨油が必要不可欠ではなくなった結果、捕鯨を最初に中止した国は、(第二次世界大戦勃発、ということも背景にあったのでしょうが、)ナチス時代のドイツで1939年でした。次いで1940年に米国が捕鯨を中止します。

他方、日本では捕鯨は食用目的が主でその他の用途が従でした。

日本は対米開戦した1941年以来母船式捕鯨を休止していましたが、戦後、日本政府の要望に応え、マッカーサー連合国軍最高司令官は、「食糧難緩和のために鯨肉を供給し、鯨油については世界市場に供出すること」を条件に連合国中の英、オーストラリア・ニュージーランド・ノルウェー四カ国の反対を押し切って、1946年に母船式捕鯨を再開させます。

鯨油だけでなく鯨肉にも商品価値がある日本にとって捕鯨は比較優位産業であり、戦後の世界の年間捕鯨数が15,000?17,000頭(シロナガス鯨換算)で殆ど変わらない中で、日本の捕鯨数は次第に増え、1960年には日本は世界一の捕鯨国になるのです。

しかし、その頃から乱獲により鯨資源の枯渇が明らかになり、世界の捕鯨数も日本の捕鯨数も急速に減少して行き、鯨油目的で捕鯨を行ってきた国の中から捕鯨を中止する国が再び出てきます。

1970年代に入ってからは、1975年からグリーンピースが反捕鯨活動を開始したことに象徴されているように、鯨目(注3)全体を高等生物として、一切捕獲・殺害を禁じることを目指す運動がアングロサクソン諸国を中心に活発化してきます。

(注3cetacean。鯨類・イルカ類・ネズミイルカ類からなる。

こうして1863年に英国、1964年にニュージーランド、1973年にカナダ、1975年に南アフリカ、1978年にオーストラリア、とアングロサクソン諸国が次々に捕鯨を中止して行くのです。(1970年代までに捕鯨を中止した国9カ国中6カ国がアングロサクソン諸国です。)

そしてついに1982年には、5年後の1987年からの商業捕鯨中止(モラトリアム)がIWCで採択されるに至ります。

その後、日本はやむなく1987年に商業捕鯨は中止する(注4)ものの、調査捕鯨を開始します。1992年には、日本同様に調査捕鯨を実施してきたアイスランドがIWCを脱退して商業捕鯨を再開します。また1993年には、ノルウェーが留保していた権利を行使して商業捕鯨を再開し、現在に至っています。

(以上、捕鯨史については、特に断っていない限りhttp://www.whaling.jp/history.htmlhttp://www.town.taiji.wakayama.jp/museum/history/(どちらも6月23日アクセス)、及びhttp://www.greenpeace.or.jp/campaign/oceans/factsheet/(6月24日アクセス)による。)

 (注4)日本もノルウェーのように、商業捕鯨の権利を留保していたが、米国が、日本が留保を撤回しなければ米国の200カイリ経済水域から日本の漁船を閉め出すと日本を「脅迫」し、米国の200カリ内の日本の漁獲額が鯨の漁獲額の10倍にも達することから、やむなく日本は1986年に留保を撤回した。ところが米国は約束を破り、1988年に200カリ内から日本の漁船を閉め出してしまった。(http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/2051091.stm。6月24日アクセス)

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