太田述正コラム#9281(2017.8.16)
<イギリス論再び(その6)>(2017.11.29公開)

 ・小麦

 「我々の地は、単に羊によって<(後述)>ではなく、小麦によって定義されるところの、パン屋達と製粉屋達の地なのであって、<彼らは、>イギリス人達のために、諸パイ、諸ケーキ、諸タルト、そして諸プディング、の材料を提供してきた。
 我々の日常的文句がそのことを物語っている。
 パンの皮を稼ぐ(earn a crus=生きるだけで精一杯の稼ぎを得る)、自分で蒔いた種は自分で刈り取る(we reap what we sow=過去に犯した悪いことは、将来その報いが自分に返ってくる) 、半焼けの(half-baked=中途半端な)諸計画に頭を振る、半斤のパンでもパンがないよりはましである(half a loaf is better than no bread)ことを知っている、といった具合だ。」(D)

⇒ここまでは、凝った文章が連ねられてこそいるものの、地理的意味での欧州に限定しても、多かれ少なかれ、他にあてはまる国があるということもあり、イギリス性のよってきたるものの説明というよりは、頁数を確保するための増量剤、という趣があります。(太田)

 ・鉄と石炭

 「19世紀において、イギリスの想像力(imagination)を再構築した(remade)のは、地理的僥倖であったところの、鉄と石炭の採算性ある鉱石層群(seams)だった。」(A)
 「例えば、我々は、この上もなく勤勉な人々であって、匠達(artisans)と熟練職人達(craftsmen)、発明家達と事業家達(entrepreneurs)、工夫達と製造業者達、の国だ。
 しかし、このうち一つとして、<地理的意味での>欧州で最も豊かな石炭鉱床の上に座っていたという恵まれた運命なしには可能ではなかったのだ。」(D)

⇒ここも同じなのですが、そもそも、私がイギリス人が勤勉であるとは全く考えていない・・反産業主義(コラム#81)!・・ことはご承知のことと思います。
 但し、イギリスの、地理的意味での欧州中、随一の豊かさを近代以降においても持続させた要因の一つが、同地域が、鉄鉱山と石炭鉱山、とりわけ後者、に恵まれていた点であったことは、間違いありません。(太田)

 ・草地

 「また、ウィリアム・ブレイク(William Blake)の、「古代 あの足が(And Did Those Feet In Ancient Time)」<から始まるところ>の、我々を鼓舞させる詩・・今では、エルサレム国歌(the anthem Jerusalem)<(注15)>として最もよく知られている・・寿いでいる、我々の有名な、「草地(green)と心地よい(peasand)地(land)」であるところの我々の有名な諸野原(fields)についてはどうか。」(D)

 (注15)エルサレム(Jerusalem)。「18世紀イギリスの詩人ウィリアム・ブレイクの預言詩『ミルトン』(Milton)の序詩に、同国の作曲家サー・チャールズ・ヒューバート・パリーが1916年に曲をつけたオルガン伴奏による合唱曲。後にエドワード・エルガーによって編曲され管弦楽伴奏版
< https://www.youtube.com/watch?v=041nXAAn714 >
も作られた。・・・
 ラグビーやクリケットでの<イギリス>代表が国歌として使用して<おり、>・・・労働党大会では『赤旗の歌』とともに必ず合唱され<る。>・・・
 この曲が作られた背景には、第一次世界大戦中、<英>国民の愛国心を高揚させる音楽が必要とされたという事情がある。しかし、この曲を大英帝国の戦争賛美の目的に利用しようとした者たちの意図とは異なり、ブレイクの詩が語っているものは、あらゆる権威や権力に屈することのない自由な精神活動を続けていくことの決意宣言である。・・・
 <なお、>原詩のタイトルは "And did those feet in ancient time"(古代あの足が)だが、一般に「エルサレム」の名で知られる。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%82%B5%E3%83%AC%E3%83%A0_(%E8%81%96%E6%AD%8C)
 著者ないし書評子が引用しているのは、その最初の方の、
And did those feet in ancient time,
Walk upon England's mountains ≪green≫:
And was the holy Lamb of God,
On England's ≪pleasant≫ pastures seen!
と、末尾の、
Till we have built [Jerusalem],
In England's green and pleasant ≪Land≫.
の中の、私が≪≫を付けた言葉だ。
 そして、言うまでもなく、[]内が、この詩(歌詞)のタイトルとして一般に用いられているわけだ。
 (ちなみに、holy Lamb of God(神の聖なる子羊)とは、イエス・キリストのこと。(上掲))

⇒ここも同じですが、このすぐ後でご紹介する、著者の「新説」を理解するためにも、イギリスにとっての、「諸野原(fields)」、とりわけ、草地(green)の広がる田舎、は重要である、ということを頭に入れておいてください。(太田)

(続く)