太田述正コラム#9111(2017.5.23)
<下川耿史『エロティック日本史』を読む(その34)>(2017.9.6公開)

 「エロ写真の流行を決定づけたのは日露戦争の際、エロ写真が国策として戦場に送られたことであった。
 1894(明治27)年、日清戦争がぼっ発すると軍事郵便制度が設けられ、そのマークとして上半身裸の女性の絵が使われた。・・・
 これに対して1904(明治37)年に始まった日露戦争では、3人の芸者をモデルにしたヌード写真が撮影され、慰問品として戦場にばらまかれたのである。・・・
 戦場で初めてエロ写真に接した兵士たち<が>復員後、・・・日本では、一大エロ写真のブームが巻き起こったのである。」(278、280)

⇒調べる労を省きましたが、こんなことをやったのは、19世紀末以降では、日本軍だけだったことでしょう。
 この延長線上に、先の大戦中の慰安所/慰安婦制度がある、と言っていいでしょうね。(太田)

 「江戸時代以前と明治以降の性風俗の動きを比較するうちに、「近代日本」について、疑問が<私の中で>どんどん増幅されていった・・・
 近代以前と以後では、後者の方が個人的な生き方としての性のありようも明確になると何の疑問もなしに思い込んでいたが、いざ、資料に接しtみると、前者にはよくも悪くも個人の生き方が反映されているのに対して、後者からはむしろ個人が時代の中に埋没しているように感じられた。
 とすれば日本の近代化は個人の確立を促す形で進行してきたわけではないのではないか?
 むしろ封建時代などの方が、個人の生き方と社会との関わりはきちんとしていたようにも思われたのである。」(290)

⇒率直な感想に、気が付きましたか、と思わずにやけてしまいます。
 幕府が欧米主要各国との間で締結した不平等条約群の改正を図る、という目的もあり、明治新政府は、性制度についても、欧米諸国のそれの継受に努めた結果、日本人の性意識にも少なからず悪影響を与えつつ、日本の性制度は、キリスト教「倫理」と親和性のある未開なものへと退化したのです。
 この結果、日本人の性意識と性制度の間に乖離が生じたところ、この乖離は、戦後、占領軍が、欧米の中でも最も未開な米国の性制度を日本に押し付けたことによって、更に拡大したまま、現在に至っているわけです。(太田) 

3 終わりに代えて

 最後に、「80代の現役AV女優が語る、長寿時代の「性」」
http://diamond.jp/articles/-/121774?utm_source=daily&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor
(3月21日アクセス)という記事のさわりをご紹介し、私のコメントを付して、終わりに代えさせていただきます。

 「・・・<「日本での、現在の>中古AVの購入客はもっぱらシニア層です。・・・
 若い新人女優よりは素人っぽい熟女モノが好まれ<ます。」>・・・
 AV市場全体が全盛期の5分の1程度に縮小を続ける中、還暦以上の“超熟女”作品の人気とニーズは衰え知らずである。・・・
 「近年では60代の女優モノが人気で、高ルックスの女優の還暦デビュー作がその月の売上ナンバーワンになります。10年ほど前は『五十路』の女優作品がインパクトもあって人気でしたが、これが長寿化に伴いそのままスライドしている格好です・・・
 女優と同世代〜年上の男性のみならず、『マザコン』とは違う、常に“年上好き”の40〜50代男性が支持層で、皆さんからは『50代なんて、まだガキじゃないか!』とも言われます」・・・
 こうした実情から、業界では“還暦超え”女優の発掘に余念がないが、常時「需要に供給が追い付いていない」状況が続いている。・・・

⇒これも、調べる労を省きましたが、高齢のAV男優やAV女優が活躍する国は日本だけではないでしょうか。
 高齢の現役AV男優を2004年から続けている徳田重男(1934年〜)が、2008年に、タイム誌、CNNの取材を受け、報道された
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%B3%E7%94%B0%E9%87%8D%E7%94%B7
ことは、極めて珍しいことだからでしょうし、この記事には、「小笠原祐子さん<(下出)のところに、>・・・<2>月に・・・フランスのテレビ局が取材に訪れ<た>」、とあります。(太田)

 というのも、撮影は一日通しのタフな現場で、体力と“丈夫さ”が最も重視されるため。体も硬くなっており体位に無茶ができず、「関節が柔らかい」「心肺に持病がない」など年と共に健康面での出演ハードルも上がるのだ。・・・
 そうした中で、帝塚真織さんは71歳でAVデビュー。今年1月に80歳で“引退”作品をリリースするまでの数年間を「日本最高齢AV女優」として活躍した。・・・
 3年前には「あと10年続ける」と公言していたが、傘寿を機に卒業を決めたのは、「自分好みの男優じゃないと撮影が辛くなったから」との理由だ。
 元来、好む男性の条件が細かいのに加え、プライベートでは30歳年下の恋人と月に1〜2回の頻度で愛し合う生活を続けており、相手から咎められ、“行為”での公私の差を実感するほど「現場が苦になっていった」と話す。・・・
 一方、入れ替わりで最高齢女優となったのが、昨年に80歳でAVデビューして、現在5タイトルに名を連ねる小笠原祐子さん(81歳)だ。・・・
 「実は、熟年市場では女優より男優の需要が多く、不足も著しい。夫婦役など熟女の相手役となるシニア男性の志願者は滅多におらず、『定年後にやってみたい』との希望者はいても、現場で下半身の機能を自在に長時間保てる人は非常に乏しいのです」
 ちなみに、レンタルビデオ店へ自ら出向いて利用するのは70代くらいまでが一般的だという。
 「それ以降になると身体的理由などから『自宅に居ながらにして入手できる』と、紙媒体を通じて通販で購入するケースが圧倒的です。これまでの最高齢は103歳の男性で、還暦女優作品の購入者でした」・・・」

 明治以降の性制度による「妨害」にもかかわらず、例えば、こんな風↑に、日本が性意識において、世界の最先端を走り続けていることに、日本人達は、もっと目を向けると共に誇りを持ち、性制度を復旧・是正した上で、かかる性意識の世界への普及に、(ネット上のAV作品群の垂れ流しだけに甘んじることなく、)意識的、かつ積極的、に乗り出して行って欲しいものです。
 
 (なお、ディスカッション(コラム#9080)で言及したところの、日本の中性文化に関するFT記事(4月15/16日付)
https://www.ft.com/content/186527de-1ddf-11e7-b7d3-163f5a7f229c
(4月18日アクセス)・・紙のFTの切り抜きもある・・の紹介は、他日を期すことにします。)

(完)