太田述正コラム#9059(2017.4.27)
<ナチが模範と仰いだ米国(その13)>(2017.8.11公開)

奴隷制における、骨の折れる諸労働、恒常的な不安、及び、惨めな睡眠諸条件、が慢性的疲労をもたらしたに違いないというのに、ジェファーソンもカートライトも、意地悪くも、疲労困憊を問題だとし、激しい仕事を治療法としたのだ。
 <しかも、>このような諸治療法は、鞭打ちの後に執り行われたのだ。
 フレデリック・ダグラス(Frederick Douglass)<(注20)(コラム#881、3376、3683)>が彼の回想録の中で記したように、「他のいかなる咎よりも、睡眠過多でもって、奴隷達は鞭打たれた」のだった。

 (注20)1818〜95年。「編集・講演・執筆・政治家としての活動を通して、奴隷制廃止論を唱えた・・・メリーランド州・・・にて奴隷として生を受けた。・・・当時違法ながら女主人に文字を習った。・・・1838年、奴隷の境遇から脱出を図る。船員服に黒人仲間からもらった身分証を携えて列車に乗り込み、・・・ニューヨークに辿り着く。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%87%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%80%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%B9

 ダグラスは、奴隷にされた人々を慢性的な疲労の状態に留め置くことは、彼らの意志を砕く有用な手段であったという示唆までしている。
 彼は、いつの日曜日にも、自分自身が、「獣のように、夢か現か」という状態にしばしば陥っていることを見出し、「私の魂を射抜くであろうエネルギッシュな自由の閃光」に立脚した活動を彼が行うことを不可能にしていた、と記している。
 地面の上に崩れ落ちつつ、彼は、ひたすら自分の「惨めな状況」を嘆いたことであった、と。
 このような歴史が残したのは、我々の人種的諸不平等性の諸原因と諸結果(effects)についての甚だしい混乱だ。
 ジェファーソンとカートライトの擬似科学的人種主義の中から、「怠惰な黒人の男」というステレオタイプが医学的正統性を与えられた。
 疲労困憊は、破砕された睡眠環境と極端な身体的感情的な強圧の結果ではなく、より激しい仕事が必要とされるところの性格的特徴と見られたのだ。・・・

⇒ワシントンにあるジェファーソン記念館
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%B3%E8%A8%98%E5%BF%B5%E9%A4%A8
の廃止を前にも米国民達に促したことがありますが、この記念館が存在している限りは、米国の野垂れ死に的衰亡は不可避でしょうね。(太田)

 現在行われている、フォーダム(Fordham)大学の心理学者のティファニー・イップ(Tiffany Yip)<(注21)>の研究は、アフリカ系米国人及びラティノの青年、に及ぼす民族的差別と睡眠剥奪の結合がもたらす諸結果を検証している。

 (注21)支那系移民の両親の下に米国に生まれ、カリフォルニア州、テキサス州、イリノイ州、及び。香港で少女時代を過ごす。
http://news.fordham.edu/inside-fordham-category/scholar-studies-ethnic-identity-and-well-being-in-teens-and-young-adults/
 コーネル大卒、NY大博士。現在、<NY市ブロンクスの>フォーダム大心理学教授にして、Director, Applied Developmental Psychology Program。
https://www.fordham.edu/info/21660/faculty_and_staff/5443/tiffany_yip

 彼女の、暫定的な発見は、差別の諸経験が質の悪い睡眠をもたらし、それが今度はより高い諸水準の不安、学校への関与の低下、そして、自恃に係る深まる諸問題、をもたらす、という悪循環を示唆している。・・・
 アフリカ系米国人達は、白人達に比べて、より喧しく危険であるところの、都市諸環境に住んでいる傾向がある。
 このような諸環境は、より短く浅い睡眠をもたらすかもしれない。
 アフリカ系米国人達は、白人達に比べて、より、好ましからざる、ないしは、予見不可能な、仕事の諸スケジュールを持つ傾向があり、それが、混沌たる睡眠諸スケジュールをもたらす。
 増大する、飢餓のリスクと共に、警察による暴力ないしハラスメントの恐怖、が、良い夜の睡眠を得るのを一層困難にしているのだ。・・・」

⇒私は、奴隷制の過酷な経験が、祖先が奴隷であった米国の黒人達のDNAの機能を劣化させ、その一つが、彼らの睡眠の質の低下である可能性すら想像しています。(太田)
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(続く)