太田述正コラム#8999(2017.3.28)
<インディアン物語(その3)>(2017.7.12公開)

 (3)優生学

 「この本の沢山の驚くべき諸くだりの一つは、著者による、20世紀になってからも長期間にわたって原住民の人々に対する政府の政策が強く囚われていたところの、信用が失墜した科学である優生学についての平易な語り口での議論だ。
 1970年から76年の間に、インディアンの女性達の約20〜50%は不妊手術<(注8)>が施され、その数は1976年末には総数で25,000に上った。」と彼は記している。

 (注8)1970年代に盛んに行われたところの、子宮摘出ないし輸卵管結索によるインディアン女性達への不妊手術。それまでに、出産可能時期の10万から15万人のうち、3400人から7万人が自発的に、または、検査ないし妊娠中絶である騙されて手術を受けていた。しかし、自発的に手術を受けた者達も、インディアンが全般的に貧困状況にあったところ、そうしなければ、生活保護や無償医療を受けられなくなるという誤った思い込み・・当局側があえてそう思わせていた・・に基づいていた。この結果、1970年代には一人の女性あたり3.79人の子供達がいたのが、1980年には1.8人まで減った。
https://en.wikipedia.org/wiki/Sterilization_of_Native_American_women

 この文章を再読してみよ。
 その単純<明快>性は衝撃的だ。
 同様の諸プログラムがカナダにもあった。」

⇒まさに、30年前頃には、インディアンは絶滅寸前の状況に追い込まれていた、と言っても過言ではありませんね。(太田)

 著者は続ける。
 「<これは、>市民権運動の事大の少し前、いや、主としてまさにその時代に慣行化(institute)されていたわけだ。
 つまり、アフリカ系米国人達が旧き諸措置との戦いに勝利した頃に、インディアンの人々に対して、土地と身体を奪う(dispossess)新たな連邦の諸措置が課されたのだ。」(C)

 (4)「幸せ」な現在

 「アメリカ原住民達の最近の経済的・社会的な成功の相当な部分は、ゲーム産業の異常な高収益のおかげだが、産出高(output)910億ドル(810億ユーロ)を超えているが、61万2000人の雇用に直接寄与している。<(注9)>

 (注9)1976年の米最高裁判決(Bryan v. Itasca County)で部族的主権・・州の徴税権、規制権が及ばない・・があると認められるに至ったところの、特別保留地内での、1988年制定のインディアン・ゲーム規制法(Indian Gaming Regulatory Act)に基づき、カジノ、ビンゴホール、その他のギャンブル施設が、2011年時点で、240部族によって460か所存在し、年間収入が270億ドルに達している。
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=1008585
https://en.wikipedia.org/wiki/Native_American_gaming

⇒40年前に画期的な判決あったのですね。
 その結果、インディアン特別保留地の状況、そして、爾後の特別保留地に住むインディアン達の境遇、が劇的に変わった、ということは、知りませんでした。
 (収入の数字に資料によってかなりの乖離があるのが若干気になります。)
 こういう特権が、特定の被差別集団に対して付与されることは、一種の補償として正の評価がなされるべきでしょうが、当該集団にとって長期的にいいことなのかどうか、という懸念は残ります。
 また、奴隷であった祖先を持つ黒人達が、この種の補償の恩恵に浴していない、いや、特別保留地に住んでいるわけではないので、同じ方法で浴する術がないことが不公平な感じもします。(太田)

 しかし、この産業は、オンライン・ゲームからの、及び、ギャンブルの有害な社会的・心理的諸効果についての増大する政治的憂慮という、二重の諸脅威の下にある。
 著者は、根っからの楽観主義者であり、この産業は生き残れるが、<諸脅威に負けないように>適応しなければならない、と考えている。
 そうかもしれない。
 概ね楽観的にして前向きの調子でもって、著者の調査は、1970年代以来、しばしば、在来の歴史的諸研究を特徴付けて来たところの、悲劇的で、血に染まり、時に道義的に堕落した、諸説明、とは顕著に異なっている。」(B)

(続く)