太田述正コラム#8939(2017.2.26)
<東は東・西は西?(その1)>(2017.6.12公開)

1 始めに

 デイヴィッド・ロブソン(David Robson)による、「東と西はどのように全く異なる形で考えるか(How East and West think in profoundly different ways)」という記事
http://www.bbc.com/future/story/20170118-how-east-and-west-think-in-profoundly-different-ways
(1月22日アクセス)の大筋をご紹介し、私のコメントを付します。
 「この記事は、BBCの、我々の恐るべき多様性について最新の科学を用いて迫る新シリーズである、「人間の惑星」の第一部」なのだそうです。
 なお、ロブソンは、BBC専属著述家です。
 既出の話もいくつか出て来ますが、この記事の組み立てを忠実に紹介したい、また、皆さんに復習をしていただくことも悪くない、と思った次第です。

2 東は東・西は西?

 「歴史、地理、そして、文化、が、我々みんながどのように考えるかを、微妙かつ驚くべき諸形で・・我々の視覚に至るまで・・、変え得る、ということがどんどん明らかになりつつある。・・・
 2010年に、影響力ある論文が、行動・脳科学ジャーナル(journal Behavioral and Brain Sciences)に載ったところ、この論文は、大部分の心理学の被験者達は「欧米の教育程度の高い工業化した金持ちで民主主義的(western, educated, industrialised, rich and democratic)」、短縮形で言えば、「異様な(Weird)」人々だ、と論じたのだった。
 <すなわち、>被験者達のうち、70%近くは米国人であって、その大部分は、これらの諸実験に参加するために時間を犠牲にすることによって、小遣い銭を稼いだり単位をもらったりしようと思った学部学生達だ、というのだ。
 その暗黙の仮定は、この選ばれた人々の集団は、全ての人々は基本的には同じである、という、人間の本性に係る普遍的諸真実を代表し得る、というものだった。
 仮にそれが本当だとすれば、欧米的バイアスなど、重要なことではなかったことだろう。
 しかし、数こそ少ないが、他の諸文化からの人々を試験したところの、入手できる諸研究は、これが、全くもって本当ではないことを示唆している。
 「欧米人達、とりわけ米国人達、は、諸分散(distributions)の遠く離れた端っこに位置しているのだ」、と、この研究の著者達の一人である、<カナダの>ブリティッシュコロンビア大学のジョゼフ・ヘンリック(Joseph Henrich)は語る。・・・
 自分達の諸態度や諸ふるまいについて聞かれた時、より個人主義的な欧米の諸社会の人々は、集団的業績よりも個人的成功に価値を置く傾向があり、この傾向は、より大きな、自尊心、及び、個人的幸福の追求、と、相互に結び付いている。・・・
 この自己インフレ(self-inflation)傾向は、東アジア一帯で行われた様々な諸研究においては、<被験者達の間で、>ほぼ全く存在していないように見える。・・・
 <そして、>ここが肝要なのだが、我々の「社会的志向(social orientation)」が、より根源的な思惟(reasoning)の諸様相(aspects)の中に流出しているよう見えるのだ。
 より集団主義的な諸社会の人々は、彼らが諸問題について考える形において、より諸関係と手近の状況の文脈に焦点を当てつつ、より「全体論的(holistic)」である傾向があるのに対し、個人主義的な諸社会の人々は、異なった諸要素に焦点を当て、かつ、諸状況を固定的で不変であると見なす傾向がある、というわけだ。

(続く)