太田述正コラム#8865(2017.1.20)
<米帝国主義の生誕(その2)>(2017.5.6公開)

 (2)南北戦争

 「・・・著者は、それが全国的現象であったと主張し、奴隷制が南部に限定されていたという観念を拒絶する。
 「自由な」北部における奴隷解放は、ひどく緩慢なプロセスであった・・1861年時点でなお、ニュージャージー州に奴隷達がいた・・し、黒人たる自由民達でさえ、北部の諸都市をうろついていた奴隷捕獲者達に捕まえられる危険性があった。<(注1)>・・・」(D)

 (注1)「<米>国成立後、州権論の立場から南部のプランテーション経営者の意向を受けて奴隷制度が南部諸州では継続され、1793年には最初の逃亡奴隷法が制定された。その後も南部の奴隷州と北部の自由州の範囲を巡って政治的対立が生じ、また南部の奴隷が単独であるいは地下鉄道などの協力者を得て北部の自由州、更に19世紀前半に奴隷制度が廃止されていたカナダに脱出を図る者が相次いだ。そのため、1850年には逃亡奴隷法の改正が行われ、南部の奴隷所有者の財産保護の関連から、本来奴隷制度が認められない北部の自由州においても執行官・連邦保安官による逃亡奴隷の取締が行われるようになった。これには逃亡奴隷のみならず、自由州の白人の激しい反発を招き、南北戦争の原因の1つともなった。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%83%E4%BA%A1%E5%A5%B4%E9%9A%B7
 「<1787に作成され1788年に発効した米国>憲法第4条第2節第3項逃亡奴隷条項には、「何人も、一州においてその法律の下に服役又は労働に従う義務のある者は、他州に逃亡することによって、その州の法律又は規則により、右の服役又は労働から解放されることはなく、右の服役又は労働に対し権利を有する当事者の請求に応じて引き渡されなければならない。」とされてい<た>。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%83%E4%BA%A1%E5%A5%B4%E9%9A%B7%E6%B3%95

 「著者は、問題は、若き米国が、獲得した土地を統治し開発する能力を持っていなかったことだ、と言う。
 分水嶺たる瞬間は、彼の見解では南北戦争だった。
 奴隷制、自由、及び、南部再建(Reconstruction)に係る紛争によって生起された大きな意義のある諸変化(と掴み損ねた諸機会)を軽んじることなく、著者は、より広角のレンズを開く。
 戦争の前は、米国は、米国は、弱い中央政府と諸州と諸地方の間に政治権力が分散した農業国だった。
 その支配選良達は、商人及び奴隷所有諸階級出身だった。
 全国通貨も、中央銀行も、大陸横断鉄道も、今日では当然のことと考えられているところの、政治部門と経済部門の間の繋がりも、存在しなかった。
 この戦争は、その全てを変えた。
 巨大な陸軍を募集し補給するために、エイブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln)は、議会と連邦諸裁判所と共に、反対意見を抑圧する権力を含むところの、空前の権威を帯びた。

⇒欧米の諸国の政府機構の整備が、一義的には軍事目的であったことを示す端的な例です。(太田)

 鋳物工場群、船舶造修所群、そして、工場群、に巨額の政府諸契約が与えられた。
 「1861年に、議会は、「800ドル超の諸所得に対するささやかな税金を法定すると共に…法廷貨幣法を可決し、グリーンバックス(greenbacks)<(コラム#8517)>として知られる、利子付ではない財務省中期証券群…の流通を許可した。」と著者は記す。

⇒耳タコでしょうが、これら、全てが、南北戦争がらみであったことを銘記してください。(太田)

 諸部隊を迅速に移動させると共に、奴隷所有者達ではなく小農民達によって西部諸領域の人口を増やすべく、政府は、それら諸領域で働きたい諸家族に160エーカーの入植地(homestead)を約束し、驚くべき規模で、しばしば疑わしい価値しかない、鉄道建設諸プロジェクトを奨励した。

⇒鉄道や幹線道路建設の最大の目的が、長く、軍事目的であり続けたことも覚えておいてください。(太田)

 この戦争末には、やがてウォール街(Wall Street)<(注2)>として人口に膾炙することとなる、「金融資本家達の新しい階級」、が、これらの諸目的のために勃興するに至っていた、と著者は言う。・・・」(A)

 (注2)Wallとは、「1652年、オランダ(ネーデルラント連邦共和国)の植民地ニューアムステルダム(現在のニューヨーク)を管轄していたオランダ西インド会社が、インディアンや、ニューイングランドに入植したイギリス人からの攻撃に備えて、木材などを利用して築いた防護壁(wall)に由来する。」また、今では、「ニューヨーク証券取引所<こそあるが、>もはやウォール街には純米国資本の大手金融機関の本部は存在しない。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AB%E8%A1%97

(続く)