太田述正コラム#8863(2017.1.19)
<米帝国主義の生誕(その1)>(2017.5.5公開)

1 始めに

 引き続き米国ものシリーズです。
 スティーブン・ハーン(Steven Hahn)の新著、『諸境界のない国--諸内戦の時代における米国とその世界 1830〜1910年(A Nation Without Borders: The United States and Its World in an Age of Civil Wars, 1830-1910)』のさわりを書評群をもとにご紹介し、私のコメントを付します。
 書評群の記述内容の切り分けが容易でなかったので、話題が行ったり来たりすると思いますが、あしからず。

A:https://www.washingtonpost.com/opinions/how-america-harnessed-its-resources-to-forge-a-new-kind-of-empire/2016/11/22/21d09582-a4ff-11e6-8fc0-7be8f848c492_story.html?utm_term=.12d52afbc40e
(11月26日アクセス。書評(以下同じ))
B:https://www.ft.com/content/7b589b7e-c1ea-11e6-81c2-f57d90f6741a
(12月17日アクセス)?
C:https://www.nytimes.com/2016/12/16/books/review/nation-without-borders-steven-hahn.html?_r=0
(1月16日アクセス(以下同じ))
D:https://www.bostonglobe.com/arts/books/2016/11/03/the-years-when-states-became-united/n7347oFo6mXoY0BjjitHRO/story.html
E:http://www.weeklystandard.com/how-the-end-of-slavery-formed-the-american-nation/article/2005175
F:https://www.thenation.com/article/birth-of-an-imperial-nation/
G:http://www.philly.com/philly/entertainment/20161127__Nation_Without_Borders___Our_history__and_its_other_side.html

 なお、ハーン(1950年〜)は、米ロチェスター大卒、エール大博士で、カリフォルニア大サンディエゴ校、ノースウエスタン大、ペンシルヴァニア大で教鞭を執り、現在、ニューヨーク大の歴史学教授、で、2003年に出版された著書'A Nation Under our Feet: Black Political Struggles in the Rural South from Slavery to the Great Migration'で、その翌年、ピュリッツァー賞を受賞、という人物です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Steven_Hahn

 また、この本は、ペンギン社の米国史シリーズのうちの一冊です。(C)

2 米帝国主義の生誕

 (1)総論

 「20世紀央においては、歴史学者達は、しばしば、米国の「例外主義」、と、我が国の、いわゆる、民主主義と包摂性への前進を寿いだものだ。
 <ところが、>それ以来、過去についての諸叙述は、暗部に執着する傾向があり続けている。
 歴史学者達は、政治と経済の権力の募りつつあるところの集中、及び、アフリカ系米国人達、インディアン達、ヒスパニック達、賃金労働者達、及び、女性達、に対する差別と搾取の広範性について強調してきたのだ。
 南北戦争前後の何十年かについての包括的な<歴史>解釈の中で、著者は・・・<獲得すべき>新しい諸領域を見つける準備をしつつ、自身の諸領域を恒常的かつ必然的に植民地化し続けるところの、国民国家、大陸帝国、そして、全球的な絶対的力、としての米国の出現を強調する。・・・」(G)

 「・・・米国という国民国家が出現し、次いで帝国に成長する過程、が、この本の主題だ。・・・
 著者の新しい米国史の概念的な核心は、国民国家が、諸帝国と区別される安定した政治形態であった試しがない、との主張だ。
 米国は、常に、新諸領域の帝国的征服を成し遂げ、次いでその新諸領域によって自身を維持する、ということを繰り返してきた。
 19世紀の欧州の諸国民国家が、まさに、国内の様々な社会的動乱を収めるために「第三世界」を略奪し搾取しなければならなかったように、米国という国民国家も、天然諸資源、諸新市場、そして、より安価な労働力、を求めて、外国に狩猟に出かける必要があった。
 もちろん、皮肉なのは、国の諸国境外での米帝国の勝利は、自分達の内なる米国という国民国家の弱体化をも意味したことだ。・・・」(F)

(続く)