太田述正コラム#8839(2017.1.7)
<ロシアに振り回される米国(その7)>(2017.4.23公開)

8 http://foreignpolicy.com/2016/12/23/the-kremlins-economic-grip-on-europe/ (12月24日アクセス)より

 「・・・<現在でも、>過去10年間の平均では、・・・セルビア、ブルガリア、ラトヴィア、ハンガリー、スロヴァキア・・・におけるロシアの経済的占有率(footprint)は、(ハンガリーとスロヴァキアの諸ケースにける)約11%からブルガリアの驚愕的な22%までに及んでいる。・・・
 <また、>この10年間で、この・・・5か国のロシアの天然ガスの国内消費におけるシェアは60%未満になったことがないし、2004年から、通常、80%超で推移してきた。
 ロシアに対する、このようなエネルギー依存とこれら諸国のEU諸市場への不十分な統合の故に、中欧及び東欧の諸国は、過去10年間にわたって、ドイツに比べて、ロシアの天然ガスのために10%から30%余計に支払い続けてきた。・・・
 <更にまた、>ロシアは、ブルガリア、セルビア、及び、ラトヴィア、において、諸投資がGDPの約10%を構成するところの、最大の投資国群の一つだ。・・・」

⇒だからどうしたって感じですねえ。(太田)

9 http://foreignpolicy.com/2016/12/24/what-china-didnt-learn-from-the-collapse-of-the-soviet-union/ (12月25日アクセス)より

 「・・・事実上、その諸鉄道の組織、から、党の構造、そして、少数民族政策に至るまで、初期の<中華>人民共和国のあらゆる様相がソ連のコピーだった。

⇒国の組織だの党の構造だのはさして重要ではないのであって、初期におけるソ連共産党の依拠基盤が都市/労働者であったのに対し中国共産党のそれは農村/農民であったこと、ソ連共産党が国軍を乗っ取ったのに対し中国共産党は党軍をゼロから作りついに国軍を持たないままであること、等が端的に示しているように、両者は似て非なるものです。
 なお、少数民族政策においても、中国共産党は、ソ連共産党のような、民族浄化や民族移転は基本的に行っていません。(太田)

 マルクス主義の理論家達が見たところによれば、ソ連同様、中共は、小作人封建主義から、産業資本主義を飛び越えて社会主義に移行した。
 しかし、<両者とも、>実際には、新しいナショナリズムと古い装いの帝国との融合物の上に社会主義の見せかけをぽいと乗せただけだった。

⇒ナショナリズムに関しては、ロシアの方は、帝政ロシア、ソ連、新制ロシア、の間、全くと言っていいほど変わっていないのに対し、中共の方は、辛亥革命以来の、新しく生まれた漢人ナショナリズムに依拠しており、両者の事情は異なります。(太田)

 そして、両者とも、大飢饉の後、(もともとはソ連の言葉であったところの、)文化革命と血腥い党諸粛清を行った。・・・
 <このような、ソ連のコピーたる中共の当局によって>採られた新路線は単純なものだった。

⇒以上からお分かりのように、中共はソ連のコピーであった、というのが、欧米、就中米国、の識者達の最大の誤解の一つであるわけです。(太田)
 
 すなわち、欧米、及び、この欧米を導き入れたゴルバチェフのようなソ連の指導者達、を非難する、というものだ。
 これが、中共において、どうして、外国の諸NGOを排除する過酷な新しい諸法が押し通されたのか、全国的メディが米国に対してより大きな敵意の金切り声をあげるようになってきたのか、検閲が強化されつつあるのか、の一つの理由だ。
 それと同時に、若干の欧米の観察者達が、かつて自信をもって予言したところの、政治的諸改革の兆候はない。・・・
 中共の最も深い恐れは、元ソ連の空間全域にわたった類の諸事例に似た、そして、アラブの春を解き放ったところの、体制変革に対するものだ。
 「カラー革命」、が<その>有用な文句だ。・・・
 これらの諸革命の全てが、米国によって計画され指示された諸陰謀<の結果>だ、という<中共当局の>信条は、単なるプロパガンダではなく、本当のものだ。・・・
 中共当局は、米国による民主主義と人権の推進は、米国の支配(dominance)を確保する手段に過ぎず、それに対しては、恒常的に抵抗しなければならない、と見ている。 
 <実際、>タブロイド紙の全球時報(Global Times)は、「平和的進化」は、カラー革命のもう一つの名前でしかない、と宣言している。
 一見したところ無害な文化的な諸生産物でさえもこれに巻き込まれてきた。・・・
 カラー諸革命とそれらが解き放った混沌、に対する敵意は、以上のようなわけで、過去に遡る形で投写されてきた。
 少なくとも、部分的には共産党自身の諸欠陥(failings)の結果である、とかつては見られていたところの、ソ連の終焉(fall)は、米国の計画的(deliberate)陰謀と欧米の影響に対する防戦に努めなかった道徳的失敗(failure)、の結果として再解釈されるようになったのだ。・・・」

⇒ここも、欧米、就中米国、の識者達の最大の誤解の一つです。
 中共当局は、(日本文明を全球的標準視していることから、)欧米流の民主主義も、また人権思想についても、誤りであり危険である、と見ており、それが米国の手段であろうとなかろうと、本来的に排除されなければならない、と考えているのです。
 (中共当局のゴルバチョフ批判は、彼が、欧米流の民主主義や人権思想を愚かにも理想視し、ソ連に導入したことに対する批判なのです。)(太田)

(続く)