太田述正コラム#8831(2017.1.3)
<ロシアに振り回される米国(その3)>(2017.4.19公開)

3 http://foreignpolicy.com/2016/12/22/the-birth-of-absurdistan/ (12月23日アクセス)より

 「・・・Serhii Plokhy<の>『最後の帝国--ソ連の最後の日々(The Last Empire: The Final Days of the Soviet Union)』<という本がある。>・・・

⇒前に記したことを思い出して欲しいのですが、清/中華民国/中共、が帝国である以上、こんなタイトルを付けただけで、そんな、欧米中心主義的な視野狭窄の著者が書いた本など読む価値は殆どない、と言ってよいでしょう。
 (調べる労を省きましたが、人口的にには、清/中華民国/中共全人口中の漢人の割合の方がソ連/ロシア全人口中のロシア人の割合よりも大きいのは事実ですが・・。)(太田)

 その抑圧と大量殺人の長い歴史を踏まえれば、ソ連がなくなることを見るのは特段残念だとは思わない。・・・

⇒「そのインディアンや黒人等に対する抑圧と中米、アジア、中東における大量殺人の長い歴史を踏まえれば」が当てはまる国の識者が、こういう表現を他国について用いることだけで、そんな人間は識者ではありえないし、そんな人間にコラムを書かせる雑誌(電子版)はゴミである、と言われても仕方ないでしょう。(太田)

 <ソ連崩壊後の旧ソ連人の>大部分の人々にとって、「市場」は、より良い生活に導く何かではなく、混沌の力、神秘と恐れの源泉、であり続けた。・・・
 <ある米国人>が、「もっと顧客達が来て欲しいと思わないか」、と<ソ連崩壊に>当惑している<カザフスタン人の>店主に尋ねた。
 「どうしてそう思わなければいけないんだ」、とその男は答えた。
 「もっとカネを稼ぐためだよ」、とその米国人は言った。
 「どうしてそんなことをしなければいけないんだ」、とその男は返した。・・・

⇒まるで、旧ソ連人が、野蛮であるか、指令経済下で人間性が歪められてしまったか、のような筆致ですが、企業人達が企業の存続を最大の目的として、匠の精神で財・サービスを提供し続けることを旨とする文明・・しかも至上の文明・・たる、日本文明が存在することを知ったら、この筆者は腰を抜かしそうですね。
 この筆者、70年以上にわたって、そんな文明の国の宗主国である国の国民なんですが、困ったものです。(太田)

 途方もなく、石油その他の自然の富に恵まれている共和国のカザフ人達は、市場志向の自由民主主義国を目指すべき<だった>のか、それとも、シンガポールやマレーシアのような専制的(despotic)資本主義の一形態を採用すべき<だった>のか、或いはまた、ペルシャ湾岸スタイルの首長的(sultanist)金権政治が、よりふさわし<かった>のか。・・・」

⇒人口が多いので、カザフスタンほどではないにせよ、ロシアも「石油その他の自然の富に恵まれている共和国」ではあるので、この思考実験は基本的にロシアにもあてはまるはずですが、ソ連崩壊時点で、既に、中共で改革開放が始まってから10年以上を経過していたわけであり、選択肢に、当時、カザフ人(ないしロシア人)にせよ、カザフスタン(ないしロシア)と関わりのあった米国人にせよ、それを含めなかったことが不思議でなりません。(太田)

4 http://foreignpolicy.com/2016/12/22/why-george-kennan-is-still-americas-most-relevant-russia-expert-trump-putin-ussr/ (12月23日アクセス)より

 「鼓吹源として、次期米政権は、<対露に係る>最後の成功を収めた事例であるところの、1991年12月25日のソ連の平和的解体が大団円となった、冷戦戦略を見つめるのが賢明だろう。
 それは、その創始者(founder)である、ジョージ・F・ケナン(George F. Kennan)を見つめることを意味する。・・・

⇒私自身、ケナンを米国における最初の有力冷戦提唱者として紹介してきたところですが、先回りして申し上げれば、「ケナンは、英国が抜けてから(東北アジアで)日本が単独で行ってきた対ソ(露)抑止政策なる看板を剽窃し、それがあたかも自分の創見であるかのように喧伝したけれど、彼が提唱した抑止政策の中身は日本のそれとは似て非なるものであって、米国の歴代政権が実際に始めた抑止政策は、ケナンの提唱したものではなく、日本によるそれを真似したものであったところ、それを、著しく拙劣な形で実行し続けてしまった」、というのが現在の私の考えです。(太田)

(続く)