太田述正コラム#8677(2016.10.18)
<植民地史を改竄した英国(その1)>(2017.2.1公開)

1 始めに

 イアン・コバイン(Ian Cobain)の『歴史盗賊達(The History Thieves)』のさわりの一部をその書評群をもとにご紹介し、私のコメントを付します。

A:https://www.theguardian.com/books/2016/oct/06/the-history-of-thieves-by-ian-cobain-review
(10月9日アクセス)
B:http://www.irishnews.com/opinion/columnists/2016/09/22/news/book-shines-light-on-murky-role-of-state-in-troubles-deaths-704473/  
(10月12日アクセス)
C:http://thejusticegap.com/2016/10/secrecy-hallmark-curse-british-government-centuries/

 「さわりの一部」としたのは、この本の抜粋が下掲の2サイトに載っている↓
http://www.irishtimes.com/culture/books/secrecy-and-northern-ireland-s-dirty-war-the-murder-of-pat-finucane-1.2796750
http://republican-news.org/current/news/2016/09/the_history_thieves.html#.V_3CrEk0OUk 
ところ、どちらも北アイルランド紛争の部分なので、(北アイルランドがかつては英植民地であったとはいえ、)話が拡散してしまうのと、原文そのままで記述が詳細かつ細か過ぎるので、扱わないことにしたからです。
 なお、コバイン(1960年〜)は、イギリスのリヴァプールに生まれ、ハーロー・カレッジ(Harlow College)卒で、1980年代初期からジャーナリストとして活動し、ザ・タイムス紙の記者を経て、現在は、ガーティアンの調査ルポライターを務めており、いくつも賞を受賞している、という人物です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Ian_Cobain
http://www.nctj.com/want-to-be-a-journalist/alumni/Ian-Cobain ←写真掲載
 ちなみに、ハーロー・カレッジは、パブリックスクールのハーロー校が創建したもので、コバインが卒業したNCTJ(National Council for the Training of Journalists)コースは、2年間で修了するものです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Harlow_College

2 植民地史を改竄した英国

 「ハーヴァード大の歴史学者のキャロライン・エルキンズ(Caroline Elkins)<(コラム#1046)>は、<ケニアでの>マウマウ団の蜂起の粉砕<とその際の手口の隠蔽>に関する彼女の著作で論議を巻き起こした。
 しかし、それは、英国の過去についての我々の見解を変改したところの、裁判事案の<提起>根拠(ground)を整えた。
 最初は、このような<植民地史改竄の>過程は行き当たりばったり的なもの(carefree)だった。
 1947年に英国がインドを去った時、一人の植民地官僚は、「諸文書の大量破壊でもってデリーの空に煙の帳が降りたのを、報道機関は大いに享受した」、と記したものだ。
 <しかし、>1957年にマラヤが独立した時になると、当局は、思慮分別を学んでいた。
 英陸軍の兵士達は、諸木枠箱に満杯の文書群を民間のトラックに載せて、この植民地の首都であるクアラルンプールから、行政官がシンガポールの「英海軍の素晴らしい焼却機」と言及した場所にまで運搬した。
 この、秘密の焼却に向けての220マイルの旅は、「英国政府、と、<英国に対して>余り好意的ではないかもしれないマラヤ人達、との間の諸関係の悪化を回避するために」、この植民地において「とられたかなりの諸労苦(pains)」を例証するものだった。
 その4年後の1961年に、<英>植民地相のイエイン・マクロイド(Iain Macleod)<(注1)>によって、独立準備中の英国の諸属領のための若干の諸規則(groundrules)が定められた。

 (注1)1913〜70年。英保守党の政治家で、過保護国家(nanny state)という言葉を作ったことで知られる。保健相、労働相の後、ハロルド・マクミラン首相の下で植民地相を務め、エドワード・ヒース首相の下で蔵相に任命されたが、その1か月後に急死した。
 スコットランド系イギリス人であり、ケンブリッジ大を劣等生として卒業したが、ブリッジの名手として、そしてまた、雄弁家として鳴らした。
https://en.wikipedia.org/wiki/Iain_Macleod

 継承体制に対して、女王陛下の政府ないしはその警察、軍隊、及び、公僕達、を困らせる(embarass)かもしれないような、或いは、その情報の諸典拠を明かしてしまう(compromise)かもしれない、若しくは、当該国の新政府によって「非倫理的に」用いられるかもしれない、文書群は手交されてはならない、との・・。・・・

(続く)