太田述正コラム#8487(2016.7.15)
<階級社会米国(その4)>(2016.10.29公開)

 (4)ジェファーソン

 「1786年に、トマス・ジェファーソンは、米国の民主主義の建国時の神話を明確に語った。
 「人と人の区別(distinction)は米国では存在したことがない」、と彼は記したのだ。
 この新しい国をより牧歌的なものであると思われるようにすべく、彼は、最も貧しい労働者も最も富んだ百万長者も、平等な土俵に立っているとし、それに、「生まれや勲章(badge)による区別」から解放された、急進的かつ前例のない平等の土地である、とのもの欲しげな主張を付け加えたものだ。
 もちろん、これは、完全なナンセンス(hogwash)だった。
 ジェファーソンがその生涯を通じて所有した約600人の奴隷達は、米国が無階級社会ではない一つの明白な証明だった。
 しかし、ジェファーソンが頭の中で描いていたと思われるところの、高度に限定的な集団たる、欧州人を先祖に持つ人々の間でさえ、諸階級の区別は極めて遍在的であったことから、最も貧しい白人達を描写するための、ありとあらゆる侮蔑(scorn)的な単語が存在していた。
 これらの諸言辞の若干は、今や廃れてしまっているが、<その一方で、>新しい悪口群(epithets)が出現してきている。
 厄介な阿保達(lubbers)、不法占拠者達(squatters)、貧乏白人達(crackers)、無学で貧しい田舎者達(clay-eaters)、南北戦争後に主に私欲のために再建政策を支持した南部白人達(scalawags)、南部の山岳地帯で育った田舎者達(hillbillies)、南部の貧しい白人達(rednecks)、トレーラー住まいの貧しい白人達(trailer trash)、アリゲーター狩人達(swamp people)<(注7)>、アイルランド野郎達(bogtrotters)、鼻つまみ者達(offscourings)、最底辺の者達(mudsills)、等がそうだ。

 (注7)ルイジアナ州のアリゲーター狩人達を取り上げたTVバラエティ・シリーズ(2010年〜)で有名になったが、300年前から存在している。
https://en.wikipedia.org/wiki/Swamp_People

 以上の全ては、侮蔑(contempt)という核心を共有している。
 ジョージ・オーウェル(George Orwell)をもじって言えば、若干の人々は、常にその他の人々よりも、もっと平等なのだ。」(A)

 (5)19世紀

 「この、アウトサイダー達をこの国の諸端っこ(margins)へと追いやるプロセスは、この共和国の初期から、みすぼらしい丸木小屋群に住んで、土地所有者となることを夢見つつも、その大部分が小作人達ないしは遍歴農業労働者達として額に汗して働き続けたところの、土地を持たない白人の入植者達が、アパラチア(Appalachia)の僻地や低地南部(lowland South)<(注8)>に流入し始めた、19世紀にかけて続いた、と彼女は主張する。」(C)

 (注8)南部中の北部たる、高地南部(Upland South)ないし上部南部(Upper South)に対するところの、下部南部(Lower South)ないし深南部(Deep South)のこと。
https://en.wikipedia.org/wiki/Upland_South
https://en.wikipedia.org/wiki/Upland_South#/media/File:Upland-South-map.jpg ←前者の図示
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%97%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%82%B9#/media/File:US_map-Deep_South.png ←後者の図示

 「こういった論議は、南北戦争中の北部諸州においてとりわけ盛んになった。
 アフリカ系米国人達の虐待(mistreatment)故に奴隷制は悪であると呼ばわるのは、相体的に啓蒙された人口諸区分<に属する人々>の間だけのことだった。
 そこで、南北戦争に道徳的正当性があると、より多くの人々を説得するために、この紛争を、貧しい白人達を奴隷制の悲惨な(dire)経済的、精神的諸効果から救い出す一つの方法である、と再構成(reframe)された。
 <そして、>19世紀末から20世紀初にかけて欧米を席巻した優生学運動は、貧しい白人達は、人間の、<自分達とは>区別される、より劣等な品種(breed)である、との古い観念に疑似科学的な見せかけ(veneer)的信憑性を提供した。」(A)

(続く)