太田述正コラム#8300(2016.3.27)
<2016.3.26東京オフ会次第(続)>(2016.7.28公開)

1 「講演」の補足

 「講演」の際に付け加えたことの一部をご披露しておきます。

 「戦後、国体が変わったかどうかの論争が東大法学部の法哲学の教授だった尾高朝雄と同じ法学部の憲法の教授であった宮沢俊義との間で1947年から49年にかけて行われた
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%BE%E9%AB%98%E3%83%BB%E5%AE%AE%E6%B2%A2%E8%AB%96%E4%BA%89
ところ、この論争には、国体が変わったと主張した宮沢が勝ったことになっているが、私に言わせれば、宮沢のは法技術論に過ぎず、尾高の勝利であったことは明らかだ。
 どうして尾高の方が筋が良かったかと言えば、尾高の方は、東大法を卒業してから、京大文学部に入り、学部・大学院で哲学を勉強し、その後、他大学で教鞭を執った後に東大に戻った
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%BE%E9%AB%98%E6%9C%9D%E9%9B%84
のだが、東大は、その前身の創立以来、一貫して、横のもの(欧米の学問)を縦にする(日本に輸入する)ことを旨とする学風であるところ、その点では東大にかなわないので、(玉石混交ではあるが、)日本人としての独創性を重視する自由闊達な京大の空気(典拠省略)に触れることができたのに対し、宮沢の方は、東大純粋培養だった
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%AE%E6%BE%A4%E4%BF%8A%E7%BE%A9
からだ、と私は見ている。
 (なお、宮沢は、日本国憲法について、押し付け憲法論の立場に立っていたが、その後、恐らくはGHQの圧力の下、この立場を豹変させているところ、まさに、彼は、権力の僕たる東大法「官僚」であった、と言えよう。(上掲))」

 なお、質疑の際に、私は、原稿には載せていたけれど「講演」の際には端折ったところの、醍醐天皇の后の話をして、この妃は同母妹だった、と語ったところ、そうではなく、父親たる宇多天皇の同母妹、つまり、叔母だった
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%BA%E5%AD%90%E5%86%85%E8%A6%AA%E7%8E%8B
ので、訂正しておきます。
 但し、その時に、昔の日本は、性や婚姻に関するタブーが殆どなかった、と述べたことは間違ってはいません。

2 質疑(Oは私)

A:どうして軍法会議・軍律法廷の設置を政府憲法解釈変更で行うことは困難だと太田さんは考えているのか。
 私学助成さえ合憲だとされているというのに・・。
O:前に説明したことがあるはずだが、改めて、やや踏み込んだ説明しておく。
 私学だけを対象にしているわけではない条文だが、憲法第89条(公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。)に言う、「公の支配」の意味について、柔軟な解釈をする余地がないわけではない
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%81%E5%AD%A6%E5%8A%A9%E6%88%90
のに対し、憲法第9条第2項(前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%B3%95%E7%AC%AC9%E6%9D%A1
は端的に軍隊保持を禁じているのであって、だからこそ、日本は軍隊ならぬ自衛隊を保持しているところ、自衛隊を他国の軍隊と全く同じものにしてしまう・・軍法会議・軍律法廷まで持たせてしまえば、全く同じものになってしまう・・と舌を噛んでしまう。
 その上、憲法第76条(第1項:最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。第2項:特別裁判所は、これを設置することができない)がある。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E5%88%A5%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%80
 つまり、軍法会議設置は明確に憲法違反にあたる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%8D%E6%B3%95%E4%BC%9A%E8%AD%B0 
 (軍律法廷への言及が上掲にはないが、同じことではないか、と一応考えられる。)
 以上の2点から、政府憲法解釈変更でもって軍法会議・軍律法廷を設置することまではできないのではないか、と私は思っているわけだ。
B:憲法第9条第2項についての芦田解釈を政府が採用しても、ダメなのか。
O:その場合、残る「障害」は憲法第76条だけにはなるが、やはり無理なのではないか。
B:自衛隊に対するポジ規制をネガ規制に改めることは政府憲法解釈変更なしでもできるのか。
O:できると思う。