太田述正コラム#8276(2016.3.15)
<私の現在の事情(続x77)>(2016.7.16公開)

1 始めに

 昨夕は、レオナルド・ダ・ヴィンチ展(江戸東京博物館)
https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/s-exhibition/special/3807/%E3%83%AC%E3%82%AA%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%80%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%BC%E5%A4%A9%E6%89%8D%E3%81%AE%E6%8C%91%E6%88%A6/ ☆
の内覧会に行ってきました。
 「両陛下がダ・ヴィンチ展を見学・・・」
http://mainichi.jp/articles/20160311/k00/00m/040/061000c
という記事を14日に読んでいたこともあり、かなり期待して赴いたのですが、期待外れでした。
 何せ、ダ・ヴィンチ本人によるまともな作品は『糸巻きの聖母』(前掲の☆に載っている)だけであり、しかも、この作品、小品であるというのに、近くに寄って見ることが許されず、その上、作品保護のため照明が暗い、と来ていたからです。
 なお、この展覧会のもう一つのウリは、ダ・ヴィンチの科学的探究スケッチ入りメモである『鳥の飛翔に関する手稿』ですが、そんなもの、科学史における、孤立した挿話的資料以上でも以下でもないのであって、我々「一般人」にはさして面白くも何ともありません。
 その代わり、ということなのかもしれませんが、ダ・ヴィンチの生涯の紹介とか、建築家としてのダ・ヴィンチの素描から忠実に再現した関連模型の展示とか、学芸員がかなり頑張ってはくれていましたが・・。

2 所見

 しかし、学芸員諸氏、どうせ頑張るのなら、ダ・ヴィンチの創作意欲がどこから来たのかについての諸説
https://en.wikipedia.org/wiki/Personal_life_of_Leonardo_da_Vinci
を調べて紹介して欲しかったですね。
 ダ・ヴィンチには異性愛の痕跡が全くなく、存命中から同性愛を疑われていたけれど、こちらについても、(いくら中世欧州の同性愛禁忌が凄まじかったとはいえ、)状況証拠すら十分にあるとは言えません。
 それどころか、彼は、「生殖行為ないしそれと関連するあらゆるものは、この上もなく胸糞が悪い(The act of procreation and anything that has any relation to it is so disgusting)」、なんていう言葉まで残しています。(上掲)
 私は、芸術家の創作意欲は、(異性ないし同性、或いは両性に対する)恋愛感情が原動力になっていて、それを昇華させたものが作品である、と考えているので、他人にとっては知りませんが、私にとってはダ・ヴィンチのケースは大問題なのです。
 確かに、偉人で生涯独身を通したというケースは少なくありません。
 独身クリエイター達中、文学者までは基本的に手を伸ばさず、音楽家と芸術家に限定して、一般にあげられる人々↓
http://oshiete.goo.ne.jp/watch/entry/ad863eb9a0bb63218c9b41aea102bbf3/
についてちょっと調べてみました。

 まず、独身音楽家達ですが、以下の通り、恋愛と無縁であった人はいません。

●ベート−ベン:何度も浮名を流した。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%92%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3
●シューベルト:梅毒で亡くなった可能性が大。
https://en.wikipedia.org/wiki/Franz_Schubert
●ブラームス:クララ・シューマンへの、その夫シューマン存命中からの愛は有名。
https://en.wikipedia.org/wiki/Johannes_Brahms

 独身文学者達についても、一人だけ調べてみました。やっぱり同じです。

●アンデルセン:失恋の連続だった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%83%B3

 最後に、ダ・ヴィンチと同じ独身芸術家達ですが、もちろん、同じです。

●ミケランジェロ:両刀使いであった可能性が大。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B1%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AD%E3%83%BB%E3%83%96%E3%82%AA%E3%83%8A%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3
●ギュスタブ・モロー:25年間にわたる事実婚状態の女性がいた可能性が高い。
https://en.wikipedia.org/wiki/Gustave_Moreau

3 終わりに

 この日は、雨でしかも寒さが身に染みる悪天候でしたが、イタリアとの修好150年記念行事の一環として、ボッティチェリ展
http://www.tobikan.jp/exhibition/h27_botticelli.html
ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち展
http://www.tbs.co.jp/venice2016/
やカラバッジョ展
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2016caravaggio.html
と並行して行われている展覧会である、という点を考慮するとしても、展示内容の薄さが、なんだか、日本の地位の低下を反映しているようで、一層、寒々とした思いを抱いて帰途につきました。