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太田述正コラム#8248(2016.3.1)
<生態系について(その1)>(2016.7.2公開)

1 始めに

 ショーン・B・キャロル(Sean B Carroll)の新著、『セレンゲティの法則--生命はいかに機能し何故それが重要か(The Serengeti Rules: The Quest to Discover How Life Works and Why It Matters)』のさわりを諸書評をもとにご紹介し、私のコメントを付します。

A:http://www.ft.com/intl/cms/s/0/8e31e09e-dba3-11e5-a72f-1e7744c66818.html
(2月27日アクセス)
B:http://scienceblogs.com/gregladen/2016/02/11/the-serengeti-rules-the-quest-to-discover-how-life-works-and-why-it-matters-book-review/
(2月29日アクセス(以下同じ))
C:http://www.examiner.com/review/why-the-serengeti-rules-needs-to-be-read-by-all-before-the-next-election
D:https://thedotingskeptic.wordpress.com/tag/serengeti-rules/

 なお、キャロル(1960年〜)は、ワシントン大セントルイス校卒、タフト大博士(免疫学)で、現在、ウィスコンシン・マディソン大の分子生物学・遺伝学の教授です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Sean_B._Carroll

2 生態系について

 (1)序

 「・・・キャロルの「セレンゲティ(Serengeti)<(注1)>の法則」は、より正確な物理学や化学の諸法則と混同されてはならない。

 (注1)「タンザニア連合共和国北部の<三つの>・・・州にまたがる、自然保護を目的とした国立公園。アフリカで一番良く知られた国立公園の1つ。1981年にユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録された。・・・キリマンジャロの裾野に広がる大サバンナ地帯にある・・・広さは14,763km2。・・・ケニア・・・のマサイマラ国立保護区<と>・・・隣接している<が、>・・・さまざまな動物が約300万頭生息していると推定されている。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%86%E3%82%A3%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E5%85%AC%E5%9C%92

 これらの生物学の法則は、その<固有の>事情から<物理学や化学の法則とは>異なっているのだが、「全般的な論理は<それらと>顕著に類似している」ことを彼は示している。・・・」(A)

 「・・・キャロルは分子生物学者であり、受けた訓練とやっていることと言えば、制御(regulation)<(注2)>、すなわち、同定(identifying)、特徴付け(characterizing)、理解(figuring out)だ。

 (注2)フィードバック制御(feedback regulation)。「一般的に、ある反応や系が原因となって生じた事象が、もとの反応や系に影響をもたらすこと。抑制的に働く負のフィードバック(負帰還)と促進的に働く正のフィードバック(正帰還)があり、自動制御の原理である。生物では、ホメオスタシスを維持する重要な機能である。」
http://www.weblio.jp/content/feedback+regulation

⇒この本全体の趣旨からして、「制御」は「フィードバック制御」のことだと私は解しました。もっとも、そう解すると、「すなわち」以下の説明がいささかそぐわないのですが・・。(太田)

 キャロルがこの本でやったことは、この観点を大数的に生物の諸システムに適用して、諸細胞の中での諸事柄、及び、主要な諸エコシステムの中での諸事柄、を見ることだ。
 この本のタイトルは、サファリをしに行った観光客としてセレンゲティを訪問した自分自身の経験、と、この特定の生態系(eco-system)が世界中で最もよく研究されているものの一つであるという事実、から来ている。・・・
 <しかし、>キャロルがやったことは、非常に危険でしばしばうまくはいかない何物かなのだ。
 彼は、その大部分が細胞内の、小規模の生物諸システムに係る<自身の>通暁に由来する洞察、に加えて、<フィードバック>制御という比較の基準の使用、を、この洞察を、生態学に強い焦点を当てた形で生物諸システム一般を観察し描写し理解するための資としている。
 科学者が、こういうことをやろうとして、自分達の通常の領域を踏み越えると、我々は、往々にしてがっかりさせられるものだ。
 というのも、実際、それは容易なことではないし、時として、そういう跳躍を行うことは適切ではないからだ。
 しかし、今回は、実にうまく行ったと言うべきだろう。
 キャロルの本は、特定のことから一般のことへと赴いた、素晴らしい成功事例だ。・・・」(B)

(続く)

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