太田述正コラム#8134(2016.1.4)
<>(2016.4.20公開)

 「「<沖縄の>面積の18パーセントが米軍基地だ」と言いましたが、上空は100パーセントなのです。
 米軍機はアメリカ人の住宅上空以外、どこでも自由に飛べるし、どれだけ低空を飛んでもいい。
 なにをしてもいいのです。
 日本の法律も、アメリカの法律も、まったく適用されない状況にあります。
 さらに言えば、これはほとんどの人が知らないことですが、実は地上も潜在的には100パーセント支配されているのです。
 どういうことかというと、たとえば米軍機の墜落事故が起きたとき、米軍はその事故現場の周囲を封鎖し、日本の警察や関係者の立ち入りを拒否する法的権利をもっている。・・・
 その理由は1953年に日米両政府が正式に合意した次の取り決めが、現在でも効力をもっているからです。・・・
 「日本国の当局は、(略)所在地のいかんを問わず合衆国の財産について、捜索、差し押さえ、または検証を行なう権利を行使しない」(日米行政協定第17条を改正する議定書に関する合意された公式議事録」1953年9月29日/東京)・・・
 <これは、>つまり、米軍基地のなかだけでなく、「アメリカ政府の財産がある場所」は、どこでも一瞬にして治外法権エリアになるということを意味している<の>です。・・・
 東京を中心とする首都圏上空にも、嘉手納空域と同じ、横田空域という米軍の管理空域があって、日本の飛行機はそこを飛べないようになってい<ます。>・・・
 まったく沖縄と同じなのです。・・・
 先ほどご紹介した1953年の合意・・・というのも、アメリカと沖縄ではなく、アメリカと日本全体で結ばれた取り決めです。・・・
 だから・・・米軍が日本国憲法を超えた存在であるというのも、日本全国おなじことなのです。・・・
 本土は1952年の講和条約、沖縄は1972年の本土復帰によって主権を回復したことになっていますが、実際は軍事的な占領状態が継続したということです。」(30〜32、34〜36)

⇒矢部のこのくだりは全然ダメです。
 韓国は日本の朝鮮植民地統治・・正確には合併統治ですが・・を欧米諸国の植民地統治と比較することなく、それが実は近現代の植民地統治中最も植民地側に有利かつ文明的であったにもかかわらず、口を極めて罵倒してきたわけですが、矢部は、それに類似したところの、基本的に筋違いの主張を行っているからです。
 米軍が米軍駐留先の各国と取り交わしている地位協定群は、世界中で基本的に同一内容・・そうしなければ、俺達の国を差別したとして収拾がつかなくなりますし、そもそも、地位協定には軍事合理性があるのであって、(引用の労はは省かせてもらいますが、)自衛隊が、駐留先のたとえばジブチと取り交わしている地位協定だって、日米間の協定ほど包括的なものではないでしょうが、取り交わしている部分については、同じような内容のものであるはずです・・なのであって、その限りにおいては、いかなる米軍駐留国においても、「米軍<は駐留国の>憲法を超えた存在である」わけですからね。
 従って、米軍駐留そのものの是非はともかくとして、日本における米軍駐留の問題は、矢部の言うように、「軍事的な占領状態が継続した」ところにあることは確かであるものの、法的に米軍の超憲法性なる「占領状態」が継続していることが問題なのではなく、日本が主権を回復した時点、或いは、少なくとも日米安保が1960年に改訂された時点において、そして、沖縄に関しては、本土復帰した時点において、実態として、在日米軍基地・区域の廃止、及び、都市圏から人口過疎地域への移転・集約、が抜本的な形でなされなかったことこそが問題なのです。
 私が、累次、指摘してきたように、日本の政治経済中枢であるところの、首都圏に在日米陸海空軍の最重要基地が存在し、首都圏上空を米軍が管制していることに象徴されているように、日本の人口密集地に米軍が所在しているのは、日本を占領・統治する観点からは合理的な態勢なのであり、その態勢が現在もなお維持されていることは、とりもなおさず、日本が法的にはともかく・・私は片務的な日米安保である以上、日本は法的にも米国の属国であると指摘しているところですが・・、実態としては占領期のままであっていつでも日本政府の機能を軍事力によって停止させて米国が日本を直接統治することができることを意味しているのです。
 しかも、そのことは、日本の人口密集地において、米軍が武器弾薬を貯蔵するとともに、その上空を(民航機に比較して安全性が低い)軍用機が自由に飛び回ることをも意味しており、危険極まりないのです。(太田)
 
(続く)