太田述正コラム#7994(2015.10.26)
<仙台オフ会(2015.10.24)次第(その3)>(2016.2.10公開)

 (このやりとりの頃は疲れがピークに達していたこともあり、どう答えたのか定かではないので、以下は、改めて考えてみたものです。)
 支那の歴代王朝の本音は墨家の思想である、との日本人学者の説を私は買っているのだが、それは、戦争の回避を至上命題とするところの、唯物主義的(経済至上主義的)な思想だ。
 だから、外敵に軍事力で対抗するよりも、外敵をカネやモノで籠絡する方を推奨する。
 そんな思想の下では、精強な軍事力の整備維持はできない。
 その結果、圧倒的な経済力及び人口の差にも関わらず、カネで籠絡し切れなかったところの、遊牧民系の周辺諸勢力に、広大かつ重要な国土を奪われることなど日常茶飯事であり、元や清のケースのように、全国土を奪われてしまったりすることさえあった。
 他方、日本では、弥生系を中核とするところの、精強な軍事力が整備維持され、(島国であるというメリットも与って、)先の大戦の場合を唯一の例外として、その独立を一貫して確保してくることができた。
 つまり、中共にとって、日本は、人間主義/日本型政治経済体制の師範であるのみならず、軍事についても、仰ぎ見る師範格たる存在なのだ。
 その中共としては、現在進行形の日本化の最終フェーズにおいて、(人間主義そのものの継受のほか、中央レベルにおける選挙制の導入を含む)日本型政治体制の全面的継受も行わなければならないところ、そんな微妙で不安定な時期に、欧米、就中(嫌悪の対象たる)米国から有形無形の干渉を受けることを極度に恐れているはずであり、日本と思想的・政治経済的に提携するだけでなく、軍事的にも提携することによって、かかる米国からの干渉を跳ね返したいのだ。
 そのためには、可及的速やかに日本を米国から「独立」させることが必要である、ということだ。
C:日本が「独立」すること自体はいいことだとしても、日本が孤立してしまう惧れはないのか。
O:日中が提携する以上、日本が孤立することはありえないわけだが、もう少し補足しておく。
 中共の経済成長率が今後どんどん鈍化して行くとしても今世紀の前半中にはその経済力が世界一になる可能性が高い。その頃、日本の経済力の順位は更に2〜3位は低下しているだろうが、この二カ国を合わせただけでもその存在感は、現在の米国のそれを上回っていることだろう。
 しかも、その時点で、(まだ同じ国名かどうかは知らないが、)中共と提携関係に入っている国は、日本以外にも、(相当の経済力を有するに至っているであろう国を含め、)アジアだけでも多数に上っているに違いない。
 そして、アジア以外でも・・。
 つまり、中共が文字通り世界の中心になるわけだ。
 それは、かつての「中華」たる支那の歴代王朝が華夷秩序の頂点に立った東アジア世界の拡大再来版だ。
 (かつてのそれとの違いは、規模だけではなく、「中華」が日本化し、日本を師範として立てる「中華」であることだ。)
 だから、日本が孤立する、などということはありえない。
 念のためだが、忘れてはならないのは、先ほど既に示唆したように、かつての華夷秩序は、(朝貢に対してそれ以上のお返しを下賜するところの、)「中華」側の持ち出しによって成り立っていたことだ。
 沖縄の人々が中共を脅威だとは思わないのは、支那の歴代王朝から武力干渉を受けたことすらなく、華夷秩序のメリットだけを享受してきたからだ。
 (華夷秩序の下、沖縄とは違って何度も武力干渉を受けてきた朝鮮半島の人々にさえ、その傾向が相当程度見られるのは興味深い。)
 だから、拡大再来版の華夷秩序も、(日本は別格として、)中共が提携関係にある諸国を搾取するようなものには、少なくともならないはずだ。
D:太田さんは、民主党から選挙に出られたようだが、自分は一貫して自民党支持者なので、おやおや、と思った。
O:自民党は国賊だ。
 当時の防衛庁関係者、とりわけ自衛官達の間では、自民党に対してそれに近い意識の人が多かったのではないか。
 だからこそ、自民党の防衛庁出身議員がゼロになってしまっていた。
 だから、私が民主党から出たのは、ごく自然なことだったのだ。
 その後、ヒゲの隊長が自民党から立候補して当選したが、憤りを禁じ得ない。
 その関連で申し上げておくが、更にその後、民主党政権ができた時、しばらく音信不通だった、私の友人の中共の軍人が久しぶりにメールを寄越したところ、「素晴らしいことだ、おめでとう」的なことが書いてあった。
 彼とは英国防大学の同期だが、初対面の時に、私が、先の戦争では多大の被害を貴国に与え、大変申し訳なかった、と彼に言ったところ、笑いながら、謝る必要なんかまったくないよ、と返されていささか怪訝な思いをしたことも、よく覚えている。
 今にして思えば、どちらも、中共当局者の間での共有認識・・一、先の戦争については日本にはむしろ感謝している。二、歴代自民党政権の対米従属姿勢はなげかわしい限りだったが、民主党政権樹立は日本の対米「独立」のきっかけになりうる慶事だ。・・を踏まえた彼の、半ば公的な対応だった、ということだ。
 この個人的体験は、本日の私の話の信憑性を補強するものだと最近考えるに至っている。