太田述正コラム#7900(2015.9.9)
<米国人の黙示録的思考(その10)>(2015.12.25公開)

 「・・・サットンは、・・・「キリスト教原理主義者達は、暴力的に、かつ悲劇的に、この世界は終わろうとしていると信じた」、と記す。
 このような野心的な研究が、こんな傲慢に思える間違い(willful-looking stumble)から始まることは気になる。
 米国のキリスト教原理主義運動は、事実、世界が切迫的にかつ暴力的に終わろうとしていると信じはしたけれど、彼らはその出来事の中に悲劇の要素は見なかった。
 実際、彼らは、再臨の到来直前の15分がいつになるのかに至るまで、予想することに飽きることなど決してなく、熱意を持ってそれを予期したのだ。

⇒世界の終末は、キリスト教徒、就中、自分達のような福音主義者達、にとっては「主観的には」喜ばしいことではあるもの、それ以外の人々、すなわち、世界の多数の人々にとっては悲劇なので、「客観的には」悲しいことである、ということではないでしょうか。(太田)

 この意味においては(On this level)、米国のキリスト教原理主義は、最も長い期間、最も間違ってきた、という、うさんくさい栄誉(dubious distinction)に値する。
 この運動は、他にも、たくさん、うさんくさい諸栄誉に値するのだが、サットンのこの本を読んでいると、彼がその大部分について、議論するどころか、言及することにすら、関心を持っていないことが分かる。
 ある部分、サットンは、20世紀におけるキリスト教原理主義についての典型的な語り・・すなわち、20世紀の最初の10年間はこの運動は流行ったけれど、1925年のスコープス「猿裁判」の結果つまずき、1950年代に至るまで大衆の想像力の中で蘇ることがなかった・・を書き換えようとしている。
 そして、このサットンの本はそれに・・・成功している。
 すなわち、本件に関する多くの側面に関して、この本は、先行する全ての学術的諸説明に手際よく取って代わることになろう。
 しかし、この優位は極めて大きなコストを伴っている。
 この著者の説明は、ナイーヴな、ないしは、不気味に共謀的な、軽信によって活気づけられたものだ。
 キリスト教原理主義運動の指導者達は、「この国の、北、南、東、そして西のあらゆる部分からやってきたし、あらゆる経済諸階級と教育程度を代表していた」、と彼は記すが、これは、感情的な代物であって、健全な歴史<記述>ではない。
 というのも、彼が記している著名な男達は、殆んどみんな、貧しい、或いは、余り教育を受けていない、白人たる南部人達というランクの出身だからだ。

⇒「指導者」に関しては、その定義にもよるけれど、サットンの記述があながち間違ってはいないことはお分かりでしょう。(太田)

 そして、彼は、更に幻想的に続ける。
 「主唱者達は、しばしば、キリスト教原理主義を「昔からの(old-time)宗教」、或いは、「保守的」信仰(faith)と同定したが、それは殆んど伝統的ないし保守的ではなかった」、と彼は記す。
 「すなわち、キリスト教原理主義者達は、過去からの何かを保守しようとしているのではないのであり、それどころか、事情に精通している宗教的革新者達なのだ」、と。
 これは、甚だしく事実に反する。
 サットン自身が我々に伝えるように、キリスト教原理主義的な福音主義者達は、みんな、前千年王国説信奉者達(premillennarians)なのだ。

⇒前千年王国説に着目するのならば、この書評子よりサットンの方にやや理がある、と言うべきでしょう。(下掲参照。)
 「前千年王国説(千年期前再臨説<)は、>・・・千年王国を文字通り解釈<する説であり、>歴史的には3世紀までの初代教会がこの立場であった。・・・<これに対し、>3.無千年王国説(文字通りの存在ではなく、霊的、天的なものとする説)<は、>・・・コンスタンティヌス大帝後、ローマ帝国が国教化し、アウグスティヌスが『神の国第2巻』で唱えてからローマ・カトリックで支配的になった考えである。正教会、プロテスタント等、伝統教派は地上の教会が神の国であるとし、前千年王国説を否定している。・・・<なお、このほか、>2.後千年王国説(千年期後再臨説-千年期の後にイエス・キリストが再臨するとする説)<もある。>」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%83%E5%B9%B4%E7%8E%8B%E5%9B%BD (太田)

 (彼らは、「ヴィクトリア期の思想や言語」にしがみつく。ウィリアム・ウォード・エイヤー(William Ward Ayer)<(注33)>が嬉しそうに行ったコメントによれば、「神の人々は概して後ろ向き(backward)なのだ」。)

 (注33)1892〜?年。カナダ生まれで無学歴。福音主義の説教師にして伝道放送者。一時期、ローズベルト夫人らに次いで、ニューヨーク市で著名度において3番目の人物だった。
http://www.inportercounty.org/Data/Biographies/Ayer42.html
https://en.wikipedia.org/wiki/Calvary_Baptist_Church_(Manhattan)

 また、それこそ、それ以上不可能なほど伝統的であるわけだが、彼らは聖書の文字通りの無謬性を信じている。
 ほぼ一人残らず、彼らは、女性達が教会内で静かにしており、黒人達は林の樵や水汲みであって、真の革新者達は速やかに石打ち刑に処せられる、前近代世界を夢見たのだ。

⇒福音主義者達の政治的スタンスに関しては、保守的そのものだ、というこの書評子の指摘は首肯できます。(太田)

(続く)