太田述正コラム#7882(2015.8.31)
<米国人の黙示録的思考(その1)>(2015.12.16公開)

1 始めに

 そろそろ、再度、現在の日本人の多くが仰ぎ見ているところの、宗主国たる米国を取り上げることにしましょう。
 マシュー・エイヴリー・サットン(Matthew Avery Sutton)の『米国の黙示(American Apocalypse)』の概要を書評類をもとにご紹介し、私のコメントを付そうと思います。
 これまで、何度も米国とキリスト教をテーマにしたコラムやシリーズを書いてきていますが、いまだに、よりもっともらしい新しい史観が出現するのは驚きであり、米国の史学界はもちろんですが、米国以外の米国史学者達の怠慢が責められなければなりますまい。
 とりわけ、世界で最も米国に通暁しているはずのイギリスの米国史学者達に対しては、米国に過度に批判的なことを書くのを躊躇って、意識的怠業をしているのか、と言いたくなります。

A:http://www.theguardian.com/books/2015/aug/07/american-apocalypse-a-history-of-modern-evangelicalism-matthew-avery-sutton-review
(8月8日アクセス(以下、特に断っていないものは書評)
B:http://blogs.lse.ac.uk/usappblog/2015/02/08/book-review-american-apocalypse-a-history-of-modern-evangelicalism-by-matthew-avery-sutton/
(8月28日アクセス(以下同じ))
C:http://www.wsj.com/articles/book-review-american-apocalypse-by-matthew-avery-sutton-1421798091
D:http://www.irishtimes.com/culture/books/american-apocalypse-by-matthew-sutton-the-power-of-the-preachers-1.2052975
E:http://www.nationalmemo.com/book-review-american-apocalypse/
F:http://religiondispatches.org/its-the-apocalypse-stupid-understanding-christian-opposition-to-obamacare-civil-rights-new-deal-and-more/
(著者のインタビュー)
G:http://www.christiantoday.com/article/apocalypse.soon.how.end.times.theology.drives.american.evangelicals/44280.htm
H:http://www.dts.edu/reviews/american-apocalypse-a-history-of-modern-evangelicalism-matthew-avery-sutton/
I:http://www.openlettersmonthly.com/book-review-american-apocalypse/
J:http://www.washingtonpost.com/news/acts-of-faith/wp/2015/04/22/could-vladimir-putin-battle-the-antichrist-how-some-evangelicals-debate-the-end-times/
(著者によるプーチン論)

 (http://www.nytimes.com/2011/09/26/opinion/why-the-antichrist-matters-in-politics.html?_r=0
(著者による予告編的解説)は参照したが用いなかった。)

 なお、サットン(1975年〜)は、カリフォルニア大サンタバーバラ校で博士号を取得し、現在ワシントン州立大教授として、20世紀米国宗教史を教えていて、これまでに、米国内はもとより、英国及び欧州各地の大学で研究・・フルブライト奨学生としてアイルランドの大学で研究・・したり教鞭を執ったりしたことがある人物です。(H、及び下掲。
http://libarts.wsu.edu/history/faculty-staff/sutton.asp
 (どうして、日本の大学は彼を呼んで話をさせていないのか、も大変気になります。)

2 米国人の黙示録的思考

 (1)序

 サットンは、「・・・この研究を始めるきっかけになった疑問は、どうして、キリスト教原理主義者達や彼らの福音主義的継承者達が国家に対して懐疑的なのか、どうして彼らは連邦政府に対して批判的であったし現在も批判的なのか、だった。
 私は、このことについて、過去数十年の医療保険(health care)に関する諸議論の文脈の中で考え始めた。
 どうして、かくも多くのキリスト教徒達が、国家(national)医療保険に消極的なのか、と。
 私は、彼らが同性愛者の諸権利に関して民主党に批判的なのがなぜかは理解できた。
 彼らが妊娠中絶に批判的なのがなぜかも理解できた。
 私が理解できなかったのは、保守的で聖書を信じるキリスト教徒達たるあなた方が、なぜ医療保険を拡大することに反対するのか、だ。
 この本は、この疑問に対する、とても長い、480頁もの回答なのだ。・・・」(F)と自ら語っている。

 「この、サットンによる年代記は、福音主義(evangelicalism)の規模と政治的影響力を説明する新たな試みだ。
 彼が、これまでの諸業績と違うのは、黙示信仰(apocalypticism)・・この世はすぐに終末を迎えるとの信条・・を突出<した重要性あるものと>させている点だ。
 1920年代のキリスト教原理主義から1990年代及びそれ以降の宗教右派(Religious Right)に至る、福音主義的プロテスタンティズムを作動させるものは、イエスの再臨が世界の大変動的(cataclysmic)破壊と時期的に一致する、という信条であることを彼は示唆する。・・・」(C)

 「・・・<宗教右派的な人々>は、今なお、<米国社会の>隅にたむろする存在であると見られており、学者達、お笑い芸人達、そして、社会メディアの住民達(denizens)、によって嘲笑用の安い(easy)飼葉(fodder)として使われている。・・・」(E)

 「この本の中心的な強みは、急進的な福音主義運動内部における人種的諸差異や諸限界についての注意深い分析にある。
 それは、常に白人男性達によって支配されてきており、20世紀初頭に確固たるものとなったところの、人種的諸亀裂は、現在においてもなお存在している、というのだ。・・・」(B)

(続く)