太田述正コラム#7814(2015.7.28)
<2015.7.25東京オフ会次第(その4)>(2015.11.12公開)

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[参考:東芝とウェスティングハウス]

 Gさんは、お父さんからヒントをもらって、自分で、ネット上に公開されている東芝の暦年のバランスシートを見て、上掲仮説に到達したと言っていたが、類似の指摘が、例えば、下掲の2つのコラムでなされている。↓

 「・・・東芝の不適切会計問題、貸借対照表(B/S)を見ると理由が分かる?・・・
 のれん代。会社を守るためには、利益計画の達成は必須。大本をたどると、原発事業のM&A失敗に行きつく可能性があります。・・・
 社運を賭けた一大プロジェクトだった原発事業=ウェスティングハウスの買収(M&A)は、福島第一原発の事故で見事に頓挫してしまった・・・
 ウェスティングハウスの「のれん代」が6,000億円としても、それがなければ東芝のB/Sも随分と楽になっており、東芝の現状は賭けに失敗した帰結、と言えなくもありません。・・・」
http://kabu-press.com/news/toshiba-bs/
(7月17日付)
 「・・・焦点の1つは、2006年に54億ドル(当時の為替レートで約6400億円)で買収した米原子力プラント大手「ウエスチングハウス(WH)」の行方である。・・・
 アナリストや経済ジャーナリストたちの間から一斉に「火ダネは原発事業ではないか」との観測が飛び交った。」
http://www.fsight.jp/articles/-/40284
(7月22日付)

 ちなみに、東芝のウェスティングハウス買収に係る基本的事実関係は次の通りだ。↓

 「ウェスティングハウス・エレクトリック<は、>・・・電気、機械関係を中心に軍事用・民生用の双方で多岐に渡る事業を展開。1950年代以降は加圧水型原子炉(PWR)の開発・製造で独占的地位を占めた。しかし、1980年代頃からそれまでの中心事業の売却や分離が相次ぐようになる。・・・1998年には最後に残っていた製造部門である原子力部門も英国核燃料会社 (BNFL)社に売却した。・・・
 <この原子力部門は、>2006年からは東芝グループ<傘下>となっている。・・・
 そして最終的に1999年、<放送部門>もバイアコムによって買収され、1886年に創業した<米国>の歴史的企業はその幕を閉じた。・・・」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF
 「英国核燃料(・・・British Nuclear Fuels Limited、BNFL)はかつて存在した<英国>政府所有の持株会社。MOX燃料などの核燃料の生産と輸送、原子炉の運営、発電および売電、セラフィールドなどでの使用済み燃料の管理および再処理、原子力施設の廃止措置や原子炉廃炉などイギリスの原子力産業で中心的役割を担っていた。・・・2010年10月14日、・・・BNFLが・・・廃止されること<が決定された。>」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8B%B1%E5%9B%BD%E6%A0%B8%E7%87%83%E6%96%99%E4%BC%9A%E7%A4%BE
 セラフィールド原子力施設:「20世紀後半頃からは受け入れ使用済み核燃料の全収容量の4分の1近くが日本からのものに想定されていたほど日本との関わりが深<いが、>・・・存続の危機が指摘されている。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89

 上記セラフィールド原子力施設は、1988年の英留当時、国防大学の英国内見学旅行・・私が選択したのはイギリス北西部・・で訪問したことがある。
 さて、日経は、不祥事発覚後、これだけ時間が経ちながら、依然、ウェスティングハウス問題に全く触れない記事を掲げている。

 「発端は1月下旬、東芝の経理担当者あてにかかってきた1本の電話だった。電話の向こうの声は「証券取引等監視委員会の開示検査課」と名乗った。「インフラ事業の会計処理でいくつか聞きたいことがあります。資料を用意してください」
 調査は東芝からの内部通報がきっかけだ。調査官が東京・浜松町の東芝本社を訪れたのは2週間後。冬晴れの空が広がる2月12日のことだった。・・・
 最終的に影響額は1562億円まで膨らむ。・・・」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD27H1P_X20C15A7EA1000/?dg=1
(7月28日付)

 この日経による買収発表前後の本件についてのFT記事の、明るい前向きのトーンが面白い。
 まだ、記事内容に日経の影響力が行使されたはずはないわけだが、土地勘が大いにあるはずのウェスティングハウス問題への言及が全くない。↓

 「日本有数の企業グループにしてコーポレートガバナンス(企業統治)改革の旗手と見なされていた東芝の大失態は、麻生氏の言う通り深刻な問題だ。2011年にマイケル・ウッドワード社長が明るみに出したオリンパスの17億ドルの損失隠しとともに、会計操作に傾きがちな日本企業の姿を示唆している。しかし、海外投資家は日本を見切って引き揚げるべきではない。
 <「日本は不完全な市場」なのではなく、「日本では市場は補完的な存在」なのだし、「企業行動の浄化へ」の思いは、かねてより企業内従業員全員が共有する思いなのだが、会計不祥事の防止は、前にも指摘したように、監査法人の準国家機関化、公認会計士の準国家公務員化(及び、これらへの強制調査権の付与)でしか、対処不可能だろう。(太田)↓>
 むしろ逆が正しい。これは機会だ──次に不祥事に見舞われそうな企業の株を空売りするにせよ、行動を改めることを迫られそうな企業の株を買うにせよ、その両方をするにせよ、だ。日本は不完全な市場だ。また、企業行動の浄化へ向かう歩みは遅々として揺れも大きいが、断固として進んでいる。この両方が投資機会につながっている。
 山一証券、カネボウ、日興コーディアル、ライブドアなど、日本ではこの20年、不祥事が続出しているが、これは日本固有の問題ではない。米国は2000年代初頭にエンロンとワールドコムで先頭を行く存在だったし、損失の過少計上や契約価格の操作、利益の過大計上などは多くの国の企業が手を染めている。
 欧米企業の経営幹部にとっても、トップから収益改善を迫る「チャレンジ」を突きつけられていた東芝経営幹部の心情は身につまされるものだ。東芝の幹部は会計操作で対処し、トップが2008年の世界金融危機と2011年の東日本大震災に伴う業績悪化を隠すのを助けていた。
 日本企業の違いは、トップが前任者のための隠蔽をして損失が世代を越えていくことだ。後継トップが業績不振部門や前任者時代の問題をばっさり切り捨てるということはない。前任者の間違いを公然と切ることはせず、その重荷を受け継ぐ。・・・
 日本では、元の上司が完全に影を消すことはない。・・・
 日本企業は忠誠と一体性も重んじる。「上司と部下は生涯の関係。入社した時に面倒を見てもらった人に最後まで忠誠を通すことも少なくない」・・・
 オリンパスの時価総額は現在、2011年の不祥事発覚直前の2倍の水準、最安値をつけた当時の10倍の水準にある。東芝も経営陣の刷新で同様の復活を遂げる可能性を秘めている。・・・」
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO89634780T20C15A7000000/
(7月23日付(英国時間)。日経のFT買収発表は24日)

 私の、取りあえずの感触は、今回の不祥事の原因は、Gさん指摘のウェスティングハウス買収そのもの・・カスを掴まされた・・ではなく、予見できなかったところの東日本大震災の影響で、日本を筆頭として、世界の先進国で原子力発電所への需要が大幅に減退し、旧ウェスティングハウスを含む東芝の原子力部門を直撃したことが、東芝の重荷の一つとなった、という程度のことだろう、というものだ。
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I:太田さんは、憲法廃止論なのか。
O:違う。明治憲法は日本が君主主権国家であることを宣明し、現行憲法は日本が自由民主主義国家であることを宣明しているところ、そういった、国の旗印的な意味はあるので、廃止することもない、と思っている。
G:ギリシャ問題の根幹は何か。
O:気位だけが高いことだろう。
 危機真っ最中に街角で一人のオバチャンがインタビューに答えて、「ギリシャのEUからの離脱はあり得ない。ギリシャ「が」ヨーロッパだからだ」と叫んだことが印象に残っている。
 (演繹科学、哲学、法、民主制、(哲人)独裁制、は言うに及ばず、)ヨーロッパという地名自体、ギリシャ神話から来ている。(注)

 (注)「エウローペーは、テュロスのフェニキア王アゲーノールとテーレパッサの娘で、美しい姫であった。エウローペーに一目ぼれしたゼウスは誘惑するために、自身を白い牡牛に変える。エウローペーが侍女と花を摘んでいる時に、白い牡牛を見つけその背にまたがると、その途端白い牡牛はエウローペーをクレータ島へと連れ去った。そこでゼウスは本来の姿をあらわし、エウローペーはクレータで最初の妃となった。連れ去る際にヨーロッパ中を駆け回ったため、その地域はエウローペーの名前から「ヨーロッパ」 (Europa) と呼ばれるようになった。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%A6%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9A%E3%83%BC

(完)