太田述正コラム#7810(2015.7.26)
<2015.7.25東京オフ会次第(その2)>(2015.11.10公開)

E:では何のためなのか。
O:今次安保法制程度じゃだめだが、究極的にはイスラム過激派的なものへの対処のためだし、より一般的な言い方をすれば、世界政府が成立するまでの間の国際警察機能の一翼を担うためだ。
 良かれ悪しかれ・・悪しかれの方が強かったが・・、戦後、(国連はこの点では実質機能したことがなく、)ほぼ一手に米国(米軍)がそれを担ってきたが、今後、急速に米軍は相対的・絶対的に縮小して行くので、日本の自衛隊/軍がそのほんの一部でも「肩代わり」するとともに、それをより良いものにすることに貢献することは極めて有意義だ。
 このことと関連し、今次安保法制は、日本が「独立」に至る第一歩でもある。
 (米国以外のいわゆる自由民主主義主要国の先頭に立つ形で日本が国際警察機能に応分の寄与をするようになることで、この陣営が、国際警察機能の整備・運用に関し、事実上の米国一国による意思決定ではなく、主要諸国の協議による意思決定がなされるようになることが期待されるわけだ。
 しかし、この期待が実現するためには、前述の「究極」に達するまでの間に、日本が米国から「独立」し、自分の頭で国際情勢判断を行い、死活的な国益に関わる事柄について、自分で軍事力行使を含むところの対外政策を決定できるようにならなければならないのであって、安保法制、就中、そのうちの集団的自衛権行使の一部解禁に関わる部分は、それに向けての第一歩でもあるわけだ。)
 朝鮮戦争勃発以来、宗主国米国は、日本に「独立」を求め続けてきたけれども疲れ果て、最近じゃ余り言わなくなっていたのを、中共当局がバトンタッチする形で、何がなんでも「独立」させようと、あの手この手で奮闘してくれているおかげで、世話をやかせることこの上もなき日本が、今次安保法制の形で、ようやく「独立」に向けて第一歩を踏み出した、ということになる。
 安保法制、参院を通ってないので、まだ成立はしてないが・・。
F:徴兵制は違憲、との安倍首相発言がどうして問題なのか、もう少し説明して欲しい。
O:一つには、「苦役」は戦闘業務だけなのか、という点だ。
 大災害の場合には、国民の徴用が認められているが、それが「苦役」に該当する場合はないのか、いや、そもそも、全て「苦役」なのではないか、ということがある。

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[参考:日本の現在の徴用制度]

公用負担:「特定の公益事業の目的のために公法上強制的に行政客体に課せられる経済的負担。警察上の負担や財政上の負担とはその目的において区別される。特定の人に関連して課せられる負担である人的公用負担として,負担金,労役または物品負担,夫役現品,施設負担,不作為負担が,特定の財産権に関連して課せられる負担である物的公用負担として公用制限,公用収用,公用権利変換 (公用換地,権利変換) がある。 」
https://kotobank.jp/word/%E5%85%AC%E7%94%A8%E8%B2%A0%E6%8B%85-63312
人的効用負担:「権利者と義務者の関係は、公法上の債権債務関係である。
 労役・物品負担--公益事業につき、需要を充当させるために必要な労役又は物品給付をする公法上の義務。災害対策基本法65条の労役提供命令など。
 夫役現品   --公益事業につき、需要を充当させるために必要な労(夫)役又は物(現)品給付か、これに代えて金銭給付か、の何れかを選択してなすべき公法上の選択的義務。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E7%94%A8%E8%B2%A0%E6%8B%85%E6%B3%95
 災害対策基本法65条:「市町村長は,当該市町村の地域に係る災害が発生し,又はまさに発生しようとしている場合において,応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは,当該市町村の区域内の住民又は当該応急措置を実施すべき現場にある者を当該応急措置の業務に従事させることができる。」
http://www.city.midori.gunma.jp/tiikibousai_keikaku/honbun/ho/ki/065.htm
 「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律・・・は、災害対策基本法にある危機管理の枠組みがベースになっており、・・・災害時に協力が義務付けられる省庁等の地方部局など国民保護措置を所管する指定行政機関や、日本赤十字社、放送局、通信会社などの指定公共機関、指定公共機関の地方組織と鉄道会社やバス会社などの交通・輸送機関などの指定地方公共機関を定め、公共性の高い事業者の協力を義務付けている。さらには、災害対策基本法同様、国民の自主的な協力を求めるものであるが、災害対策基本法がやや強制力が強いのに対して、・・・あくまで自主的な協力を「求める」形に留まっている。」
http://www.ammanu.edu.jo/wiki1/ja/articles/%E6%AD%A6/%E5%8A%9B/%E6%94%BB/%E6%AD%A6%E5%8A%9B%E6%94%BB%E6%92%83%E4%BA%8B%E6%85%8B%E7%AD%89%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%9B%BD%E6%B0%91%E3%81%AE%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E6%8E%AA%E7%BD%AE%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B3%95%E5%BE%8B.html
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 或いは、警察のSAT(特殊急襲部隊)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E6%AE%8A%E6%80%A5%E8%A5%B2%E9%83%A8%E9%9A%8A
業務は苦役ではないのか、警察官は苦役であるとしてSAT勤務を拒否できるのか、更にはまた、刑務官は、死刑執行を命じられた時
http://ameblo.jp/kkoujirou/entry-11308199741.html
に苦役であるとしてその命令を拒否できるのか、ということだ。

 二つには、国のための戦闘業務は、苦役どころか、どこの国でも、少なくともタテマエ上は、最も光栄なる崇高な仕事、なのではないか、という点だ。
 別の言い方をすれば、戦闘業務を苦役だと言うことは、自衛官に対する、この上もない侮辱ではないか、ということだ。
 (国民について言えば、災害時と武力攻撃事態時の住民協力の強制度の違いについて、現行の規定はおかしいのであって、人命と財産の損害だけに関わる災害時に協力しなきゃいけないのなら、主権の存続にも関わる武力攻撃時にはもっと協力しなきゃいかんだろ、ってこと。)

(続く)