太田述正コラム#7861(2015.8.21)
<皆さんとディスカッション(続x2726)>

<勇午>(ツイッターより)

 小川和久氏が参考人意見陳述で述べたことは、本当に正しいのでしょうか?
http://bunbuntokuhoh.hateblo.jp/entry/2015/07/31/210300

<太田>

もう少し、質問の的を絞ってもらわないと困ります。
 仕方がないから、(読みたくもない「陳述」ですが、)網羅的に行きますね。↓

 <そんなこと言ったって、日本の最高裁は憲法(の条約への)優位説に立ってんだから、憲法が明文で「否定」する必要なんてないのよ。また、現行安保ができたのは日本国憲法が出来たのより後だぜ。(太田)↓>
 「・・・日本国憲法は国連憲章のいずれの条文も否定しておりません。また、日本国憲法は日米安保条約のいずれの条文も否定しておりません。・・・
 <そもそも、前のも現行のも日米安保は保護条約であって同盟条約じゃあないで。(太田)↓>
 集団的自衛権の言葉なんか使いたくなければ同盟関係を解消すればいい。そして独自に防衛力を整備すればいい。・・・
 <大体からして、現状で、防衛費をゼロにしたって「安全」は確保できるんだから、そんなシミュレーションは無意味だよ。(太田)↓>
 防衛大学校の 二人の教授が試算をしたものが本に出ております。これは今のレベルの安全を日米同盟抜きにやろうとした場合、年間の防衛費は大体23兆円ぐらいかかる・・・
 <いい悪いじゃなく、日米安保から、即、日本は属国(保護国)なの。(太田)↓>
 「アメリカの属国みたいだ」って、これは日本人が悪いんです。
 <口から出まかせ、とはこういうこいとを言う。(後述)(太田)↓>
 <その反対であり、>アメリカから見て最も対等に近い唯一の同盟国は、日本なんです。・・・
 <集団的自衛権の部分的行使解禁の安倍政権の解釈じゃあるまいし、そんなワケないだろが。(太田)↓>
 個別的自衛権は、自分の国の安全を自分の国の軍隊で守る権利。集団的自衛権は、自分の国の安全を同盟国などの軍事力で守る権利。いずれも自分の国の安全が先なんですよ。・・・
 <イタリアには113箇所
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_United_States_military_bases
もあって、当然、伊米共同使用施設だってたくさんあらーな。で、日韓と対比すべき、欧州には、全体として一体どんだけたくさん米軍基地があると思ってんだ。アホちゃうの。(太田)↓>
 日本に何箇所米軍基地がありますか?公表されてますよ。――84箇所。あと自衛隊が使っていいとされてる日米共同使用施設のBが50箇所。134箇所が日本列島に載っており、アフリカ南端の喜望峰の範囲で行動する米軍を支えている。これ、会社に例えると本社機能が置かれているんです。アメリカの他の同盟国は支店か営業所のレベルなんです。
 <日本がやーめたと言えば、フィリピンが手を挙げるさ。ただ、いずれにせよ、米軍はどんどん太平洋西部からは引いて行くさ。(太田)↓>
 日本の代わりを出来る国が無い・・・
 <日本よりゃ英国の方が、はるかにそーだってのは、世界のジョーシキ。(太田)↓>
 アメリカから見ても最も対等に近い同盟国であるってことが、非対称的ではあるけれども明らかなんです。・・・
 <アタマおかしーんちゃう? 地域本社機能がハワイに置かれてて、日本にあるのは出先機能だけじゃい。(太田)↓>
 アメリカの戦略的根拠地、本社機能が置かれている日本列島を攻撃しないでアメリカを攻撃するということはないんです。・・・
 <ここだけは正しい。褒めてあげるよ、小川クーン。(太田)↓>
 東シナ海についても、中国は極めて抑制的に動いているんだと。南シナ海とは戦略的に差別化しているんです。これ中国の将軍たちが私に言うぐらいです。「気を使っているんですからわかってください」と。だからこれは尖閣諸島で領海侵犯している中国の公船、白い船も、これ一隻の例外もなく固定武装なし、武装してない、スッポンポンなんですよ。・・・
 <米軍たって、家族が現地にいなきゃ、トリップワイヤーになんかなりゃせんよ。
 米海兵隊の沖縄駐留の必要性どころか、(第4軍たる)米海兵隊の必要性まで唱えかねない、トンデモ軍事専門家だわ。(太田)↓>
 沖縄の海兵隊地上部隊は尖閣諸島、あるいは台湾海峡有事において、・・・この1000人とぶつかることはアメリカ合衆国との全面戦争を意味するから、中国はためらわざるを得ない。ためらわせるから抑止力なんですよ。・・・
 <NATO隷下の部隊は、ドイツと違って、米国にとっては、全軍のほんの一部に過ぎない。よって間違い。(太田)↓>
 西ドイツの時代、再軍備する時に集団的自衛権が行使されている中でしか個別的自衛権の行使をしてはならないと封じられた。一貫してその状態。つまりある国が単独で個別的自衛権を行使する歯止めになっているんです。これはアメリカも例外ではありません。・・・
 <歯止めもクソも、そんな自衛隊である限り、(領域防衛の必要性なんてないんだから、)自衛隊は本来任務に関し、そもそも、出番はないのだよ。(太田)↓>
 海を渡って外国を軍事力で席巻することのできない構造の自衛隊、これも歯止めであります。・・・」

<太田>(ツイッターより)

 「広告代理店「もし東京五輪ロゴが使われなくなったら数十億単位の損失が出る。誰が穴埋めするんだ」…」
http://www.cyzo.com/i/2015/08/post_23472_entry.html
 この記事やコメント集
http://asianews2ch.jp/archives/45985562.html
見ると、議論が利権構造そのものに移りつつあって結構なことだが、新国立劇場問題同様、文科省に責任がある、ちゅうところまでまだ行っとらんねえ。
 文科省(中の旧文部省)は、スポーツ、文化、著作権を所管している役所だってこと忘れてんじゃないか。
 大学だって所管してるくせに、行政対象より格段にオツる、無能・無気力役人どもの巣窟なんだぜ、おのおの方。

<TA>

 コラム#7860<(未公開)>の<フッガーと淀屋の総>資産計算についてです。

⇒計算の不得意な私が、あんな計算を試みるべきじゃなかったかも。(太田)

 計算間違いの類はこの際置くとして、根本的な問題として、<フッガーの方に出てくる>フローリンの方は

 「フローリン・・・金貨は純金56グレインを含むもので・・・ある。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%B3
と、金貨に含まれる純金を基準としていると思われるところ、日本の一両では金の含有率が計算に入れられていません。これは銀貨についても同様です。そして一両の金含有率なども時代によって大きく変わります
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E5%88%A4
ので、単純な計算はできないでしょう(これはおそらく銀も同様)。

⇒闕所時の淀屋の資産、「金12万両、銀12万5000貫(小判に換算して約214万両)」を、「純金12万両<←「両」は重量単位と読んだ。(太田)>、純銀12万5000貫(合計して純金約214万両)」と私は読んだのですが、今読み返すと「合計」じゃなさそうな上に、確かに、「小判」は「純金」じゃあないので純銀12万5000貫を純金に換算した上でそれに純金12万両を足すべきでしたね。
 更にそれに、「債権、純銀1億貫」を純金に換算したものを更に足すことになります。
 ところで、そもそも、金〇両、銀〇貫、を、それぞれ、純金〇両、純銀●貫、と読んじゃダメなんですかねえ。(太田)

 銀を当時の金<銀>交換レートで計算するか、現代の銀価格で計算するかも悩ましいところです。

⇒そりゃあ、当時の金銀交換レートでしょう。(太田)

 ここはウィキペディアの

 「現代の金額に換算しておよそ100兆円」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%80%E5%B1%8B
を信用しては如何でしょうか。

⇒不動産、船舶、美術工芸品等をどう評価したのか、それとも計算に入れていないのか定かではありませんし、金銀をどう計算したのかも分からない上、そもそも、それでは、フッガーとの比較ができません。(太田)

<TA>

>ところで、そもそも、金〇両、銀●貫、を、それぞれ、純金〇両、純銀●貫と読んじゃダメなんですかねえ。

 うーん・・。江戸時代、総資産なり債権なりの表記・記録・記述を純金・純銀換算で行うというのは、私は聞いたことがない、としか言えませんね。
 一応、計算をまとめてみました。↓

・金12万両=12万×0.03736=金0.4万kg
 ※四捨五入で消える程度なので無視する。

・銀12万5000貫=12.5÷0.06=金208万両
 208万×0.03736≒金8万kg

・(債権)銀1億貫=1億÷0.06=金166667万両
 166667万×0.03736=金6227万kg

・金8万kg+金6227万kg=金6235万kg
 6235万×500=312兆円

※金1両=37.36g→0.03736kg
※金1両=銀60匁=銀0.06貫
※金1g=0.5万円→1万kg=500億円

 淀屋が闕所時に没収された財産(金銀)の合計は312兆円。

 フッガーの資産約1300億円=0.13兆円
 (710万フローリンは、(1グレーン=<金>0.06479891グラム、56グレーン=1フローリン)なので、
0.06479891×56×710万=金25764047g=金2.6万kg
<太田さんの「約2600万kgの金」(コラム#7850)は誤りです。>)

・312÷0.13=2400

 <よって、>淀屋の資産はフッガーの資産の2400倍。

<太田>

 「17世紀前半には東アジア全域で金銀比価の平準化が進み、一旦は1:13前後に収束していく傾向が見られた。だが、貞享・元禄年間に金・銀輸出の制限が取られたこと(金銀輸出の制限については新井白石の[1715年の]海舶互市新例が著名である)<等から、>・・・小判と丁銀の含有率に基づく比価は1:10前後を維持<することとなっ>た」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E9%8A%80%E6%AF%94%E4%BE%A1
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E8%88%B6%E4%BA%92%E5%B8%82%E6%96%B0%E4%BE%8B ([]内)
というのですから、1705年の金銀交換レートを1対10とすると、1貫=100両=3.75kg
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B2%AB
なので、淀屋の資産としての純銀12万5000貫は、純金1万2500両相当ということになり、純金12万両と合算すると、純金13万2500両=純金1万3250貫(=純金49587.5kg)≒5万kgとなり、これに更に、債権たる純銀1億貫=純金1000万貫=純金3750万kg、を加えると、純金3755万kgとあいなります。

 で、訂正してもらったフッガーの資産は、純金2.6万kgですから、淀屋が持っていた現物の純金銀を全て純金に換算した額である5万kgだけで、約2倍、債権の純金換算額を加えれば、実に千数百倍、ということになります。
 
 私の再計算は、以上の通りですが、間違ってるのかなあ。

<TA>

>淀屋の資産としての純銀12万5000貫は、純金1万2500両相当ということになり、純金12万両と合算すると、純金13万2500両=純金1万3250貫(=純金49587.5kg)≒5万kgとなり、これに更に、債権たる純銀1億貫=純金1000万貫=純金3750万kg、を加えると、純金3755万kgとあいなります。

 最終的な計算は合ってると思いますが、途中が間違ってませんか?↓

純銀12万5000貫は、純金1万2500両相当

純銀12万5000貫は、純金1万2500貫(純金125万両)相当

純金12万両と合算すると、純金13万2500両=純金1万3250貫(=純金49587.5kg)≒5万kgとなり、

純金12万両と合算すると、純金137万両=純金1.37万貫(=純金51375kg)≒5万kgとなり、

<太田>

 サンキュー。
 フッガーの総資産が少な過ぎてホントかいなって感じですが、以上を踏まえて、コラム#7860を訂正します。

<TA>

 ご参考までに。↓

 「マルクス・リキニウス・クラッスス(ラテン語: Marcus Licinius Crassus, 紀元前115年頃 - 紀元前53年)は、・・・アメリカの雑誌『フォーブス』が2007年に選んだ「歴史上の富豪」において、総資産1,698億アメリカドルで歴代第8位の順位が付けられた(en:Wealthy historical figures 2008を参照)。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%8B%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B9%E3%82%B9

 英語が読めないので何と書いてあるかわかりませんが。↓

 Wealthy historical figures 2008
https://en.wikipedia.org/wiki/Wealthy_historical_figures_2008

<太田>

 それでは、その他の記事の紹介です。

 首相談話に対する3人の識者(うち一人はアメちゃん)の言だ。
 「犯人」の北岡伸一の言だけを取り上げる。↓

 <私に言わせれば、だから、安倍談話は村山談話よりもひどいのよ。(太田)↓>
 「・・・私は村山富市首相談話に反対ではない。だが、それほどいいとも考えていない。「遠くない過去の一時期」ではいつのことなのか分からない。なぜそういうことになったかについても述べられていない。閣内のコンセンサスも不十分だった。いずれも安倍談話の方が優れている。
 <阪神大震災はともかく、「非武装中立論」(吉田ドクトリン左派)の方が、まだ、「独立」志向だっただけ、「米事大主義」(吉田ドクトリン右派)よりか、評価すべきだよ。(太田)↓>
 謝罪を言うなら、村山さんは、首相になるや否や従来の非武装中立論を放棄したことについて、また、阪神大震災の初動の遅れで被害が広がったことについて、有権者や国民に謝罪したのだろうか。
 <だから、どーしょーもない談話なんだよ。(太田)↓>
 安倍談話の欠点として、主語が一人称でないことが指摘される。しかし、談話の中には「日本は」と書いている。日本が加害者側であるのは文脈からも明らかだ。・・・
 <理由が不明確な謝罪よりも、理由を明確にした今次謝罪の方が重い。(太田)↓>
 外交上の謝罪とは重いもので、道徳的劣位を認めることになる。
 <だったら、報告書で、(今次談話じゃ、)もう謝罪する必要はない、と書くべきだっただろうが。(太田)↓>
 中国への公式謝罪は「四つの基本文書」(1972年の日中共同声明、78年の日中平和友好条約、98年の日中共同宣言、2008年の戦略的互恵関係の包括的推進に関する日中共同声明)で終わっている。韓国とも、65年の日韓基本条約と98年の日韓共同宣言で済んでいる。本当に被害を受けた人々には謝罪するとしても、公式謝罪後は、対等の立場で未来をつくることに努めるべきだろう。謝罪し続けることには私も反対だ。
 <冗談だろ?(太田)↓>
 強いて言えば、歴代内閣の立場を首相自身の言葉で引き継いでほしかったし、朝鮮統治について、もう少し踏み込んでもよかった。今後、「慰安婦」問題の解決に日韓双方が努力することは重要だ。
 <歪曲してた安倍チャンの史観を、お前達がよってたかって、更に歪曲させたんだよ。喝!(太田)↓>
 安倍首相のイメージと談話に差がある理由の一つに、在野時代とは立場が違うということが挙げられると思う。米大統領選の共和党候補が次第に右から中道に寄ってくるのと同じだ。信念が変わったのではなく、勉強して理解を深めたという印象も持った。・・・
http://mainichi.jp/shimen/news/20150821ddm004070041000c.html

 中韓以外が、日本に好感を抱いていることを、苦々しい思いで伝える米紙記事だ。↓

 Despite tensions around the anniversary of Japan's surrender, new generations in the rest of Asia see 'the Japan of today, not 70 years ago.'・・・
http://www.csmonitor.com/World/Asia-Pacific/2015/0820/Asia-70-years-after-WWII-Japan-gets-better-grades-than-China

<太田>

 本日眼医者に点眼薬の処方箋をもらいに行った際、最新の週刊文春(合併号)のドワンゴ社長と羽生名人との対談を読んだ。
 羽生が、AI関係の本をたくさん読んでいて、しっかりした見識を身に付けていることに感心した。
 彼、将棋の世界に進んだのがもったいないな、とさえ思った。
 彼の場合は、将棋を通じて、沢山の日本人を楽しませてくれているからまだしも、(何度も指摘していることだが、)キャリア官僚になった人々の大部分が、天下りをして、無意義に近い余生を送るのが通例なのは、日本にとって何という損失だろうか。 
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太田述正コラム#7862(2015.8.21)
<ヤーコブ・フッガー(その2)>

→非公開