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太田述正コラム#7584(2015.4.4)
<『チャイナ・セブン』を読む(その9)>(2015.7.20公開)

 「2014年7月15日、国資委は国有企業(中央企業)への民間資本導入を許す6社の選定を発表した。・・・
 これらを試点(試験的に実施する場所)として、徐々に地方国有企業にも「混合所有制」を広げていく<、とした>。
 2014年9月19日には、湖北省、湖南省、広西自治区、海南省、福建省などの国有企業が「混合所有制」を実施していくと名乗りを上げている。・・・
 ・・・<なお、>中国石油化工(シノペック)は2014年2月にすでに民間資本参入を認める「混合所有制」を実施すると発表している。・・・
 <更に、>習近平は2014年8月18日に・・・「2014年から2020年」の7年間計画として国有企業高級幹部の給料の50%削減を完遂させると宣言、まずは金融や銀行業界から着手していくそうだ。・・・
 そこから得た財源を、社会保障制度の充実などに回すとのことだ。」(248〜250)

⇒繰り返しますが、トウ小平の方針に従って、漸次的に国有企業の民間企業化を進捗させている、というだけのことです。(太田)

 --習近平政権の政策その3:国家新型城鎮化計画--

 「2014年3月16日、中国政府は「国家新型城鎮化計画」を発表した。これは2013年11月の三中全会で決定された「全面的に改革を深化させる」という基本方針の一環である。
 「城鎮化」の中の「城」は「都市」の意味で、「鎮」は「地方農村部の市街地」あるいは「町」という意味だ。・・・年の近郊(郊外)や内陸部の中小都市などを指す。
 したがって「城鎮化計画」は概念的には「都市化計画」と理解してもいいのだが、中国の広大な内陸部のことを考えると、日本のニュータウン的なイメージとまた少し異なる。さらに東沿海地区に集中している大都市の中に存在している都市住民と出稼ぎ農民工との間の二極化も深刻な問題なので、その問題解決も含んでいるという意味で、日本人が描く「都市化計画」とは必ずしも一致しない。
 基本計画(マスタープラン)の実施期間第一弾は「2014年から2020年」。・・・
 習近平政権はこの基本計画で「三つの1億人政策」を打ち出した。
 第一の「1億人」は年に流入している無戸籍の農民工という流動人口1億人に対して、都市戸籍に相当した「居住証」を発行する・・・。・・・
 <第二と第三は省略するが、要するに、合わせて、>3憶から成る流動人口に戸籍や住民登録を与えれば、定住者となって税金を徴収できるだけでなく、・・・年金積み立ての支払いを要求することができ・・・、なんとか年金枯渇を防ぐことができる<し、>医療保険や労働災害保険、失業保険あるいは出産育児手当などを保証する積み立て(徴収)が可能になっていく。
 こうして胡錦濤が実現できなかった「和諧社会」にいくらかでも近づき、「先富」から「共富」に少しでも移行していこうというロードマップを習近平は描いている。
 反腐敗運動の真の目的はここにあったのである。

⇒所得/富の不平等の緩和や地域間格差の縮小、すなわち、「和諧社会」の実現、と、反腐敗運動、とは次元の異なる問題です。(太田)

 決して権力闘争などという小事や権力基盤固めなどのためにやっているのではない。・・・
 <そのことは、中国人民も認めている。>
 毛沢東は何千万もの自国の民を殺してきたし、改革開放を始めたことにより人気があった<トウ>小平は、天安門事件で民主を叫ぶ若者を銃口で弾圧してしまったことで非難の的となった。江沢民は利益集団と化し、中国人民のの誰ひとりとして江沢民が好きではないだろう。胡錦濤は党内民主に努力してきたが、チベット弾圧やウィグル弾圧でやはり罵倒されているし、親日的であるということにより売国奴呼ばわりされたことさえある。
 ところが習近平は「習大大(シー・ダーダ)」という愛称<(注8)>で、好かれているのである。・・・

 (注8)「「大大」は親しみのこもった「おじさん」のような意味だが、これまで指導者を「あだ名」で呼ぶことは庶民の間に隠れた形ではあったが、公式の場では御法度だった。だが、習氏と一般民衆との対話の場で、ある出席者が「習大大と呼んでも構わないでしょうか」と聞くと、習氏は「Yes!」と応じて、それ以来、「習大大」はお墨付きを得た形になった。」
<a href='http://www.huffingtonpost.jp/foresight/china_b_6937938.html?'>http://www.huffingtonpost.jp/foresight/china_b_6937938.html?</a>

 昨年、「「中国に習大大(習近平国家主席)が登場した、どんな猛虎でもやっつける。天も地も恐れず、夢でも会いたい…。中国には彭麻麻(彭麗媛夫人)もいる、最も美しい花を彼女に贈る…男なら習大大に学び、女なら彭麻麻に学ぼう」。インターネットで・・・美しいメロディーと共に多くの中国人を感動させた歌「習大大愛着彭麻麻」が話題を集め、様々な動画サイトや微信(WeChat)で流行している。」
<a href='http://j.people.com.cn/n/2014/1124/c94689-8813317.html'>http://j.people.com.cn/n/2014/1124/c94689-8813317.html</a>

 2014年7月14日、・・・ピュー・リサーチ・センターが44カ国の国民・・・を対象に行った調査の中に「あなたは習近平が世界情勢の中で正しい行動を取っているとおもいますか?」という項目がある。・・・なんと中国国民は92%が「正しいと思う」と回答している。」(250〜251、253、259〜262)

⇒このくだりの遠藤の認識には、全面的に首肯できます。
 なお、遠藤は女性なのに・・女性ゆえに?・・習近平人気には奥さんの(超人気歌手でありかつ美人である)彭麻麻人気も与っていることに触れていないのは片手落ちではないでしょうか。(太田)

(続く)


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