太田述正コラム#7442(2015.1.23)
<カール5世の帝国(続)(その4)>(2015.5.10公開)

3 フランシスコ法王の評価

 「・・・「誰でも、<他人を>怒らせることなく(without giving offense)、自分の宗教、自分自身の宗教を実践する権利を持つ」、と<フランシスコ>法王は答えた。
しかし、「人は、怒らせたり(offend)、戦争を仕掛けたり、自分自身の宗教、すなわち、神の名の下で、殺すことはできない」、と彼は付け加えた。
 他人達を侮辱した場合の諸帰結を明らかに軽んじようとして、この法王は、彼の脇に立っていた法王庁の<法王>旅行担当官・・・の方を向いた。
 「仮に仲の良い友達である<といえども、その人物>が、私の母親について卑猥なこと(bad word)を言ったならば、拳骨を食らうことになる」、と、フランシスコは、この補佐官の顔の方向に拳骨を繰り出す恰好をしながら言った。
 「それは正常なことだ。正常なことなのだ。
 人は他の人々の信仰(faith)について挑発行為を行ったり侮辱したりしてはならないし、信仰を物笑いの種にしてはならないのだ」、と。
 この法王は、<フランスにおける>最近のテロ諸襲撃に関する以前の諸言明の中で、暴力に対しては非難するということを明確にしていたけれど、怒らせる(offensive)諸声明や諸ふるまい(gestures)に対しては暴力的な諸反応があることが予期されなければならない、との彼の示唆は、自由な社会の中における自由な言説に限界があるのか、という感情的議論に火を付けた。
 突風のような、その真意の説明を求めるメディアからの声に応えて、法王庁の広報官・・・は、法王の諸コメントやふるまい(gesture)は、「先週パリで起こった暴力とテロを正当化したものと解釈されることを意図したものでは全くない」、と主張する声明を発した。
 法王の、<旅行担当官>とのやりとりは、「旅行をしているところの、同僚達や友人達の間での、友好的な、くつろいだ(iuntimate)<状況下での>こと」だった、と<広報官>は語った。
 「法王の、とりわけ記者会見のような諸状況下での、演説の自由なスタイルは、額面通り受け止めるべきであり、歪められたり操作(manipulate)されたりしてはならない」、とこの広報官は語った。
 「暴力は暴力を生む。フランシスコ法王は、飛行中の彼の言でもって暴力を擁護したわけではない」と。」(C)

 この法王の発言については、支持する者が圧倒的に多く、私が気が付いた限りでは、批判したのは、次の2例だけです。

 第1例は英国のキャメロン首相による批判です。

 「私は、自由な社会では、誰かの宗教について、<その誰かを>怒らせる権利が存すると思う。
 私はキリスト教徒だが、誰かが何か怒らせることをイエスについて言ったとすれば、私は、それに怒るかもしれないが、自由な社会では、彼らに復讐する権利は有さない。
 私は、法の枠内である限り、諸新聞、諸雑誌、が若干の人々を怒らせることを出版することができる、ということを受容する。
 そのことこそ、我々が守らなければならないものなのだ。」
http://www.theguardian.com/politics/2015/jan/18/david-cameron-disagrees-pope-francis-responding-violence
(1月19日アクセス)

 第2例は、ブラジルのフォルハ・デ・サオ・パオロ(Folha de Sao Paolo)紙(注15)による批判です。

 (注15)1921年創立の、不偏不党を標榜する、ブラジル最大の新聞。(発行部数30万前後。)
http://en.wikipedia.org/wiki/Folha_de_S._Paulo
 
 「<この新聞は、>「フランシスコは余計なことを言うな」、と一面の見出しで叫んだ。
 <そして、ある>評論家<の>、「政治好きの(politicking)」法王を「村の僧侶みたいだとし、彼の表現の自由についての諸言明を「卑怯で不正確」である<とした見解を掲載した。>」
http://www.bbc.com/news/world-europe-30851709
(1月20日アクセス)

⇒私は、躊躇なく、キャメロンらに軍配を上げます。
 しかも、本件について、たまたま、フランシスコ法王の見解がおかしかった、と考えるべきではなく、彼がキリスト教原理主義者であることがこれではっきりした、と思うのです。
 つまり、彼は、決して、柔軟でも、現代的でもない、ということです。
 ただし、キリスト教原理主義者と言っても様々です。
 一体、彼は、いかなるキリスト教原理主義者なのでしょうか。
 この法王の最近の言説をざっと振り返った上で、私の見解を示しましょう。(太田)

(続く)