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太田述正コラム#7226(2014.10.7)
<香港騒動の経済的背景>(2015.1.22公開)

1 始めに

 峠を越した感がある、香港での現在の騒動について、その経済的背景を指摘するコラムが英米で出たので、そのさわりをご紹介します。

2 香港騒動の経済的背景

 (1)FT

 「香港が必要としているのは、中共の主席である習近平を追い詰めることに資する戦略ではなく、彼自身の思い込み(mindset)と共鳴する戦略だ。
 すなわち、抗議者達が香港の巨頭(tycoon)経済、及び、その定義であるところの、反競争的、反消費者的諸取り決め(arrangements)に再び焦点を当てるべきなのだ。・・・
 香港政府は、植民地的な(colonial)利子生活者的経済が何はばかることなく続くのを放置している。・・・
 もし、抗議者達が、習近平にこの経済問題を理解させれば、2022年における恐らくはよりオープンな長官指名へのプロセスを実現するところの、政治における妥協に到達することを容易にする。
 私は、間違っているかもしれないが、中共当局の頑迷さは、悪意に基づくというよりは、無知にも基づく、と考えているのだ。」
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/6885b4e6-4d43-11e4-bf60-00144feab7de.html#axzz3FQ5KcgMH

 私も、おおむね、この筆者の見解に首肯できます。
 とりわけ、彼が、中共当局に基本的に信頼感を抱いているところを、それが珍しいだけに、私としては、高く評価したいですね。

 (2)ワシントンポスト

 「メディアが語る物語の大部分は、香港における抗議は、市民達が、中共当局の専制(tyranny)に対して政治的に不満を抱き、民主主義に向けて戦っているというものだが、それは誤りだ。
 実際に起こっていることはこうだ。
 急進的な、というか、時には、もう少し良く言えば、単にナイーヴな、逸脱者たるイデオローグ達が、ここ香港の人々の現実かつ正当な経済的諸苦情を、香港の自治に関する闘いへと改鋳したのだ。・・・
 この種の諸運動は、一般に、暴力的に鎮圧された場合には、(シリアを思い出して欲しいが、)人命の悲劇的喪失を伴いつつ失敗する。
 成功する稀な諸事例においては、それらは、(10年を超える連続的な、<特定の>色で呼ばれる諸革命がその国を分裂させ、今やその民族の生存そのものを脅かしつつあるところの、ウクライナを思い出して欲しいが、)長期間にわたる苦難と破壊へと導く。
 <ウクライナの>マイダン的諸運動は、恒久的サイクルを描くように見える。
 すなわち、(エジプトを思い出して欲しいが、)政府を変えるために広場に赴くが、その次の政府を変えるためにその広場に戻る、という・・。
 その間、麻痺、混沌、そして暴力さえもが支配する。・・・
 最も声高の活動家達が書いた<今回の一連の>抗議メッセージは、問題だった。
 というのは、その、香港に民主主義をという中心的テーマは完全に間違っているからだ。
 香港における政治参加の程度は、実際には<現在、>史上最高だからだ。・・・
 <ところが、経済については問題だらけだ。>
 支那への出入りにおける唯一の港であるという独特の優位さは、支那大陸自身の市場経済が拡大するにつれておおむね消滅するに至っている。
 <また、>その製造業の基盤・・それは豊富な雇用を提供してきた・・は、安上がりの諸地域へと移動していった。
 <更に、>全球化と拡大する中共経済は、この都市の地位を国際的な金融センターへと押し上げたけれど、その経済的便益の主たる部分は、金融仲介と資本展開(deployment)に従事する者達が手にしてきた。
 中位所得は停滞的で今では下がり気味なのに、生活費、とりわけ家賃は上昇してきた。
 <しかも、香港の>資産格差は世界中で最も大きい部類だ。・・・
 <論より証拠、>過去数年にわたって、・・・世論調査では、香港人の80%を優に超える、最大の関心は生活と経済の諸問題であり、政治の諸問題についての関心は、せいぜい二桁の低い方に過ぎない、というのが定番であり続けてきた。」
http://www.washingtonpost.com/posteverything/wp/2014/10/06/the-umbrella-revolution-wont-give-hong-kong-democracy-protesters-should-stop-calling-for-it/

 米国人の筆者が、これだけ成熟した見方ができることにはいささかびっくりさせられました。

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